500万円でアパレル事業を買収した話を、赤裸々に書いてみる
こんにちは!
株式会社VIOLET代表の稲葉です。
2026年4月末に、ooju(オージュ)という子ども服ブランドをM&Aしました。アイテムがめっちゃかわいい、「子供服ではなく、私たちがかわいいと思う小さい服」というコンセプトが売りのブランドです。

弊社は新規事業に特化したマーケティング支援会社なので、今年からはスモールMAで自社でも事業を持ちグロースしていきたいと思いました。
なぜこの記事を書いているかというと・・・
知り合いにMAの話をすると「どうやって買ったの?」「ぶっちゃけいくらかかった?」「何が必要だった?」とたくさん質問がきたので
意外とスモールM&Aをやりたい人って多いんだなと思い、拙い知見ですがシェアさせてもらうことにしました。
詳細は後述しますが、結論やってみてかなり学びがありました。
スモールMAは、独立した人にもサラリーマンにも複業を考えている人にもいい選択肢の1つだと思うので少しでも参考になったら嬉しいです。
案件って、どうやって探すの?
「BATONZ」と「TRANBI」という事業承継のプラットフォームでソーシングしました。自分は案件数が多いBATONZをメインで使いました。
毎日Claudeに案件をリストアップしてもらって、良さそうなものにチェックを入れると、実名開示依頼が自動で送られる仕組みを作りました。基本ずっとこれをぽちぽちしてます。

