フリーレンはなぜフォル爺に怒ったか(出会い直しの旅)
周囲からは剣の腕前以外は耄碌したとみなされているフォル爺。フリーレンだけはそれを認めたくない様子で、フォル爺とフランクに接し、エピソード冒頭から妙に浮いています。そして、ある時フォル爺に、今もヒンメルの顔や声をおぼえているか?と問われたフリーレンは、珍しく感情を露わにします。
マンガではムッとした1コマが描かれていてすこし不愉快だったのかな程度の印象ですが、アニメ版では地面を蹴りつけるようにして力強く振り向いて反論するフリーレンが描かれています。
このシーンについては、正直に言いますと、違和感(フリーレンは能力を過小評価されて怒るような人物だろうか?鼻で笑って済ませるタイプでは?)がありつつもはっきりとはわからず、「年寄り相手にそんなに怒らなくても…」と感じていました。
けれども、このときのフリーレンの感情は「怒り」ではなくて、不安や焦りあるいは恐怖だったのだと思いました。(そう気付いたきっかけはどうでも良いことなので後述)
フリーレンが「馬鹿にしないでよ。全部覚えている」と反論すると、フォル爺は自分は愛していた妻の顔も声も眼差しも思い出せなくなってしまったと告白します。フリーレンは「冗談が上手いね」と誤魔化していなそうとしますが、すぐ後には、フォル爺の記憶が衰えていることを直視せざるを得なくなり動揺しています(フォル爺は、フリーレン達の今回の訪問と前回の訪問が記憶の中で混乱してしまったのでしょう、フリーレン達がこれから魔王を倒しに行くと勘違いした発言をして、アニメではそれを聞いたフリーレンの瞳が揺らぐ描写があります)。
ここで動揺したわけは、長寿のドワーフであるフォル爺にも老いによる衰え(記憶の混乱)が訪れていることに気付いたから、というだけではありません。
フリーレンは「オレオールに行っても、たぶん死者の魂に再会することはできないだろう」と考えています。(ハイターに騙されたのと同じように、アイゼン(とフランメ)のトリックにかけられたという形)
にも関わらず彼女がオレオールへの旅を続ける理由は、(形式的理由は「アイゼンに頼まれたし、師匠フランメのアドバイスでもある」ですが、)勇者一行の旅路を巡ることで思い出を辿り、生者はもちろん死者とも出会い直しができるからです。
そして、このエピソードでフォル爺に再会した時のフリーレンは、既にこのことに自覚的だったはずなのです。
フォル爺のエピソードは、鏡蓮華の指輪のエピソードより後のことです。鏡蓮華の指輪のエピソードでは、この「出会い直し」がかなりわかりやすく描かれています。「自分がフェルンから教えられて知った鏡蓮華の意匠の意味を、ヒンメルは指輪を贈ったときには既に知っていた」と、フリーレンは「出会い直し」によって気付いているからです。
だからこそ、その「出会い直しの旅」に必要な記憶(思い出)もいつかは失われてしまうという事実を突きつけられて取り乱してしまった、ということだと思います。
参考)また別の解釈。(漫画ベース・アニメ以前の解釈)
さて、二次創作的な余談ですが、フリーレンは最終的には自分と出会い直すのではないでしょうか。鏡蓮華の指輪のエピソードで「自分を愛していたヒンメル」と出会い直したように、「ヒンメルを愛していた自分」とです。
以下は「葬送のフリーレン」とは全く関係ない個人的な話です。
私がなぜこの自分の誤読に気付いたかと言うと、それは夢を見たからです。
夢の中では、私が会社勤めをしていた時の先輩が出てきて、うちの近所でレストランを開いていました。飲食関係の仕事をしていたわけではなく、この時点で意味不明です。そして、先輩は、とても美味しい天丼だから食べていけ、と言うのです。でも、カウンターに並んでいるのは、どう見てもカツ丼でした。「カツ丼じゃん…」と思いました。
まったく意味のわからない夢でした。
