シンクロするユーベル・ラントの思考とボーイ・ミーツ・ガール(第14巻131話)
シンクロするユーベル・ラントの思考
『葬送のフリーレン』第14巻131話「脱出」における、ユーベルとラントの思考についてです。
下の記事の続きになっています。
上の記事では、真逆の性格を持つ二人が、同時に、同じことについて、別の角度から考えて、同じ結論に至るという、形式に着目していました。
この記事では、二人の思考の内容に着目します。
まず、二人の思考を整理します。下表では上から下へ時間が流れていますが、行は思考内容でそろえています。なお、読点(、)は適宜補っています。マンガでは改行が読点を兼ねていることがあるためです。

そうすると、ユーベルは「自分の体に何が起こったのか」という結果から考えていることがわかります。そして、どういう原理でそれが生じたのかについては「考えても時間の無駄か。後でメガネ君に押し付けよっと」と、考えることを投げ出します。
それに対して、ラントは「なぜ魔法を使えないのか」という原理から考えています。まるで、ユーベルが投げた疑問を受け取って考え始めたかのように。
もちろん二人は独立して同時に考えています。
けれども、思考の内容に着目すれば、ユーベルの思考の後を継いでラントの思考が始まる形になっているのです。
これが、第131話のこの場面で
まず、ユーベルの分析
次に、ラントの分析
最後に、「ユーベル&ラントの結論」
そして、目を見合わせる
という順で描かれた理由です。
こうすることによって、二人が図らずも役割分担をしてお互いの思考を補い合うように思考していることを示して、二人の関係性の発展を表現しています。(※第140話のゼーリエの台詞も見てください。)
ただ、このユーベルの思考を継いでラントの思考が始まっているということは少し読み取りにくいと感じます。
なぜなら、ユーベルの「後でメガネ君に押し付けよっと」のコマから、ラントの思考が始まるまでに7コマ(1ページ弱)も挟んでいて、二人の思考の流れとコマの流れにズレが生じているからです。
実際に上の表の台詞がどういう順番で現れるかをお手持ちの単行本で確認してみてください。
この場面をアニメ化するとしたら
素人の私が考えてみます。
別記事で書いたとおり、二人の思考を分割して交互に見せるのも有りだとは思います。
ただ、本稿の検討結果を反映させるなら、ユーベルからラントへの思考の引き継ぎ、お互いの思考を補い合っていることをハッキリさせる演出を入れたいです。
こんな場合にどういった手法が有効なのか素人の私には分からないので、思い付くのは、ユーベルの思考が終わったところでカメラをユーベルからラントへ振って(「パン」させて)、ラントの思考を始めるくらいです。
また、「後でメガネ君に押し付けよっと」の後すぐにラントの思考に移りたいのですが、どうカットを処理したよいのか私にはわかりません。
何年後になるのかわかりませんが、アニメ第3期を見てみたいですね。
ユーベル・ラントの「ボーイ・ミーツ・ガール」
ユーベルのレイルザイデンでロープを切ってもらった後、ラントはユーベルを横目で見ながら「どういう線引きで、どんなルールがあるんだ?本当に原理が想像もできない」と考えます。
まさに「大事なことなので二度言いました」状態ですね。
けれども、ここでラントがわからないのは「線引き」でも「ルール」でも「原理」でもありません。

ラントがほんとうにわからないのは、ラントが横目で見つめている「ユーベル」です。
これは「ボーイ・ミーツ・ガール」そのものです。(既に第126話であからさまに宣言されています。)
シュタルクとフェルンではできない(なぜなら、それをやると作品自体が恋愛物語になってしまうからです)ベタベタの展開をサブキャラで見せているのです。
ラントがユーベルのことを理解できない理由には、ラントが理論派(過程重視)でユーベルが感覚派(結果重視)であるといった理屈を付けることもできます。が、究極的にはラントが「ボーイ」で、ユーベルが「ガール」だからです。つまり、ラントには理解できない人物としてユーベルは作られています。
もし、ラントがユーベルのことを理解してしまったら、ラントはユーベルにこれほど強くは惹かれませんし、そうすると「ボーイ・ミーツ・ガール」は終わってしまいます。
だから、ラントはずっとユーベルのことが理解できないままでしょう。
理解するとしたら、ラントとユーベルの物語が終わる時です。もし終わるのなら、ハッピーエンドを期待しています。
※ユーベルのラントへの共感についてはこちらに書いています。
※ユーベルの目的について(「ユーベルは誰かを殺そうとしている」という考察)
※葬送のフリーレンに関する記事はこちらにまとめています。
