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《葬送のフリーレン》「初めまして」の方へ(原作マンガの勧め、再読の勧め)

『葬送のフリーレン』のアニメは観ているが原作のマンガはまだ読んだことがないという方には原作マンガを、既に読んだことのある方にもある一つの視点からの再読をお勧めしています。

この記事ではその背景を説明しています。

原作のマンガにもアニメにもまだ触れたことがないという方は、とりあえずどちらか鑑賞してみて、それからまたお越しください。『葬送のフリーレン』は「巧みなプロット」が特徴で、そこから生まれる「謎と感動」が魅力のとても素晴らしい物語です。


原作マンガの勧め(原作マンガ未読の方へ)

私の記事の多くは原作マンガ最新話まで読んでいることを前提にしていて、ネタバレに配慮していません。ですが、原作マンガをお勧めする理由はそれだけではありません。

一言で言えばその理由は「プロット」なのですが、順を追って説明します。

なお、ここでは

  • ストーリー:出来事を時系列順に並べたもの

  • プロット:出来事を読者に明らかにする順に並べたもの

と理解しておいてください。

(差し支えないと思いますがアニメ第1期エピソード11「北側諸国の冬」までのネタバレがあります)

プロットから生まれる名場面

『葬送のフリーレン』は「魔王を倒した勇者一行の後日譚ファンタジー」とされていることからわかるとおり、プロット(出来事を読者に明らかにする順序)に特徴のある作品です。

出来事の時系列順(ストーリー)は《魔王討伐の旅→人間を知る旅》なのですが、出来事を読者に明かす順(プロット)はこの逆で《人間を知る旅→魔王討伐の旅》となっているわけです。

ですから、『葬送のフリーレン』の魅力にはキャラクターやストーリー(出来事を時系列順に並べたもの)もありますが、最大の魅力は「巧みなプロット」にあると私は考えています。

このプロットの工夫により、『葬送のフリーレン』では「物語の全体を頭に入れた上で読み直すとまったく別の印象に変化する場面」がたくさんあります。私の場合は「過去の私が笑っていた場面で今の私は泣いている」ということさえあります。

たとえば、エピソード1(第1巻2話)のこの場面は、最初に読んだときは特に感動するような要素はありません。

けれども、エピソード11B(第3巻24話)を読んだ後では、強く感情を揺さぶられる場面に変わっています。

ハイターが孤児院の復興資金を拠出していたことや彼自身も孤児だったことをフリーレンはすっかり忘れていて、孤児のフェルンを救ったハイターに対して「らしくないね」等と言っていたわけです。しかも、この失敗に気付いたのはハイターが亡くなった後のことでした。

これに似た失敗は多くの方が一度くらいは経験していると思いますが、私も身につまされる思いがします。

そして、試して頂きたいのですが、この二つの場面を時系列順で読んだとすると(「私も孤児でしたから」→「らしくないね」)、特に心を動かされる場面にはなりません。読者はフリーレンの失敗を他人事として客観的に眺めることになるからです。

ですから、これはストーリーではなくプロットが生んだ名場面だと言えます。

こういったプロットの工夫に気付くことで、『葬送のフリーレン』らしく静かに情感に訴える、しかし同時に強く感情を揺さぶる場面がたくさん生まれます。

(※)まだアニメ化されていないため引用しませんが、第12巻112話にもフリーレンの「らしくないね」をより印象を深くしている場面があります。原作マンガで確認してみてください。

魅力的な謎(ミステリー)

『葬送のフリーレン』の魅力としては、散りばめられた魅力的な謎(ミステリー)も挙げることができます。

たとえば、エピソード1開始直後に示される「フランメの手記」にはこう書かれています。注意して読んでください。(原作マンガでは第1巻7話で登場します)

違和感を覚えたかもしれません。「この世界の人々が」とありますが、フランメはどこの世界の人なのでしょう。それともこれは単なる台詞(ト書き)の推敲不足でしょうか。(ついでに言えば、通称である「天国」を魂の眠る地オレオールと言い換えることも少し不思議です)

もう一つ。エピソード1(第1巻1話前半)のこれは伏線なのでしょうか。それともミスなのでしょうか。

二人は10年間共に旅をしていて、しかもヒンメルはフリーレンにプロポーズするほど彼女のことを愛していたのです。

これらは二つとも些細なことだと思われるかもしれません。

けれども、『葬送のフリーレン』をしっかり読んでみると「これはメインストーリーに関わる重要な伏線では?」という気がしてくる魅力的な謎なのです。

ですので、『葬送のフリーレン』はミステリー小説・推理小説が好きな方にもお勧めのマンガです。

※ 物語を最後まで読めば謎は解けるのですから、全ての謎はプロット(出来事を読者に明かす順序)が生んでいると言えます。不可解な結果を先に示し、それを説明する原因を後に示すことで謎が生じているからです。キャラクターの不可解な行動を先に示し、それを説明する動機を後に示すというのもその例です。ですから、一言で言えば『葬送のフリーレン』の魅力はプロットです。(物語を最後まで読んでも解けない謎は、作者が敢えて残した余白または作者のミスということになります)

