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葬送のフリーレン「女神の石碑編」を読んだ方への誘い(フリーレンをミステリとして読む)

この文章は『葬送のフリーレン』の単行本第13巻(女神の石碑編)まで読んでいることを前提にしていますので、未読の方は是非一度この素晴らしい作品を読んでから、またここに戻って来ていただけると嬉しいです。次の記事で作品の紹介をしています。

さて、単行本第13巻まで読んだということは、『葬送のフリーレン』をミステリーとして読む準備が整ったことになります。

もちろん、勘の鋭い方はもっと早くに気付くと思いますが、作者の意図としては「女神の石碑編」で一般読者の視点を大転換することを狙っているものと思われます。

何のことを言っているのかわからない?

大丈夫です。私も何か月もかけて丹念に読み込んでやっとわかったつもりになれました。

ここからは、『葬送のフリーレン』をミステリーとして読むための入り口を丁寧にご案内します。(中に入ったら、またご自身で先へ進んでください)

ミステリーへの入り口(女神の石碑編解説)

「女神の石碑編」では、キーノ峠の女神の石碑においてフリーレンが過去にタイムリープして、約80年前の「魔王討伐の旅」時代のヒンメルたちと再会し、現在に戻ってくるまでが描かれています。

フリーレンが過去にタイムリープすると、なぜかフリーレンは未来に戻るための帰還の魔法フィアラトールを「忘れて」しまっています。そこで、フリーレンは元いた未来に戻るためにヒンメルたちと帰還の魔法の魔法名(フィアラトール)について調査することになります。

先ほど「忘れた」と書きましたが、実は、ここは「忘れた」というより「知らない」と言う方が正確です。

なぜ、タイムリープの前にはフィアラトールを知っていたフリーレンが、タイムリープの後にはフィアラトールを知らないのでしょうか?

その理由は、フリーレンは「この世界でフィアラトールを知ることになっていない」からです。言い換えれば、この世界ではまだ過去にフィアラトールは発見されておらず、将来に発見されることにもなっていないからです。

フリーレンはヒンメルたちに、未来の魔法(飛行魔法など)を見せ、自分が未来から来たことを語ります。

この時、ヒンメルたちは「過去」は変えられるということを知ります。(フリーレンにとっての「過去」、ヒンメルたちにとっては「未来」ですね)

そして、難航する帰還の魔法の調査のために、ヒンメルはこの「過去は変えられる」ということを利用することにします。

ヒンメルは、「フリーレンが未来に戻るための帰還の魔法については、魔王討伐が終わった後に必ず調査する。そして必ず未来のフリーレンに伝える」ということを、「今」ここで決意することによって「世界のありよう」を変更したのです。

※こういった過去の事実を変更すること(過去改変)によって世界のありようが変わることを「世界線」が変わる等と言います。言葉の使い方についての流儀は色々ありますので調べてみてください。タイムリープやタイムトラベルによって過去の変更を行うことを本作では「時空干渉」と言っています。

このヒンメルの決意によって、フリーレンは「この世界の未来でフィアラトールを知ることになった」わけです。

こうしてフリーレンは帰還の魔法(=フィアラトール)を知り、未来に戻ります。

最後にまとめておくと、「世界のありよう」はヒンメルの決意によって次のように変わっています。(過去改変による世界線の変更)

  1. フィアラトールを知ることになっていない世界

  2. 《ヒンメルの決意》

  3. フィアラトールを知ることになっている世界

『葬送のフリーレン』をミステリーとして読む時の基礎は、「過去は変えられる」ということ、それをヒンメル・ハイター・アイゼンが知っていること、そして積極的に利用していることです。(もう一つのポイントは、フリーレンがこれらを知るのは二回目のキーノ峠到達時以降だということです。つまり、ヒンメルたち三人が犯人役、フリーレンが探偵役です。)

これを念頭に置いて全体を再読してみてください。

ちりばめられた沢山の手掛かりをおもしろいように拾うことができます。

更に先へ進むためのヒント

ここからは、更に先へ進むためのヒントを挙げておきます。

もちろんこれを読む必要はありません。一度全体を再読した後に読むほうが楽しめると思います。ここに書かれていない手掛かりを見つけたら、ぜひコメントで教えてください。

総論

「ミステリー」として読む場合、まずは(絵よりは)台詞に注目して読み込むことが大切です。その次に絵です。

読んでいて違和感を感じたり、意味がわからないと思っても、自分の理解力不足だとは考えないでください。違和感のある所には必ず作者の仕掛けがあると考えて大丈夫です。この作品は作者がそこまでしっかりと考えて作っています。私も、何度も読んで何週間も経ってからある時ふと理解できたという箇所がいくつもあります。

自分の違和感を見逃さないように、大切にしてください。これが最も重要です。

途中まではアニメにもなっていて、マンガに忠実です(台詞はすべて再現されていると考えてO.K.です)。マンガで不足していた描写が補われている場合もあるので、マンガを読んで更にアニメを見るのがベストです。(アニメはアマゾンプライムでも見ることができます)

各論(ここからは具体的なヒントになります。ネタバレ注意)

  • 第1話を丁寧に読み込んでください。大きな伏線が仕込まれています。特にヒンメルに注意してください。

    • 第1話のヒンメルの台詞について、フリーレンとの関係性からして普通はこんな発言はしないはず、という所はありませんか?

    • 第1話でエーラ流星を待つ50年の間に、ヒンメル・ハイター・アイゼンは何をしていますか?ヒンメルの死後、ハイターとアイゼンは何をしていますか?

    • まずは女神の石碑編でフリーレンと約束したフィアラトールの調査があります。その他に何かありませんか?

    • フリーレンはなぜエンデを目指して旅をすることになったのですか?その経緯を思い出してください。

    • 50年の間に、ヒンメルたちはそれぞれどう変化していますか?最初に読んだ時におかしいと感じたことはありませんでしたか?

  • ハイターはフェルンにどんな修行をさせていますか?何のために?

  • フランメの手記には何と書いてありましたか?日本語として普通はこんな書き方はしないという違和感のある表現はありませんか?

  • 僅かですが、ヒンメルたちと魔王との戦いの様子について間接的に触れている箇所があります。アイゼンとハイターに注意してください。そこから魔王戦について何が読み取れますか?

  • 剣の里でヒンメルはなぜ勇者の剣を抜けなかったのでしょうか?

  • 一級魔法使い試験の面接で、ゼーリエはフリーレンに何と言いましたか?おかしなことを言っていませんか?ゼーリエの発言には必ず背景があります。ゼーリエの発言を理解できない場合、読者の理解力が足らないのではなく、読者が知らないことをゼーリエが知っていると考えて間違いありません。その欠けているパズルのピースを想像して補えば、ゼーリエの言葉の意味を掴めます。

  • 「女神の石碑編」での魔王の指示、魔族たちの目的は何ですか?魔族たちは女神の石碑について何と言っていますか?

  • ヒンメルたちはどうやって強敵だったクヴァールを討伐しましたか?

  • ヒンメルはタイムリープの存在と「過去は変えられる」ということを旅の途中で知りました。これを帰還の魔法の調査だけではなく、他のことに利用していませんか?


※『葬送のフリーレン』に関する記事をこちらにまとめています。ネタバレを含みますので、ご注意下さい。