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【実験・電子工作】コンデンサ特性の理解:オシロスコープを使って充放電現象を観察する

前回のノートで,簡単な スイッチ付き LED 回路 のスイッチオン時の電圧挙動を確認しました.

今回は,コンデンサの基礎である充放電現象を理解するために,
直接それらを観察してみたいと思います.

道具リスト

セラミックコンデンサ:50V耐圧を利用

オシロスコープ:DSO138

その他:今回利用したものです

  • ブレッドボード

  • LED

  • スイッチ

  • 抵抗

  • 5V電源(USBケーブルから自作)

コンデンサの基礎論:静電容量(capacitance, electrostatic capacity)と放電(discharge)

まず,コンデンサの基礎を確認しておこう.

コンデンサの構造:絶縁体を導体板で挟んだもの

コンデンサは2枚の金属板で絶縁体を挟んだものです.
絶縁体は,電子が伝導帯にないために,電流がほぼ流れません.

図1:コンデンサの構造.
https://www.matsusada.co.jp/column/capacitor.html より引用.

これに電圧を印加した場合にどのような振る舞いをするかは,
電磁気学の基礎方程式である,
Maxwell 方程式からいくつかの式を考えます.

式(1):Maxwell 方程式.
電磁場の支配方程式.

アンペール-マクスウェル(Ampere-Maxwell)の式:変位電流が流れることに注意する

Ampere-Maxwell の方程式を確認します.

式(2):Ampere-Maxwell の方程式

この式は物質中(誘電率 $${\epsilon}$$, 透磁率 $${\mu}$$)で成立する.

磁界$${\mathbf{H}}$$に関しては磁束密度 $${\mathbf{B}}$$ を用いて,$${\mathbf{H} = \mathbf{B} / \mu}$$と表せる.

一方で,電束密度 $${\mathbf{D}}$$と電場 $${\mathbf{E}}$$ については,

式(3):物質中の電束密度の関係式.
$${\mathbf{P}}$$ は絶縁体中で誘起された分極を示す.

の関係が成立する.ここで,$${\mathbf{P}}$$ は絶縁体内の分子が作る電気双極子の集まり,分極である.

電圧を印加しても,絶縁体には電流は流れないので,電流密度(伝導帯にある自由電子による流れ)は$${\mathbf{j}_{f} = 0}$$である.

すなわち,コンデンサに充電される電荷は,
変位電流 $${j_{d}}$$
によって行われることに注意しよう.

ガウス(Gauss)の法則:表面電荷に関するガウスの法則を適用する

Ampere-Maxwell 方程式中に定義された変位電流(物質中の分極の誘起によって生じる見かけの電流)から,極板間に電圧が加えられたとき,変位電流 $${j_{d}}$$ によって充電が起こることを確認した.

充電される電荷量に関して,その表面電荷(電極板表面に単位面積あたりに充電される電荷量)を $${\sigma(t)}$$ として,ガウスの法則をこの平行板の一方に適用すれば,以下の式が得られる:

式(4):Gauss の法則をコンデンサの一方の電極板へ適用.

コンデンサの容量:ガウスの法則から電位と容量の比例関係が成立

極板の断面積を $${S}$$ とすると,極板に蓄えられる電荷 $${Q}$$ は,以下のように表せる.

式(5):コンデンサに蓄えられる電荷量を表す式.
一方の極板に $${+Q}$$ が もう一方に $${-Q}$$ の電荷が充電される.

ここで,図1に関して,
電極が互いに距離$${d}$$だけ離れあった極板間として,
それらにかかる 瞬時電圧 $${V(t)}$$ を考えよう.
これは,電位差の定義から以下のように表せる:

式(6):コンデンサの電極板間に生じる電位差

したがって,瞬時電圧と,蓄えられる電荷に関する比例関係が得られる:

式(7):瞬間的な電荷量と瞬時電圧間の比例関係.

ここで,比例係数 $${C}$$ を定義する: 

式(8):静電容量 $${C}$$ の定義.
極板間にかかる電圧$${V(t)}$$と充電された電荷$${Q(t)}$$間の比例係数である.

$${C}$$ をコンデンサの容量(キャパシタンス, capacitance)と呼び,
特に静電気(時間に依存しない場合)に関しては,
静電容量(electrostatic capacity)という.

