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散々な面接たち ~B社:女性に働きやすい職場?~

『湿っぽいエッセイも書きたい』に収録されている「散々な面接三選」のうちのひとつ、B社の話を試し読みとして掲載します。


B社:女性に働きやすい職場?

新卒で入った会社で丸三年働き、有休を消化しつつ三月末に辞めたあと、私は無職になった。労働が嫌になり、失業給付をもらって何か月かふらふらしようと思った。


当時は自己都合退職だと三か月の待期期間があり、その間は失業保険がもらえなかった。ただ、職業訓練を受けると、その時点から給付されるという決まりになっていた。勉強するのは嫌いじゃないので、五月から三か月間の職業訓練に通うことにした。平日は簿記や貿易実務、苦手な英語の授業を受けていた。


だらだら勉強していたら、七月になっていた。今月で職業訓練も終わりだ。エージェントに登録し、転職活動に本腰を入れることにしよう。そこで紹介されたうちのひとつが、B社だった。担当者からは「社長は若い女性を取りたがっているので、伊古井さんは条件に合致していますよ」と言われた。社長以外の全社員が女性らしい。その時点で少し嫌な予感はしていたが、書類選考に通過したので面接を受けてみることにした。



B社は都心の閑静な住宅街にあった。一次面接はずっと社長が話していた。

「資格取得を全力でサポートしているよ。ただ、前にいた人は資格を取って、よその会社に逃げちゃったんだよ。なるべく辞めないでもらえると助かるよ」と言われた。逃げたくなるような会社だとわかった。

気前よく相槌を打っていたら、なぜか合格していた。B社に入社するつもりはなかったが、練習がてら最終面接を受けにいった。



最終面接は一次と異なり、経営などの難しい質問をされた。正直手ごたえはなかった。そして終盤に「ご家族はなんのお仕事をされているの?」と聞かれた。一般的には家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問は、就職差別につながるおそれがあるので不適切であるとされている。ただ、深い意味はないかと思い、正直に答えた。

すると社長の目の色が変わった。社長が今必要としている資格を、私の親戚が持っていたのだ。たしかに、親戚の会社とB社の事業内容には親和性があった。社長は「その会社と業務提携がしたいなあ」と言って、ひとりで盛り上がりはじめた。私は怖くなった。なぜ勝手に業務提携をする話になっているのだろうか。私は親戚にB社を受けていることすら言っていないのに。早くこの場から立ち去りたかった。

社長はそんな私の気持ちなど露知らず、面接の最後に「伊古井さんは内定です!」と上機嫌に伝えてきた。おそらく、内定の理由は親戚だった。困った私は「他の選考との兼ね合いもございますので、今すぐには答えが出せません。申し訳ございません」と答えた。本当はその場で断りたいくらいだったが、さすがに言えなかった。社長は急にしゅんとし、押し黙った。

そのあと社長が「駅まで送るよ」と言ったので高級車に乗せてもらったが、車内では終始無言で人が変わったようだった。雑談を投げかけたが、無視された。駅で降ろしてもらってひとりになり、心底ほっとした。社長と会うことは、もう二度とないだろう。



翌日、エージェントの担当者から電話があり、「残念ですが、昨日最終面接を受けてもらった会社から、不合格という連絡をいただきました」と言われた。二十代の小娘に内定を保留にされて、気に食わなかったのだろう。こっちから願い下げだという意思を、断られたのはそちら様だという事実を、ここに書き残そう。


ちなみに現在、B社は求人サイトで「女性に働きやすい職場」として特集されている。いまだに社長以外の男性社員は一人もいないようで、女性たちに囲まれて満足げな社長の写真が掲載されていた。


▼ この本に収録されています


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