「読む」マンガの楽しみ

『葬送のフリーレン』は巧みなプロットに特徴と魅力があるとお話しました。

既にアニメを楽しんでいる方にも原作マンガをお勧めする理由はそこにあります。

なぜなら、複雑なプロットや謎(伏線)を把握するためには、物語を自分のペースでじっくり何度も鑑賞する必要があるからです。そういった鑑賞方法に向いているのは「観る」アニメよりも「読む」マンガです。

『葬送のフリーレン』は既に何度もアニメで観ているという方も、原作のマンガを読むときっと別の楽しみ方ができると思います。

ぜひ手に取ってみてください。

アニメとマンガのちがい

原作マンガをお勧めする理由はもう一つあります。

アニメ『葬送のフリーレン』はマンガを忠実に再現しているとよく言われますが、実は必ずしもそうではありません。意外と大きな変更があります。

たとえば、エピソード1と2(第1巻2話)から例を挙げると、先程も引用したフリーレンに「らしくないね」と言われた時のハイターの表情や…

ハイターは優しさ、寂しさ、悲しさ等を含んだ複雑な表情をしてフリーレンを見つめています。この時点ではなぜハイターがこのような表情をするのかは理解できません。なお、アニメではハイターはフェルンの方を見ています。

ハイターが倒れた際に修行の継続か中断かの判断を任された時のフェルンの表情です。

これまでほとんど笑顔を見せてこなかったフェルンですが、この時は晴々とした良い表情をしています。また、少し大人びた印象で描かれています。なお、アニメでは不安そうな表情です。

この二つに共通するのは、キャラクターが何を考え何を感じているのかを読み取るためには、もっと先のエピソードまで読んで理解しておく必要があることです。つまり、その場ですぐに理解することが難しい複雑な表情はアニメではわかりやすい表情に変更される傾向があると私は推測しています。

こういったキャラクターの複雑な感情表現に気付くと、より深くキャラクターを理解できるようになりますし、アニメとはちがった人物像が浮かび上がることもあります。(ユーベルはかなりイメージが変わりますので、彼女のファンには特にお勧めです)

再読の勧め(原作マンガ既読の方へ)

『葬送のフリーレン』はプロット(出来事を読者に明かす順序)に特徴のある作品です。

そのため、たとえ原作マンガ最新話まで読んでいたとしても、この物語がどう見えているかには人によって意外と大きなちがいがあります。

ここでは、『葬送のフリーレン』の読み方を変える一つの視点をご紹介します。(ご存知でしたらざっと確認して頂くだけで結構です)

これが正しい(作者の構想と一致している)視点だというわけではないのですが、私の記事はほとんどがこの理解を前提にしています。なぜなら、この視点から読むことで物語全体の見通しがとても良くなる上に、これよりも良い視点が未だに見つからないためです。

女神の石碑編・第12巻116話「帰還の魔法」です。

未来から来たフリーレンは未来へ戻るための帰還の魔法を知りません。

しかし、調査は難航します。

そこで、ヒンメルは「魔王を倒した後に調べよう」と決意して、「今そうすると決めた」のです。

これによってフリーレンは帰還の魔法を知っていることになりました。

ここで生じているのは、いわゆる「過去改変による世界線変更」です。

ヒンメルは時空干渉による過去改変が未来に与える影響を理解した上で、目的を持ってその仕組みを利用しています。

つまり、『葬送のフリーレン』は「タイムリープもの」だということになります。

この視点を頭に入れた上で、『葬送のフリーレン』を再読してみてください。

すると、『葬送のフリーレン』はこれまでとは全く別の姿を表します。たくさんの伏線が見つかりますし、今まで感じていた多くの疑問がスッキリと理解できるようになります。

これはゾクゾクするほど楽しい経験になりますので、私の記事を読む前にご自身で『葬送のフリーレン』を再読することを強くお勧めします。

その上で「他人がどう考えているのか知りたい」と思った時はぜひまたこちらにお越しください。

私は素直で素朴な発想による読解や推測、新設定・新キャラを想定しない保守的な考察を心がけています。また、考えを述べる時は必ず「なぜなら〜だから」と理由を付けます。

私と一緒に『葬送のフリーレン』を読んでいるつもりになって、私の読み方に同意したり反発したりしながら楽しく読んでいただけると思います。

記事へのコメントも歓迎です。『葬送のフリーレン』に関することであれば感想、疑問、質問なんでもO.K.です。

『葬送のフリーレン』に関する読解・考察記事は200本以上ありますが、最近の記事でメインストーリーの根幹をカバーするものとしてはこちらがお勧めです。

ただし、この記事を読んだ後では『葬送のフリーレン』のイメージはかなり変わります。繰り返しになりますが、まずはご自身で原作マンガの再読を。その後にお読みください。

《葬送のフリーレン》に関する記事は下記のマガジンにまとめています。おもしろかった記事には「スキ」していただけると励みになります。

では。また。