ドローンに100%の関税。そもそも「関税」って何? DJI規制から見えてきたドローン産業の変化
「アメリカがドローンに100%の関税をかける」
一昨日(アメリカ時間2026年8月13日)そんなニュースが出ました。
ドローン業界にいる私としては、このニュースはちょっと気になっています。というのも、単純に「アメリカでドローンが高くなる」という話ではないからです。
その前から、アメリカではDJIやAutelなどの外国製ドローンに対する規制が強まっていました。今回の関税は、その流れの中にあります。
そもそも、関税って何なのか。ここから整理してみます。
そもそも「関税」って何?
経済ニュースでよく出てくる「関税」。簡単にいうと、
海外から商品を輸入するときに、輸入する国がかける税金
です。
例えば、アメリカの会社が海外から100万円のドローンを輸入するとします。ここに100%の関税がかかると、単純化すれば、輸入する会社は100万円の関税を支払うことになります。
つまり、100万円の商品を仕入れるのに、関税だけでさらに100万円。かなり大きな負担です。
では、その100万円は誰が負担するのでしょうか。ここが少しややこしいところです。
最初に関税を支払うのは、基本的には輸入するアメリカ側の企業です。ただ、そのコストを販売価格に上乗せすれば、最終的にはアメリカの消費者が高い価格で購入することになります。逆に、販売価格を上げたくなければ、輸入する企業が利益を削ることになります。
つまり、関税を上げると、海外の商品は国内で売りにくくなる。これが関税の大きなポイントです。
では、なぜアメリカはドローンに関税をかけるの?
ここからが今回のニュースの面白いところです。
アメリカ政府は今回、ドローンや関連部品について、海外の供給源への「過度な依存」を問題視しています。つまり、
「海外から安く買えばいい」という状態ではなく、 「自国でもドローンを作れるようにしたい」
ということです。
今回の措置では、国家安全保障上特に重要とされる一定のドローンには100%、より小型のドローンには25%の関税が設定されています。さらにアメリカ政府は、国内でドローンや部品を製造する企業を支援する仕組みも打ち出しています。
ここまでくると、単なる「税金」の話ではありません。ドローン産業を自国に育てるための産業政策という側面があります。
実は、関税より前から規制は始まっていた
今回のニュースだけを見ると、「突然、アメリカがドローンに関税をかけた」ように見えます。でも、実際にはもっと前から動きがありました。
2025年12月、アメリカのFCC(連邦通信委員会)は、外国製のドローンや重要部品を「Covered List」に追加しました。この「Covered List」は、国家安全保障上のリスクがあると判断された通信・監視関連機器などを指定するリストです。対象になると、新しい機器についてアメリカで必要な認証を取得することが難しくなります。
そして、ここで重要なのが、DJIだけではないということです。DJIの競合メーカーとして知られるAutel Roboticsも中国・深圳の企業で、DJIとともに規制対象になっています。
つまり、この問題を「アメリカがDJIを規制している」だけで捉えると、少し狭い。むしろ、「アメリカが外国製ドローンへの依存そのものを見直している」と考えたほうが分かりやすいと思います。
さらに2026年7月には、こんな動きも
今年7月には、FCCが複数の企業に対して、1社あたり2万5,000ドルの制裁金を提案しました。背景には、規制対象となった技術が、別の会社やブランドを通じてアメリカ市場に流通していないか、という問題があります。
ここは少し注意が必要です。「DJIが別ブランドを使って販売していたことが確定した」という意味ではありません。FCCが、規制を回避するような流通がないかを調査している、ということです。
さらにFCCは、対象企業の既存製品についても、輸入・販売などを禁止する方向で手続きを進めています。
つまりアメリカは、「規制対象のメーカーが別ブランドになればOK」という抜け道も塞ごうとしているわけです。
なぜ、そこまでドローンを警戒するのか?
