放送大学で心理学を学ぶ|実習編(1)人の記憶と知覚は、思ったよりあいまいだった
お読みいただきありがとうございます。
別の記事で、放送大学を卒業した後、改めて学士入学して、学習センターでの対面授業で、認定心理士になるために必要な「心理学実験1・2・3」と「心理検査法基礎実習」を受講したというお話をしました。
今回は、当時はIT屋だった私が、なぜ心理学実習の面接授業を非常に刺激的で価値のあるものと感じたのか、そして、受講するのは大変だったのになぜ学びが多く楽しかったと感じたのか、それをお話ししていきたいと思います。
まとめてお話しすると長くなるので、イキチリズムでは初めての連載形式としてみます。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
心理学実習面接授業のあらまし
「心理学実験1・2・3」となっていますが、難しさの差はなく、全国どこの学習センターで受けても内容が重ならないようになっています(補足ですが、放送大学生は、必ずどこかの学習センターに所属します。)。
土日の2日間に集中的に行われ、実際に実験を行って、レポートを提出する、という、結構ハードな内容です。
心理学の面接授業は非常に人気があり、所属センターだけでは受講することができず、私もですが、複数の学習センターに申し込む方が多いようです。
私は、心理学実験1は所属の学習センター、心理検査法基礎実習、心理学実験2と3は別の学習センターで受講しました。
ここからは、連載の1回目として、心理学実験1について、お話ししていきます。
授業で使われた資料や具体的な内容に関わる部分は控えつつ、ここでは、受講して自分が感じたことを中心に書いていきます。
授業の概要
受講したのは2024年5月でした。
この面接授業は、自分用パソコン持ち込み方式(BYOD : Bring Your Own Device)で、あらかじめ申請をして、学習センターのネットワークにWi-Fiで接続します。
パソコンを持ち込める、というところで、IT屋としては、ちょっとテンションが上がるというか、楽しそうやん、という感じになり、私は、思い切って面接授業のためにノートパソコンを購入していました。しかも、放送大学生なので学割で・・・^^;
授業の中で実際に自分の手で実験を行い、心理学の仮説設定や実験方法、データ整理、レポートの書き方などを学びます。
この授業では、レポートは授業中に作成し、教室のネットワークプリンターで印刷して提出する、という方式でした。
授業テーマ
今回の授業で取り上げられた実験テーマは、次の2つでした。
情報伝達
ミュラー・リヤー錯視
ここからは、それぞれの実験内容と参加した感想をお話ししていきます。
情報伝達
人間の「記憶」について考える実験です。情報が人から人へ伝わっていく中で、元の情報とは変わってしまうことがあります。それはなぜ起こるのか、ということが体験できました。
記憶とは脳の働きですが、脳というのはある意味怠け者、よく言えば効率的で、情報を簡単にして保存しようとするようです。
コンピュータで例えると、画像を保存するときに、オリジナルのままだと容量が大きくなってしまうので、JPEG形式にして圧縮しますよね。脳もそのようなことをしているのだと思います。
平均化、強調、同化といった記憶のメカニズムがあり、それが関連し合って働くことで、情報がだんだんと変化していく、というのが今回の仮説で、それを実験によって検証しました。
仮説といいつつ、すでに多くの実験で確かめられていることなので、改めてそれを確かめたわけです。
イギリスの心理学者バートレットさんが、90年以上前に考案した連鎖再生法という有名な実験ですが、これは、先頭の人が、あまり見たことのない形の図形を見せられ、それを覚えて絵に描いて次の人に見せて、次の人はそれを覚えて絵に描いて次の人に見せて・・・と順番に繰り返していき、その中で絵がどのように変化するかを観察する、という実験です。私も被験者として実験に取り組みました。あまり見たことのない図形を見せる、というところがポイントです。
実際の実験結果はお見せできないので、私が記憶に基づいて再現したイメージ図を載せます。

最初の絵が、最後には、猫のようなものに変わっていました。
馴染みのない絵を見たときに、知っている身近なものとして理解しようとする働きが「同化」です。今回は、よくわからない絵みて、身近な動物「猫」じゃないかと解釈しています。
それから、絵がかなり単純になってます。これは、元の情報から詳細な部分が脱落していく「平均化」という働きです。
