iPhoneで終わったのは「携帯電話」ではなく“前提”だった─そしていまAIで同じことが起きてる/「AI編集アーキテクト」が必要
18年前、iPhoneが登場した瞬間に「携帯電話」という概念は終わっていたにもかかわらず、多くの日本企業はそれを「改良競争」だと信じ続けた。その結果、世界の主導権を失いました。──AIでも同じ兆候がないでしょうか?
iPhoneで起きた変化と、AIを重ねながら
「なぜ日本企業は前提の変化に気づけないのか?」
を掘り下げます。そして『失敗の本質』が示した教訓を、AI時代の組織変革にどう活かせるかを考えたいと思います。
▼このnoteの概要▼
①iPhoneとAIの歴史的な対比
②“前提の変化”を見抜けない日本企業の構造
③『失敗の本質』をAI時代に読み替える視点
この3つの視点から、再び同じ過ちを繰り返さないためのヒントを探ろうと思います。
池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。慶応義塾大学卒/博報堂を経て、スタートアップCEOの壁打ち相手、婦人公論.jp 動画YouTube・新規事業開発担当。AI領域も新規事業開発している。ときどき婦人公論.jpにコラムも。 ⇒https://lit.link/junikematsu
1:なぜ日本企業は「前提の変化」に気づけないのか
それは「空気」を読むからです。
コンセンサス重視の空気がカギを握ってます。
もう少し丁寧にひも解いてみましょう。
iPhoneで変わった「前提」とは・・・
①「携帯電話」→「ポケットの中のコンピュータ」
②「電話をかけるもの」→「アプリで何でもできるもの」
③「キャリアが機能を決める」→「自由にアプリを作れる」
しかし日本企業は気づきませんでした。当時の日本企業の反応を振り返ると「前提の変化」に気づいていなかった事がわかります。
当時の日本の携帯業界には、こんな空気でした。
①iPhoneは日本では売れない。ボタンがないと使いにくい
②タッチパネルだけでは文字入力が遅い。
日本の若者はケータイで高速にメールを打つ
③ワンセグもおサイフケータイもない
日本市場ではむずかしい
実際、NTTドコモは2007年にiPhone導入を見送った理由は「iモードとの統合が困難」でした。
前提が変わっていたのに・・・
iPhoneは「携帯電話の改良版」ではなかったわけです。
「ポケットに入るパソコン」だったのに。携帯電話の概念に因われていました。
なぜでしょう?
今日のあなたの会社にも似たような事がありませんか?
2:なぜ気づけなかったのか?
日本企業が前提の変化に気づけなかった理由は、3つあります。
①「既存の顧客」を基準に考えた
②「改善」を「良いこと」だと盲信した
③「社内コンセンサス」を重視した
◆滅びた企業
・携帯メーカー:
シャープ、ソニー、パナソニック、NEC、富士通——端末ほぼ全滅
・Nokia(フィンランド):
世界シェア40%→端末ほぼ消滅
・BlackBerry(カナダ):
ビジネス市場で圧倒的だった→一部の業界を除きほぼ消滅
◆生き残った企業
・Apple:
時価総額、約3.99兆ドル(約598.5兆円)
・Samsung:
前提の変化を認め、Android搭載で世界2位に
・NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク
端末メーカーは死んだが、通信インフラ企業は生き残った
前提が変わったことに気づいて、組織を変えた企業は生き残り、結果的に変われなかった企業は下降していきました。
3:似たようなことがAIでまた起きている
2022年11月、OpenAIがChatGPTを公開
また「前提」が変わりました
・「人間が文章を書く」→「AIが文章を生成する」
・「書くこと」が価値だった→「編集すること」が価値になった
しかし多くの経営者は気づいていないように感じます。
・「AIを全社導入しました」
・「業務効率化のためにAIを活用します」
・「DXの一環として生成AIを推進します」
AIを「DXツールの延長線上」に捉えているように感じます。
なぜなら、突然の変化に対して「判断基準」の「軸」がないからでしょう。
◆AIで繰り返されるワード
①:成功事例は?(合意を得やすい)
②:課題解決は?(反対意見が出にくい)
③:「前提の変化」の議論には「正解がない」
これは、書籍「失敗の本質」で語られていることに通じてないでしょうか?
