放送大学で心理学を学ぶ|実習編(4)心理検査には対象となる人がいる
お読みいただきありがとうございます。
放送大学を卒業した後、改めて学士入学して、学習センターでの対面授業で、認定心理士になるために必要な「心理学実験1・2・3」と「心理検査法基礎実習」を受講したという話、今回はその4回目、最終回です。
当時はIT屋だった私が、なぜ心理学実習の面接授業を非常に刺激的で価値のあるものと感じたのか。そして、受講するのは大変だったのになぜ学びが多く楽しかったと感じたのか。
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
心理学実習面接授業のあらまし
今回は、心理検査法基礎実習についてお話しするのですが、これまでの心理学実験と違うのは、心理学実験が人間の心の働きを実験によって確かめるという目的であるのに対して、心理検査は、実際に対象となる人がおり、その人の心の状態を調べる(検査)という違いがあります。
今回、この「心理検査には対象となる人がいる」という、いわばあたりまえのことを、私は知ることができました。
実習は、土日の2日間に集中的に行われ、実際に心理検査を行って、レポートを提出する、という、結構ハードな内容です。
私は、所属センターでは受講することができず、別の学習センターで受講しました。
今回も、授業で使われた資料や具体的な内容に関わる部分は控えつつ、受講して自分が感じたことを中心に書いていきます。
授業の概要
受講したのは2024年6月でした。
連載としては4回目ですが、実際に受講したのは、心理学実験1の次、2番目に受講しています。
所属している学習センターではなく、隣の学習センターでの受講です。
心理学実験1・2を受講した学習センターとは別なのですが、今回のセンターがある町は、私の両親が眠るお寺があるところなのです。
その学習センターに行くのは初めてですが、お寺へ行くために毎年訪れている土地なので、勝手が分かっていて安心できました。
今回も、学割で購入したおなじみの愛機を持参し、自分用パソコン持ち込み方式(BYOD : Bring Your Own Device)での受講です。
今回は、課題レポートは自宅で作成し、後日、センターへ提出する方式でした。
授業テーマ
対象となる人(クライエント)の心の状態や性格、抱える問題を深く理解し、適切な支援の方法を見立てるプロセスが「心理アセスメント」です。
心理アセスメントの基本となるのは、面接法、観察法(行動観察)、検査法(心理検査)です。今回、授業で体験したのは、この心理検査です。
心理検査には、「質問紙法」、「投影法」、「作業検査法」などがあり、今回体験したのは、質問紙法と投影法です。
それぞれに、メリットとデメリットがあり、万能の検査法は存在しないといわれています。
従って、複数の検査を組み合わせて色々な視点から理解しようとする「テストバッテリー」という考え方が大切になってきます。
今回の授業で取り上げられたのは、次のものでした。
ビッグファイブ尺度(質問紙法)
バウムテスト(投影法)
P-Fスタディ(投影法)
テストバッテリー
ここからは、それぞれの内容と参加した感想をお話ししていきます。
ビッグファイブ尺度(質問紙法)
人の基本的性格特性は情緒不安定性、外向性、開放性、調和性・協調性、誠実性・勤勉性の5つの次元で記述できるという考え方に基づく質問紙法です。
話し好き、悩みがち、のような60種類の項目に対して、「非常に当てはまる」から「まったく当てはまらない」までを7段階に分けて回答し、結果を集計して分析します。
実際に検査を体験して、結果を自分なりに読み解いてみると、私は「自分が閃いたこと、やりたいと思ったことに黙々と取り組むタイプで、何か突発的な事態があれば対応できる柔軟性も持っているが、自分がやろうとしていることがうまくいかないと、通常よりも大きなストレスを抱えてしまい、強い落ち込みを感じてしまうことがある」ということになりました。
「ほほう、なるほど」といったような結果でしたが、自分で自分の結果を分析しているので、自分が都合がよいと思える方へ結果を寄せてしまっているかもしれません。
この検査法では、「面白いなあ」と思うくらいで、まだ特別な気持ちにはなりませんでした。
バウムテスト(投影法)
クライエントに「木」の絵を描いてもらい、描かれた木を手がかりに、クライエント自身も認識していないようなものも含めて、その人のパーソナリティや心の状態を理解するための情報を得ようとする投影法です。
授業として体験しましたが、質問紙法に比べて、投影法では、結果を適切に解釈するために、より多くの知識や経験が必要になるように感じました。
木の大きさや枝、葉、実など、どのようなものが描かれているか、線の濃さ、太さなどのほか、描かれた絵だけでなく、絵を描いている様子なども観察し、描かれた絵に対する質問などを行い、解釈をしていきます。
この「自分自身も認識していないものを読み取られるかもしれない」というところで、私の心はちょっとざわつきました。
私にも、他人にはあまり言わずに心に秘めていることがあります。
また、心の奥底に眠っている、自分でも気づいていない、または、気づきたくない傾向があるかもしれません。
授業の中で体験するものとはいえ、このようなことが読み取られてしまうかと思うと、漠然とした不安を感じました。
実際に自分が描いた絵をここに載せることもためらわれます。自分の心やパーソナリティを読み取られてしまうのではないか、という漠然とした恐怖感です。
実際に体験した結果は、自分なりに「なるほど」とは思えるものでしたが、バウムテストに感じた恐怖感に近いくらいの不安感というのが、私にとって、貴重で忘れられない経験となりました。
P-Fスタディ(投影法)