探していた条件は、ざっくりこんな感じです。
・エリア:関東中心、近畿も対象
・事業タイプ:EC・D2C・通販などBtoC。高単価・高利益率・高LTVを重視
・予算:譲渡希望額2,000万円以下。赤字でも商品力があればOK
・テーマ性:成長性、ユニークさ、差別化要素があるか
・仲介の専門家が入っていない案件のみ
最後の条件だけ補足すると、専門家が入っている案件はFeeが15%くらいで、2,000万円のM&Aなら300万円くらい取られてしまうので最初から外していました。(その代わりMAに詳しいメンバーにサポートで入ってもらいました)
あと、自分は「赤字だけど、いい商品」という前提で探していたんですが、いい事業を見つけるのはけっこう大変でした。ここは今期がいる工程だと思います。当たり前ですが、いい事業ならそもそも譲渡しないですからねw
結果、20人くらいの売り手さんと面談して、oojuが圧倒的によかったので即決しました。
ちなみに、肌感で「いいかも」と思えた事業はoojuだけでした。事前にフィルタリングした上で面談してもいい事業は10件に1件もないと思います。
面談でなにを聞くの?
聞いていたのは、シンプルにこのあたりです。
・創業の経緯、会社とビジネスの概要
・今回の売却を検討した背景
・足元の経営課題
・成長余地
・買い手に求めること、期待すること
特に「売却理由」は深掘り必須だと思います。
みんな自分の事業が好きなので、きれいな理由を言いがちなんですが、売りに出ている以上、絶対に何かしらの課題があります。そこが自分に解決できる課題なのかどうかが、いちばん大事なところです。
あと、意外と大事だと思ったのが、候補の商品を片っ端から買って試すことでした。
oojuも実際に買って、自分の子どもに着せてみたんですが、デザインはもちろん、素材がめっちゃ良くてそれがM&Aの決め手になりました。
後日談ですが、譲渡してくれた事業主さんにも、何社か譲渡先の候補がいてうちより良い条件の会社もあったみたいです。その中でうちを選んでくれた一番の決め手は「商品に愛着を持ってくれたこと」でした。
スモールM&Aは人対人なので、最後は感情で決まる部分がけっこうあると思います。
なぜoojuを買収したの?
ooju は2022年春夏に、ファッションディレクターの野尻美穂さんが立ち上げたブランドです。
Robert P.Miller、WILDTHINGS、ディズニーとのコラボ。こどもビームスでのポップアップ。立ち上げから3年弱の小さいブランドとしては、けっこうな実績があるほうだと思います。
それでも、売上はピーク時の5,000万円から5分の1に落ちていました。
一番のボトルネックは原価高騰(原材料の高騰、為替影響、人件費上昇などなど)で、型数やロットが踏めなくなったことでした。加えて、ミドル価格の子ども服アパレルは新規参入が多く、ここ数年で競争が激化してる影響もあります。
正直、具体的な解決策があったわけじゃないですが、VIOLETなら事業をスケールできるのではと思った理由はこちらです。
①コアなファンが居た
oojuには野尻さんが離れたいまも根強いファンが居て、トータル150万円を使ってくれてる人もいます。モデルの子供も全て購入者のお子さんで成り立ってましたし、◯◯を入荷してという定期的な問い合わせがありました。
②市場のポテンシャル
子ども服アパレル全体で8,000億円の市場、ミドル価格帯だけでも2,000億円あります。つまり市場の1%でも取れたら20億円の事業にはなるので、ターゲットを尖ればいけるだろうと思いました。
③譲渡元の社長の人柄
これが最後すごく大きかったです。うちはモノづくり自体が初挑戦だったので、引き継ぎをしっかりしていただけるかがすごく大事でした。その点、前任の社長は東京まで会いに来て手取り足取り教えてくれ、いまでも大変感謝してます。
DD(デューデリジェンス)はやったの?
正直、やりませんでした。
スモールM&Aだと、お互いに専門家を入れていないケースも多いと思うので、正直かなり最低限のチェックポイントでGOしたと思ってます。
ちなみに事業引き継ぎでやったのはこのあたりです。
①事業譲渡契約書の締結
②オペレーションの引き継ぎ
③商標移管の手続き
④バーコード発番事業者(GS1)の申請
⑤倉庫の契約
⑥各種ツールの権限移管
⑦運営体制の構築
特に大事なのは①事業契約書の「表明保証」です。
最低限、各種書類が正確か、紛争とか抱えてないか、権利侵害とかしてないか、などはチェックする必要があります。
書類関係はBATONZが提供するフォーマットがあって、一定はそちらでカバーされているので安心を。
デザイナーが居なくなってしまった、、、
やはりトラブルは付き物ですねー。まいった。
oojuの服を作っていたファッションデザイナーさんは、譲渡と同時にいなくなりました。。(いたし方ないプライベートの事情で)
早急に新しいデザイナーさんを見つける必要があって、色んな人にInstagramでDMしましたw
ただ中々見つからず、救ってくれたのが、VIOLETの顧客でもあるCandy Stripperで30年ファッションデザイナーをしている板橋さんでした。
事情を話したら、「いい人がいるよ」とデザイナーさんを何人も紹介してくれたんです。超絶感謝です。
これは奇跡でした。再現性のある話ではないんですが、ひとつ言えるのは、事業を買う前に「この事業は誰の手で回っているのか」「その人は残るのか」を必ず確認したほうがいいですね。
原価が1.5倍になっていました
もうひとつ、買ってから直面したのがこれです。
昨年は6,000円で作れていた服が、いまは9,000円まで上がっています。原材料費と生産コストの高騰で、同じものを同じように作っていたら利益が出ない構造でした。
つまり、前と同じやり方では絶対に復活しないということです。
元々赤字からのスタートでしたが、そもそも買収コストの2倍以上が生産コストで先立つので立て直しは待ったなしの状態です。
なので、この3ヶ月で事業のやり方をぜんぶ見直しました。大きく5つやったことを紹介します。
①業務オペレーションを抜本的に作り直した
まず、生産管理ツールを自分たちで作りました。
アパレルは工場、OEM、副資材、倉庫、自社と関係者でスムーズに連携できるかが、かなり重要な事業です。
いままではスプシとLINEでのやりとり、在庫に至っては倉庫とやりとりする1人しか把握しきれてない状態でした。
そこで、各アイテムの生産進捗を管理できるツールを作りました。在庫もリアルタイムに反映されて、追加発注も即座にできます。Claude codeを使えば2~3日で開発できました。


これ以外にも発注、在庫管理、LOOK撮影、ECサイト✕Claudeなど、ほぼ全ての工程をAIドリブンで再定義しました。結果、半分くらいの人員で十分に運営できる状態になりました。
②ブランドコンセプトを見直した
次に、ブランドコンセプトを見直しました。
やったのは購入者さんとの座談会です。実際に買ってくれている人が、なぜoojuを選んでいるのかをひたすら聞きました。
「素材がめっちゃいい」「オーバーサイズが可愛い」「ジェンダーレスだから兄弟で着れる」「うちの子に恐竜柄は着せたくない」「娘とのお出かけで愛用してる」「ナイロンのサロペットが最高」、、、
その結果たどり着いたのが「おしゃれなパパに愛される子ども服」です。
どうやら一般的に子ども服を買うのが95%がママみたいなんですが、oojuはオーバーサイズすぎて保育園に来ていけない服もあります。