ドローンは「空飛ぶカメラ」と言われることがあります。でも、実際にはそれだけではありません。
カメラ。通信。位置情報。コンピューター。AI。そして、そこから生まれる大量のデータ。これらが一つになった機械です。
しかも、今では
インフラ点検
測量
農業
建設
災害対応
警備
防衛
など、社会の重要な場所でも使われています。
例えば、
「どこを飛んだのか」 「何を撮影したのか」 「どんなデータを取得したのか」 「そのデータをどこで管理するのか」
こうした情報は、使われる場所によっては非常に重要です。
だからアメリカが見ているのは、「どこの国のドローンなのか」だけではありません。「その技術やデータ、サプライチェーンを誰が握るのか」という問題なのだと思います。
日本にとってはどうなのか?
ここは、私たち日本のドローン業界にとっても気になるところです。
今回のアメリカの動きは、もちろんリスクがあります。一方で、私は日本にとってチャンスになる部分もあると思っています。
日本はDJIのような巨大な完成品メーカーを持っているわけではありません。でも、
センサー。光学。半導体。精密機器。ロボティクス。通信。AI。
こうした技術には強い企業があります。
そして、もう一つ日本が持っている強みがあります。現場です。
インフラ点検。建設。農業。災害対応。測量。こうした現場でドローンをどう使うかという知見は、これからますます重要になります。
だから日本が目指すべきなのは、「DJIのような会社を日本から1社つくる」だけではないと思っています。
例えば、
ドローン × AI
ドローン × インフラ
ドローン × 防災
ドローン × 農業
ドローン × データ
のように、日本が得意な技術や現場と組み合わせていく。そこに、日本のドローン産業の可能性があるのではないでしょうか。
そして、もう一つ気になるのが「人」です
私はドローンのニュースを見るとき、機体や市場規模だけではなく、「この変化によって、どんな人材が必要になるんだろう?」と考えます。
ドローンが普及すると、必要なのは操縦士だけではありません。
飛行データを扱うIT人材。撮影した画像を分析する人。インフラ点検の知識を持つ人。建設や測量の経験がある人。自治体とプロジェクトを進められる人。新しいサービスを企画できる人。営業やPMができる人。
いろいろな仕事があります。
だから私は、「ドローンを飛ばせる」こと自体がゴールではないと思っています。
大切なのは、ドローンを使って、何の課題を解決できるか。ここだと思います。
成長産業を見るとき、「今ある仕事」だけを見ない
今回のニュースを見ていて、私が面白いと思ったのはここです。
関税が上がる。海外製品が売りにくくなる。アメリカが国内生産を増やそうとする。サプライチェーンが変わる。
一見すると、全部「政府や企業の話」に見えます。でも、その先には必ず人の仕事があります。
産業構造が変われば、必要な技術が変わる。必要な技術が変われば、必要な人材も変わる。
だから私は、成長産業を見るとき、「今、どんな会社があるか」だけではなく、「この産業が変わったとき、次に何が必要になるのか」を見るようにしています。
ドローンも、最初は「空撮ができる新しい機械」でした。それが今では、インフラ、農業、防災、建設など、さまざまな産業に入っている。そして今度は、安全保障やサプライチェーンまで含めて語られるようになりました。
私は、この変化そのものに注目しています。
ドローンは「空飛ぶカメラ」から「戦略産業」へ
今回の関税だけを見ると、「ドローンがアメリカで高くなる」というニュースです。
でも、少し長い時間軸で見ると、「ドローンをめぐる世界の産業構造が変わり始めている」というニュースにも見えます。
誰が機体を作るのか。どの部品を使うのか。データをどこで管理するのか。どこの国の技術を使うのか。そして、その変化の中で、どんな人が必要になるのか。
ドローンに関わっている私としては、機体そのものだけではなく、その周りで起きている産業の変化にも注目していきたいと思っています。
ニュースを追っていると、ドローンの未来だけではなく、これから生まれる仕事の形も少しずつ見えてくるからです。
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