【葬送のフリーレン】補足情報:フォル爺回の解釈
漫画「葬送のフリーレン」は、解釈の余地が大きい場面やセリフが多いです。
それ故に何度も繰り返して読むことになりますが、そこが葬送のフリーレンの良さでもあると考えています。
本記事では第33話フォル爺の個人的な解釈を説明したいと思います。
なお、フォル爺とヒンメルとの対比は、別記事にてまとめました。
対象は単行本全10巻97話までですので、ネタバレを避けたい方は読むのを止めて下さい。
フォル爺とは
フォル爺さんはドワーフの戦士で、クラー地方にある村を400年近く守ってきた英雄です。
ドワーフの寿命が300年くらいなので、かなり高齢だと言えます。
フリーレンとは長寿友達であり、彼女はフォル爺が死ぬ前にゆっくり話がしたいとのことです。
注目する言葉・場面
ヒンメル達を知る機会
今ではとても感謝しているんだよ。フォル爺は私がヒンメル達を知る機会をくれたから。
上記にあるようにフリーレンは、フォル爺がヒンメル達を知る機会をくれたことに感謝しています。
その知る機会とは、結論から言うと、「勇者一行の記憶をフリーレンが未来に連れて行く役目を、ヒンメルから与えられたこと」です。
順を追って説明すると、まず勇者一行とフォル爺が出会った時、彼がなぜ村を守っているのかをヒンメルが聞きました。
その理由は亡き妻との約束で、フォル爺は死者との約束を守っていることを滑稽な話と自嘲しましたが、ヒンメルは約束を守っていることを彼女は嬉しく思っているはずだと、その行為に敬意を示しました。
その言葉を聞いたフォル爺はヒンメルを勇者と認め、その偉大な勇者の記憶を未来に連れて行くことを提案します。
ただヒンメルはその提案を断り、仲間であるフリーレンにその役目を渡しました。
おそらくフォル爺は、人間社会の中で暮らしてきた長寿のドワーフなので、記憶を未来に連れて行く提案は過去にも何度か行っていて、今回もその習慣が出たのだと思います。
その提案がきっかけでフリーレンに勇者一行の旅を記憶する役目が与えられ、実際その役目を遂行しているので、彼女はそのきっかけの出来事に感謝していると考えられます。
死者との約束
滑稽な話だろう。儂はずっと死者との約束を守っている。
そうだね。でもきっとその女性は、貴方が約束を守ってくれていることを嬉しく思っているはずだ。
前に戦ったときは派手に吹き飛ばしていたじゃない。
後でヒンメルに怒られたんだよ。
なら、益々こんなことする必要ないでしょ?
どうして?
ヒンメルはもういないじゃない。
前の箇所と内容が被りますが、勇者一行とフォル爺との会話の中で、死者との約束に対する、ヒンメルの考え方が示されました。
おそらくフリーレンの頭の中にこの考え方が残っているがために、彼女は勇者一行の旅を記憶する役目を忠実に守っているのだと考えています。
またヒンメルのこの考え方を知ってから、改めてアウラの上記のセリフを見返してみると、なぜフリーレンが静かに激怒したかがよく分かります。

・・・フォル爺は冗談が上手いね
その勇者の顔は覚えているか?
当たり前でしょ。
声は?
私を馬鹿にしないでよ。全部覚えている。ヒンメルは私が人間を知ろうとしたきっかけだよ。フォル爺が村を守ろうと思ったきっかけと同じで、大切なことだ。
そうか。きっかけか。儂はもう思い出せない。顔も声も眼差しも。それでも儂は大切な何かのためにこの村を守っている。
・・・フォル爺は冗談が上手いね
フリーレンは、フォル爺が大切な人の顔も声も眼差しも思い出せなくなったという発言に対して、「冗談が上手いね」と返答しました。
文字通り捉えれば、フリーレンはフォル爺が思い出せないこと嘘だと考えているのでしょう。
実際それまでの一週間はフリーレンと他愛のない昔話をしていて、違和感を感じていなかったと思われます。
また、フリーレン自身もヒンメル達の記憶はもちろんのこと、約1000年前のフランメの記憶も残っているため、フォル爺が大切な人の記憶を忘れてしまったことに、外的にも内的にも納得できなかったのだと推察されます。
ただ返答する前に少し間があったので、本当に忘れてしまった可能性も心の片隅にあったと考えています。
またフリーレンが返答の際に少し悲しそうな表情だったのは、自分にもいつか大切な人の記憶を忘れてしまう日がくるかもしれないことを想像したのだと推察しています。
「冗談が上手いね」という表現を取ったのは、フォル爺がよく相手を油断させるために、上手くとぼけてみせることになぞらえているのだと思います。