「失敗の本質」の「まとめ」
▼
・戦略目標が不明確
・情緒的な意思決定
・現場主義
つまり、AIを「DXの業務効率化ツール」として捉えています
・「ChatGPTを使えば文章作成が速くなる」
・「AIは人間の補助ツールだ」
・「人間の編集者がいれば品質は保てる」
「前提」が変わったのに、「考え方」が変わっていない。
自社にとって「何を意味するのか?」という視点が欠けている。
AIは「文章作成の効率化ツール」ではなくて、「文章作成という行為の概念」が変化したのです。
これは、Appleが「App Store」というエコシステムを作っている間に、日本のキャリアが「iモード公式サイトの改良」に固執していたのと似ていませんか?
4:改善だけでは本質的な変化を捉えきれない
「まずは改善・効率化による段階的変化を重ねることが現実的であり、それでも戦略的価値がある」という主張もありますが、そこで満足して留まっていないでしょうか。
「改善型アプローチ」には価値がありますが、「改善だけ」では本質的な変化を捉えきれません。
それゆえに「再定義」としての「問い」が重要なのです。
これらは、よくある慎重論であって、この変化のスピードについていけるでしょうか。まず無理です。そういう事例をこの30年間見続けてきました。
5:「前提の変化」をどう見抜くか?
「前提の変化」に気づくには、下記の3つの「問い」が有効だと思います
問い①:
「これまでの成功体験」が通用しなくなっていないか?
2007年:「日本のケータイは高機能だ」
👉 前提が変わり、通用しなくなった
2025年:「うちの編集者は優秀だ」
👉前提が変わり、「書く能力」より「監修する能力」が求められる時代になった
問い②:
「既存の顧客」ではなく「新しい使い方」を想像しているか?
2007年:日本企業は「既存のケータイユーザー」を基準に考えた
👉Appleは「これまで携帯を使わなかった人」を想像した
問い③:
「改良」ではなく「再設計」を考えているか?
2007年:「iPhoneに対抗する機種」を考えた
👉Appleは「携帯電話という概念」を再設計した
5:いま必要なこと
① 「AI編集アーキテクト」という新しい職種が組織に必要
・AIが参照する情報を整理する
・AIの出力を監修する
・AI運用のポリシーをつくる
これは技術者でも、従来の編集者でもない。新しい職種です。
※一部の企業で採用が始まってます
② 「効率化」ではなく「役割の再定義」として捉える
「AIで何時間削減できるか?」ではなく、「AIがある時代に、人間は何をすべきか?」を問う。これが必要です。
ここを明確化している企業がどれほど存在しているでしょう?
③ 社長直轄プロジェクトとして立ち上げる
前提が変わったなら、組織の前提も変える。
既存部署(情シス、DX推進室)に任せると、「既存の延長」で考えてしまいます。
AIを全員に使わせるのではなく、AIを上手に使ったら評価するだけでいいのです。給料や役職が上がるには、AIを上手に使いこなす(AIに教える)ざるを得ないような仕組みを作ることが大事。
AIは少数精鋭の方がパワフルに使える。この事実を忘れてはいけません。
※過去から学ぶほうがよっぽど大事
6:経済のパワーシフトという「前提」の変化
19世紀 :銀行資本:蒸気・鉄道
20世紀 :産業資本:石油・自動車
21世紀 :情報資本:ネット・クラウドサービス
2025〜 :計算資本:GPU・AI・電力網
経済のパワーシフトが起きています
過去の事例を引き合いに出して、前提が変わっていることを、自分のコトバで説明できるか?が大事だと思います。
なぜなら、各社、各部署、各人で状況は多種多様だからです。
いますぐ来月にこの「症状」はでませんが、「前提」の認識と判断が、5年後の明暗を分けるのは間違いありません。
このような状況は日本各地の会社の内部で起きています。
という私も自戒を込めて書きました。
少しでもお役に立てば幸いです。
池松潤
https://lit.link/junikematsu
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チップありがとうございます!
よい日をお過ごしください。