P-Fスタディ(Picture-Frustration Study、絵画欲求不満テスト)は、アメリカの心理学者ローゼンツァイク(S. Rosenzweig)が考案した検査法です。
物事がうまくいかないとき(欲求不満場面)に、その人がどのような反応をするかということから、心理的な傾向を捉えようとするものです。
24枚のマンガ風の「欲求不満場面」に対して、どのように答えるかを記入してもらい、その反応を解説手引きに基づいて11種類の評点因子に分けて、心理的な傾向を分析していきます。
詳しい方法を解説されているサイトが色々とありますので、詳細はそちらを見ていただく方がよいと思います。
自分が体験してみて、まず、検査を受ける側の立場では、どうしても「こう答えたらどう判断されるんだろう」と考えてしまい、思い浮かんだままに答えることが難しかったです。
検査用紙に描かれたイラストに対して答えていく方式のため、バウムテストほど心の中を見透かされるような気持ちにはなりませんでしたが、自分のパーソナリティを調べられると感じてしまって、どうしても「よく思われたい」という気持ちが出てきてしまいました。
検査を行う側の立場では、答えの内容を解説手引きに基づいて分類していくのですが、ぴったりと当てはまらないことも多く、簡単に判断することができなくて、難しさを感じました。
見よう見まね、ではありませんが、自分なりにやってみて、実際には、高い分析技術や経験が必要で、じっくりと時間をかけて判断する必要があると思いました。
自分なりに自分の回答を分析し、さらに自分なりに解釈してみると、「全体的にみると、欲求不満場面で、自分を主張するよりも我慢して周囲と上手くやっていこうとする傾向が見られるが、他者との関わりがうまくできず、生きづらいと感じている可能性がある」となり、なるほどと思いつつ、本当に客観的な解釈なのか、自分でも分かりませんでした。
自分が受け入れにくい解釈を、意識的に避けてしまったような、居心地の悪さも感じました。
テストバッテリー
ここまで心理検査を体験してみると、一つの答えが簡単に導き出されるようなものではなく、心の状態がどのようなものか、そのヒントを探るようなものであると感じました。
一つの検査結果からだけでなく、複数の検査を組み合わせて、クライエントを理解しようとする考え方が、テストバッテリーです。
実際に体験してみると、心理検査の結果は思っていたよりも単純なものではなく、一つの結果だけからその人を理解するのは難しいと感じていたので、この考え方は、なるほどと思えました。
今回体験した3つの検査の結果を、テストバッテリーの考え方に基づいて評価してみると、つながっているようにも思えましたし、つなげてしまったようにも思えました。
気をつけないといけないことは、心理検査の結果からだけで、クライエントがこういう人だ、と決めつけないことだと思いました。
まとめ
実習を体験するまでは、心理検査とは、テレビのバラエティ番組でやっているような、対象がどのような人物なのかを「あなたはこういう人ですね!」と言い切るようなものだと漠然と考えていました。
エンタメの世界であればそれでよいのかもしれませんが、実際に3つの検査法を体験する中で、心理検査は「人間を知る」ための道具であり、心理アセスメントの視点、例えば、セラピストがクライエントのパーソナリティや心理的傾向を全体的に把握し、カウンセリングに役立てていくものである、ということが理解できました。
今回は、自分を被検査者として検査を行ったので、どんなことを考えながら答えたかが分かりますが、実際の心理検査では、検査結果だけを見ても、相手がどんなことを考えながら答えたのかまでは分かりません。
心理検査を行う上でも、クライエントとの信頼関係(ラポール)を形成していくことが、とても大切だと感じました。
自分が検査される立場になってみると、心の中を見透かされてしまうような不安を感じました。
また、検査する側になってみると、相手が受け入れにくいような結果だったときに、その結果や自分の解釈を、相手にどのように伝えればよいのか等、非常に心の葛藤があり、心理検査が人間を対象として行うものであり、その怖いところや、結果を適切に取り扱うことの大切さを体感することができました。
心理検査は、検査する側のために行うものではなく、クライエントの幸せのため、よりよい人生を送っていただくために行うものだという、一番大切なことを学ぶことができました。
連載を振り返って
ここまで、4回にわたって定年前のIT公務員だった私が、放送大学の面接授業で心理学実習を受講した話をしてきました。
初めは認定心理士となるために受講することにしたのですが、実際に受講してみると、心理学の面白さだけでなく、怖さや大切なことを知ることができ、非常に価値のある体験ができました。
改めて、どの授業も素晴らしく、どの先生からも素晴らしい講義をしていただいたことについて、感謝を申し上げます。
放送大学では、授業で使用された資料や教材、具体的な授業内容などをインターネット上に掲載することについて注意が示されているため、具体的なお話をすることは控えましたので、私が感じたことがどこまでお伝えできたのかは分かりません。
授業としてではありますが、実習を行うと、心理学の専門家になったような気持ちにもなれました。
もし、心理検査や心理学実験に興味を持っていただけたのであれば、ぜひとも受講をしていただき、私が体験した授業の素晴らしさを体験していただければうれしいです。
これで、放送大学で心理学を学ぶ(実習編)の連載を終わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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