また、笑い顔になっています。これは、残った情報が独自の意味を持って誇張される「強調」という働きです。
人数が少なく、また、そもそも心理学を学ぶために集まっている方たちの集団なので、結果に偏りが出ることもありそうですが、それでも、仮説が裏付けられたように思えます。
この実験で私が感じたのは、人間の記憶というのは、実際に見たものを「録画を再生するようにそのまま伝える」ことができないのだな、ということでした。
人間は、何かを見た後に、印象に残ったことや強く興味を引かれたことを、自分の知識や先入観で補って改変していく、ということです。情報を正しく伝達するには、記憶に頼らず確認できるような資料や複数の情報を組み合わせて記憶のメカニズムの影響を受けにくく工夫する必要があるのではないか、と考えました。
ミュラー・リヤー錯視
人間の「知覚」についての実験です。私たちが見たり聞いたりしたものと、実物が明らかに食い違う現象を「錯覚」といい、特に、見たものに起こる錯覚を「錯視」といいます。
例えば、昇ったばかりの太陽や月は、天の真上付近にあるよりも大きく見えますが、写真に撮れば、実は同じ大きさです。
錯視は法則性がある「ずれ」だと言われています。錯視は、人間の「見る」とはどのような働きなのか、それを理解するための重要な手掛かりです。
今回は、「ミュラー・リヤー錯視」という、棒の両側に外開きの羽根がある場合と、内開きの羽根がある場合では、同じ棒の長さなのに、外開きの羽根がある方が長く見える、という有名な錯視の実験です。羽根の角度によって錯視量(ズレの大きさ)がどう変化するのかを確かめて、錯視のメカニズムを考えました。一般的に、ミュラー・リヤー錯視の実験には、このような器具が使われます。
この器具は手元で長さを調節できるようになっており、自分が「同じ長さになった」と思ったところで止める、という作業を繰り返し行い、実際の長さとのずれを測定するわけです。
ここでは、私は「実験者役」と「被験者(実験を受ける側)役」をそれぞれ務めました。実験者役をしていると、自分が心理学の専門家になったような気がして、ちょっとわくわくしました。
この実験では、結果を統計的な手法で分析する必要があるのですが、私は文系のIT屋なので、どうもこの統計というのが苦手で、心理学統計法、という授業も合格ぎりぎりの成績でした。ですので、ここでも統計的な説明がうまくできず、申し訳ありません^^;
結果から言うと、今回は統計学的に有意ではない、つまり、期待していたような結果にはなりませんでした。
有名な実験なので、本来であればもう少しはっきりとした結果が出るはずですが、人数が少なかったり、実験ということに予備知識があったりで上手く止めてしまったり、などということが原因かもしれず、このような実験には、対象者の人数や属性、実験の方法、などといったことを考えるのが大切なのではないかと思いました。
それにしても、人間の知覚というのは、思っていたよりもあいまいなものでした。
しかし、これは悪いことではなく、このような知覚のメカニズムを理解していれば、例えば、道路に模様を描いて、自動車の運転者に錯視を起こさせることで、速度を出しすぎていると感じさせ減速させる、といったことに応用できるので、人間の仕組みを理解することは大切なことだと思いました。
まとめ
それまでも放送大学で心理学を学んではいましたが、放送教材と教科書で学んでいただけで、初めて面接授業に参加し、他の学生と一緒に手を動かして実験を行ったことで、改めて心理学の面白さと奥深さを感じることができました。
それと、人間の記憶や知覚といった脳の働きは、自分が思っていたよりもあいまいで、「俺は自分が見たことしか信じない」などとは言えないような気がしました。
いや、これは、あいまいというよりも、限られた容量の中でどのように効率的に情報を扱うのか、そのために工夫して獲得された仕組みなのかもしれません。
このようなことを考えていると、「人工知能」と呼ばれているAIにも興味がわいてきます。AIを知ることで、人間の心理や意識といった脳の働きを、また別の視点から深く考えることができるかもしれません。
心理学とは自分も含む人間を理解していこうとする学問であると、強く感じ、ますます興味がわいてきて、この後に受ける面接授業も楽しみになってきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、「心理学実験2」の授業を受けた話を書こうと思いますので、どうぞお楽しみに。
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