結果的におしゃれなパパから強い支持を得ていることがわかりました。
まず、座談会に来てもらったパパさんもオーバーサイズな服を着ていて、子供と合わせてLOOKのような印象でした。集まったパパさんみた瞬間に「あ、これパパさんに刺すブランドだ」と確信しました。
③生産戦略を見直した
子ども服って1アイテムずつ作ると原価がすごく高くなります。大人服と製作工程は代わりないのに、値段が半分くらいだからです。
なので、oojuは先にオリジナル生地を作って、その生地から複数のアイテムを展開する作戦に変えました。生地でロットをまとめて、アイテム側の原価を下げる考え方です。
海外の人気ブランドが取ってる戦略で、パパさんはセットアップ好き説があるのでoojuもパクらせてもらうことにしました。

謎に1500円のコーヒー頼んでしまった
④OEM先を探し直した
生産をお願いするOEM先も新しく探しました。いろんな方に紹介してもらって、たどり着いた感じです。
やってみてわかったんですがアパレル業界は価格がかなり不透明です。
見積もりを見ても相場がわからない。結局、サンプルを実際に作ってみて、はじめて原価がわかります。なので、複数社でサンプルを作って比べるのが確実なんですが、サンプル作るのもコストと期間が掛かるので、ここは人づてに紹介してもらいました。
⑤マーケも抜本的に変えます
ここはまだ仕込み中なので、少しだけ。
来年「親子フェス」をやります。あと、映画も作りますw
このあたりは、動き出したらまた別の記事で書きます。乞うご期待ということで。
また、SNSのギフティング(インフルエンサーさんへの商品提供)も大事な施策なのでこれを管理するツールも作りました。これはめっちゃ便利なので売れそう。


3ヶ月やって、いま思っていること
正直にいうと、思ったより大変です。
そもそも利益を出すのが難しい構造だったので、モノづくりからマーケまで、抜本的に見直さないといけませんでした。
薄々は感じていたんですが、事業を引き継いでから気づいた点も多かったです。本当は買収前に勝ち筋が全部見えていたらいいんですが、なかなかそうもいかないな、と思います。
一方で、toCビジネスの楽しさも知りました。
お客さんから「本当に可愛い」「サロペット4色全部買いたいから、売り切れた色も再入荷してほしい」みたいな問い合わせが来るんです。これはBtoBのマーケ支援では味わえなかった感覚で、シンプルに嬉しいです。
あとは、人の縁って本当に大事だな、と。
デザイナーさんの件もそうですが、VIOLETのメンバーに元子どもBEAMSの人がいたり、EC販売に詳しい人がいたり、子どもの撮影が得意な人、AIが得意な人がいたり。いろんな人がいたからこそ、3ヶ月でここまで進化できたと思っています。
これからスモールM&Aをやる人へ
実際にやってみて「これ先に知っておきたかったな」と思ったことを置いておきます。
安い事業には安い理由がある。買うのは事業ではなく「課題」で、それが自分に解けるかを判断すべき
商品は片っ端から買って試す。決め手にもなるし、売り手さんへの一番の誠意にもなる
事業のキーマンを確認する。意外と社外にキーマンがいることも
勝ち筋が全部見えてから買うのは難しい。緩いチェックポイントであとは思い切りが大事だと思う
買ったあとのほうが大変。でも、事業の当事者はめっちゃ楽しい。仮説が見えたあとの焼肉は格別
おわりに:一緒にやりませんか?
VIOLETはこれまで「スタートアップの急成長に、近道を。」をコンセプトに3年間マーケティングの支援に取り組んできました。結果、いろんな人たちの熱狂に触れる中で、仲間と事業に夢中になれる幸せを学びました。
家庭のため、子供のため、顧客のため、30代は葛藤が多いと思います。でも、やっぱり、自分が何かに夢中になることを諦めきれない。
「大切なものは、ほしいものより先に来た」

VIOLETは、これからtoC事業に特化してスモールM&Aをどんどんしていきます。それにあたり、VIOLETは共に夢中になってくれる3人目の正社員を募集します。
報酬は事業成長に連動して、事業家が事業に集中できる環境を。そして、それに見合った対価と体験を。
興味がある方はぜひ連絡ください!