ついに魔王を倒しに行くのか
ところでお前達の旅の目的地はどこなんだ?
魂の眠る地を目指しているよ。
それはどこだ。
エンデ。魔王城がある場所だよ。
そうか。ついに魔王を倒しに行くのか。平和な時代が訪れるといいな。
ヒンメル。お前はいい勇者だ。きっと魔王を打ち倒すだろう。魔王が討たれた平和な時代が訪れるのを儂の妻も望んでいた。
フォル爺はなぜ魔王が倒されたことを知らなかったのでしょうか。
結論から言うと、フォル爺が孤独だったからだと考えています。
フォル爺の記憶が一部欠けている可能性があるのは、その前の場面で示唆されていましたが、「ついに」魔王を倒しに行くと発言していることから、約80年前にフリーレンが魔王討伐を目指していたことは記憶していたようです。
またフォル爺の亡き妻が魔王が討たれることを望んでいたため、フォル爺にとって魔王討伐は大切な情報であると言えます。
80年前の一冒険者の会話は覚えていて、その数年後に魔王が討伐されたことを覚えていないというのは、多少違和感があります。
ということはつまり、村の人を含めて一度も魔王討伐について伝えていなかった、と考えるのが自然かなと思います。
実際一人の村人の情報から、フォル爺が普段から孤独であることは示唆されていますし、この会話がフリーレンに伝わっていない様子なので、フォル爺が孤独であることをフリーレンが知ったのは、あの時が初めてだったと考えられます。

・・・ふふっ。
フリーレンはフォル爺が魔王討伐について知らないことに驚いた後、既に魔王は討伐されたことを彼に伝えかけますが、それを止めて「・・・ふふっ。」と笑いました。
笑った理由としては、フォル爺の発言に常識とのズレがあったから、というよりかは、それを訂正しようとした自分が可笑しかったからと考えています。
訂正してしまうと、フォル爺がずっと孤独であったことを再認識させてしまう可能性があると想像し、なんて馬鹿なことをしてしまうところだったのかと自嘲したのだと考えています。
フォル爺の記憶も私が未来に連れて行ってあげるからね。
ついに魔王を倒しに行くのか。平和な時代が訪れるといいな。
フォル爺。魔王はもう・・・
どうした?
フォル爺の記憶も私が未来に連れて行ってあげるからね。
人生の最期にお前に会えて良かった。
それ80年前も同じこと言っていたよ。
フリーレンの魔王討伐の話から、フォル爺の記憶を未来に連れて行く話へ移行するのは、一見不自然な流れに見えますが、おそらくフォル爺が以前言っていた話の流れを先読みしたのだと思います。
何もなければ、魔王討伐の話から、フォル爺が記憶を引き継ぐ話になっていたと思いますが、その流れになる前に、フリーレンがフォル爺の記憶を引き継ぐ話をカットインさせたと考えられます。
またその後の会話で、フォル爺が同じことを繰り返し言う癖があることも示唆されています。
フリーレンは、フォル爺が孤独であったことも考慮したと考えています。
村の人と普段から自分の昔話をしていれば、フリーレンが記憶を引き継ぐ必要性はないですが、あの時にそれに気づき、更に孤独であったが村を守ってきたフォル爺の人生を尊重したかったために、自身が記憶を引き継ぐと約束したとも捉えられます。

じゃあね、フォル爺。元気で。
この言葉の意味の解釈は以下リンクを参考にしました。
確かに、フリーレンが別れの挨拶を言う描写がある場合は、ほぼ確実に「またね」を使っています。
「またね」は再会を願った言葉なので、もうフォル爺の先は長くないと考えているのでしょう。
ただ「元気で」と付けているので、100%再会できないとも考えていない、と思われます。
まとめ
フォル爺の話では、老化によって記憶が薄れていくことの物悲しさもありますが、本記事では孤独という観点でこの話を解釈してみました。
もちろん他の解釈もできる余地がありますので、読者それぞれの解釈を大切にすることが大事ですし、解釈するプロセスを楽しむのが「葬送のフリーレン」の魅力だと考えています。
フォル爺の話と同様に、「記憶の継承」というテーマでまとめた記事がありますので、時間があれば御一読ください。
長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。
