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「支配の石環」レプリカに関する疑問/活用されない設定は大掛かりな伏線|『葬送のフリーレン』読解・考察


レプリカに関するいくつかの疑問と真の疑問

大陸魔法協会には「支配の石環」のレプリカがありました。(第9巻83話)

いつ誰がつくったものなのかは不明です。

レルネンはこのレプリカを精神魔法の専門家であるエーデルに見せて、マハトが着用している本物の「支配の石環」の修復を試みます。レプリカはいわばエーデルが事前学習するための教材です。

ですから、このレプリカは精巧なもので、「術式は忠実に再現」されています。

ただ、術式は再現されているのですが、効力は発揮しません。これは不思議です。

まず、どういう理屈でそうなるのか?がわかりません。術式が完璧なら効力もあるはずでは?というのが素朴な疑問でしょう。

まあ、そこはファンタジーですし、なにしろ賢者エーヴィヒによる神話の時代の魔導具ですから、現在の魔法技術では再現不可能な箇所があるのかもしれないと取り敢えず納得するとして…

この「効力は発揮しない」という設定はなんのためにあるのでしょう?

思うに、本物と全く同じ効力も持っているレプリカが存在するのなら、読者はまず「じゃあ、それをマハトに使えば良いのでは?」という発想を持ちます。

ですから、マハトの「支配の石環」の修復を試みるという黄金郷編のストーリーをそのまま進めるためには、読者の「レプリカを使えば?」というツッコミに対して「いや、レプリカを使うことはできないんだ」という説明をしておく必要があるのです。

その説明がなければレルネンやエーデルの思考にリアリティがなくなり、黄金郷編のストーリーにも説得力がなくなってしまいます。読者としては「マハトやソリテールとの戦いで盛り上がってるけど、最初からレプリカを使えばよかったよね」という思いを拭うことができないからです。

「効力は発揮しない」という設定はこのツッコミを避けるための設定に見えます。

※そもそも、神話の時代に「支配の石環」が存在していて、本当に魔族の心をコントロールできたのなら、人類と魔族の戦争とは?という気もします

私は『葬送のフリーレン』のファンですが推し活をているわけではないので、作品とは距離とって素直に感想を言いますが、このレプリカの設定にはかなりご都合主義を感じるのです。

ただ、このご都合主義感は簡単に回避できたはずです。

このご都合主義的な設定は、本物そっくりのレプリカの存在が原因です。

であれば、素人の私でも思い付くアイデアとして、レプリカではなく「支配の石環」に関する賢者エーヴィヒの魔導書や手記が大陸魔法協会の書庫にあったことにすればいい。ゼーリエの蔵書です。そして、魔導書や手記でエーデルが「支配の石環」について学んだことにすれば、違和感もないし、ストーリーとしてもなんの問題もないでしょう。

ですから、真の疑問は、『葬送のフリーレン』の作者ほどのストーリーテラーがなぜ素人でも思い付くご都合主義感回避策をとらずに敢えて「支配の石環」のレプリカを登場させたのか?だと私は思います。

この疑問は黄金郷編を最後まで読んでも解決しません。

余談)考察手法「なんのためにあるかわからない設定は疑ってみる」

こういった、なんのためにあるのかわからない設定を疑ってみる考察には、試験編(第二次試験)でシュピーゲルのつくる複製体の「喋れない」設定はなんのためにあるのか?があります。(第6巻50話)

この設定はラントとユーベルが丁寧に説明する割には、だからといってこのためにバトルが面白くなることがなく(せいぜい連携を取る受験者との対比くらい)、第二次試験(零落の王墓)中で十分に活用されているとは言い難い設定です。(ユーベルが「お喋り」だという設定は帝国編で使われていて、彼女は妙に饒舌ですし、逆に彼女が北部支部でリネアールと会った時の様子に違和感を生じる効果を生んでいます。第13巻127話)

では、この「喋れない」設定はなんのためにあるのか?と考えると、心を持たない複製体が言葉を使うことで様々な問題が生じたために、もともとは喋ることのできた複製体から言葉を取り上げたのだろうという推測になって(外見でも本物と複製を簡単に区別できるようにされています)、永遠の命を研究するエーヴィヒが魔導具・水鏡の悪魔で人類の複製体を作った(さらに、複製体をコントロールするために「支配の石環」もつくった)、この複製体が魔族の起源ではないか…という考察につながっていきます。

この壁画は「エーヴィヒ(右)が水鏡の悪魔(中央)を利用して自らの複製体(左)を作り出した図」に見えます。

偶然なのか必然なのか、ここでも賢者エーヴィヒです。(レプリカ=複製品というキーワードの一致は偶然?)

目的や意味のはっきりしない設定は、後で解決される大掛かりな伏線になっている可能性があります。

レプリカの意味

話を「支配の石環」のレプリカに戻します。

この疑問について考えてみると…

  • エーヴィヒの魔導書でも手記でもなく

  • 「支配の石環」のレプリカが

  • レルネンの私邸ではなく

  • 大陸魔法協会にあった

このことになにか意味があるんじゃないか?と私には思えます。

つまり、ゼーリエとエーヴィヒのつながりですね。

そもそも、この二人は現時点でまだ二人しか登場していない神話の時代の二人ですから、物語としては当時の二人が全く無関係に生きていたと考える方が不自然ではあるわけです。

たとえば、ゼーリエの最初の人間の弟子がエーヴィヒだった…とか。

まあ、ここは適当な思い付きですが…

ゼーリエ(大陸魔法協会)は零落の王墓攻略を目指していたし、レルネンはヴァイゼ(「賢者」の意)復活にこだわっていましたし(ゼーリエ自身はヴァイゼは諦めてマハト討伐するつもりでしたが、レルネンのことですから動機が「ゼーリエのため」であることは十分ありそうです)、ゼーリエ暗殺計画への対抗策の心当たりがヴァイゼにあると言います。

後々、「支配の石環」のレプリカが大陸魔法協会にあったことの意味が明らかになるかもしれません。

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本稿は《質問箱》に頂いた「支配の石環のレプリカ」に関するコメントをきっかけに再読・再考して書いたものです。どうもありがとうございました。


『葬送のフリーレン』の原作マンガはまだ読んだことがないという方には原作マンガを、既に読んだことのある方にはある一つの視点からの再読をお勧めしています。

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