理論:RC回路を考える

コンデンサの充電・放電現象を観察するために,以下の回路を設計します.
回路への供給電圧は $${V_{0} = 5}$$[V] とする.

図2:スイッチ/LED付き RC 回路.

この回路は以前のノートで議論した,スイッチ付きLED回路の拡張です.

この図2の回路に関して,抵抗で測定される電圧は,回路を流れる電流を測定していることに相当します.

今回測定したいのは,コンデンサからの放電です.

測定部分: コンデンサ C にかかる電圧を測定

回路のどの部分の電圧を測定するかについて書いておこう.
コンデンサ C に Oscilloscope のプローブを接続して,挙動を確認することを想定します.

コンデンサでの電圧降下 $${V(t)}$$ とします.
ただし, LED の順方向電圧は $${V_{F}(t) \to V_{F} , (t \to \infty)}$$ (2V程度で一定)とする.

電圧・電流方程式:RC回路の電圧・電流を計算

まず,図2のRC回路の各電圧を考える.
電圧・電流に関する方程式を列挙しよう:

式(9):RC直列回路に関する電圧・電流方程式.
ここで,電圧 $${V, V_{R}, V_{F}}$$はそれぞれ,コンデンサ,抵抗,LED にかかる電圧,
電流 $${I_{d}, I_{R}, I_{F}}$$ はそれぞれ,コンデンサに流れる変位電流と,抵抗に流れる電流,LEDの順方向電流を示す.

ここで,コンデンサに流れる変位電流は,コンデンサに蓄えられる電荷 $${Q(t)}$$ の時間微分から得ることができることに注意.

充電現象:スイッチを入れた瞬間からの微小時間に関して記述する

まず,$${t \approx 0}$$ 近傍の微小時間において,
変位電流が流れている間は,$${V(t) < V_{F}}$$であるといえる.
すなわち,この時,$${I_{F} = 0}$$ であるとして,$${V(t) > V_{F}}$$ になるまでの挙動を調べる. 
$${I_{R}(t) = V(t)/R}$$ に注意して,電圧方程式を整理しよう:

式(10):スイッチをオンにした充電時の電圧方程式.
$${V(t) < V_{F}}$$ まで充電されるまでは成り立つ.

初期条件 $${V(t = 0) = 0}$$ のもとで,
式(10)の微分方程式を解けば,電圧式を得る:

式(11):コンデンサにかかる電圧.ただし,$${t > 0}$$かつ$${V(t) < V_{F}}$$ の間だけ成立.

ここで,$${\tau}$$ はこの回路の時定数である.

式(12):回路の時定数.

ちなみに,式(11)の電圧式が成り立つ時刻の範囲について計算できる:

式(13):式(11)の電圧式が成り立つ範囲.
この時間範囲が充電に費やされる時間である.

すなわち,充電時にコンデンサにかかる電圧 $${V(t)}$$ は以下のように表せる:

式(14):充電時にコンデンサに生じる電圧.

放電現象:スイッチを OFF にした際の放電に関して記述

コンデンサに時刻 $${t = t_{f} > 0}$$ まで,電荷 $${Q_{f} = C V_{f}}$$ が充電された後,スイッチを OFF にした際に,どのような放電現象が観察できるか,理論的に考察しておこう.

先ほどの充電式から,$${V(t=t_{f}) \leq V_{F}}$$ であり,
LEDへと放電するだけの電圧はないことに注意しよう.
また,放電時には,変位電流は生じていないことにも注意.

この時,コンデンサ C と 抵抗 R の閉回路を考え,電圧方程式を得る:

式(15):放電時の電圧方程式.
スイッチを切った際の RC 閉回路に関する電圧方程式.

この方程式を解くと,放電に関する時間変化が得られる:

式(16):放電時のコンデンサにおける電圧変化.
電圧 $${V_{f}}$$ まで充電されている場合に,$${t \to \infty}$$ で $${V(t) \to 0}$$ へと放電していく.

ここで,放電の特徴時間 $${\tau_{0}}$$ は次式である:

式(17):放電の特徴時間.

シミュレーション:数値計算によるグラフのプロット

このようなちょっとしたシミュレーションは,Google Colab を使った ノートブック で簡単にできますね.Gemini によるサポートもあって,コーディングはスムーズにできます.

無次元化:電圧式を整理する

式(14)および,式(16)の電圧式をそれぞれ物理量の単位に注意して,変形しておくと,シミュレーションしやすいです(無次元化).

式(18):充電時の電圧式.
式(19):放電時の電圧式.

シミュレーションをするにあたって,パラメタを以下のように設定します.

式(20):シミュレーションに用いるパラメタ.

シミュレーション結果:グラフのプロット

まず,充電時のシミュレーション結果を示します:

図3:充電時の電圧特性のシミュレーション結果.
図4:放電時の電圧特性のシミュレーション結果.

充電に対して,放電の方がかなり時間がかかることが確認できます.

実験:RC回路のブレッドボード上への実装と波形観察

いくつかコンデンサ容量を変えてみて,充電や放電時間の変化を直接観察してみます.

回路実装:ブレッドボード上への実装

図のようにブレッドボード上に実装します.

図5:ブレッドボード上に実装した RC 回路.

このコンデンサ間に生じる電圧特性をオシロスコープで観察することで,
コンデンサへの充放電現象を観察します.

波形測定:コンデンサにかかる電圧測定

以前紹介した,激安オシロスコープ DSO138 を用います.

 測定結果を以下に列挙していきます:


  • 0.1uF

図6(a):0.1 uF コンデンサの充電時電圧.
図6(b):0.1 uF コンデンサの放電時電圧.
  • 0.47 uF

図7(a):0.47 uF コンデンサの充電時電圧.


図7(b):0.47 uF コンデンサの放電時電圧.
  • 1.0 uF

図8(a):1.0 uF コンデンサの充電時電圧.
図8(b):1.0 uF コンデンサの放電時電圧.

充電,放電時の電圧波形の形状は,シミュレーションでプロットしたグラフ(図3,図4)ととてもよく一致している.

また,各測定結果の時間レンジに注意してほしい.
放電時間は容量を大きくするにつれて,長くなっていっていることが確認できる.この振る舞いも理論通りの結果である.

かなり精度良く,コンデンサの充放電現象を測定できている.

まとめ

今回,コンデンサの基礎論から,その充放電現象に関して,
理論だけでなく,実験も含めたノートを提供できたと思います.

個人的には,補遺に示すようなプロトタイプの失敗と試行錯誤を通して,
実践的な多くの学びが得られました.

補遺:回路設計での学び・プロトタイプの失敗原因

この図2のRC回路を設計するにあたって,いくつかのプロトタイプを作ったが,その試行錯誤によって,コンデンサに関する理解がかなり深まりました.

失敗1:コンデンサの放電ができない

このプロトタイプでは,コンデンサに充電できますが,放電経路がありません.特にその容量が大きい場合には,安全性に欠けます.真似しないこと.

図9:コンデンサの放電経路がない.

失敗2:放電経路がない・電源へのダメージの懸念

まず,先ほどの失敗と同様に放電経路がありません.
さらに,スイッチを入れた際に,変位電流が流れますが,
コンデンサに直列な抵抗がないので,電流制御ができていません.
場合によっては,大電流が流れて,電源にダメージが出る可能性もあるので,真似しないこと.

図10:放電経路がない.電源へのダメージの可能性.

失敗3: LEDの保護ができていない

充放電は行えるが,先ほど同様,LEDに急峻な変位電流によるダメージが出る可能性がある.

図11:LEDに対する保護がない.

失敗4:放電できない/定常電流が流れない

この回路では,コンデンサが充電されるまでの一瞬だけ,変位電流による電流が流れますが,それ以降は電流が流れません.
LEDはついていないように見えます.
また,放電経路もありません.

図12:放電経路がない.
変位電流のみ流れ,定常電流が流れないため,一瞬で LED は消える.


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