「肺の病気ではないのに、なぜ酸素がついているのですか?」~救命センターの医師が伝えたいこと~
救命センターやICUで働いていると、
ご家族からこんな質問をいただくことがあります。
「肺炎ではないのに、なぜ酸素が必要なんですか?」
確かにそう思われるかもしれません。
酸素というと、多くの方は肺炎や喘息など、
肺の病気を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし実際には、
肺の病気ではなくても酸素を使用することは少なくありません。
なぜなら酸素は、肺のためだけではなく、
全身の臓器にとって大切なものだからです。
私たちの体は、脳も心臓も腎臓も肝臓も、
酸素を使って働いています。
どれだけ血圧が保たれていても、
どれだけ心臓が動いていても、
十分な酸素が届かなければ臓器は、
正常に働くことができません。
例えば交通事故など大量出血をした患者さん。
肺に異常がなくても、体全体が強いダメージを受けています。
また重症の感染症の患者さん。
通常よりも体の臓器一つ一つが酸素を多く必要とします。
心不全、心筋梗塞など心臓病の患者さん。
上手に、すみずみまで酸素の血液を運べません。
体が大きな負担を受けている時は、
普段以上に酸素を必要とすることがあるのです。
ご家族から見ると、
「肺の病気ではないのに酸素がついている」
と不思議に感じるかもしれません。
でも私たちは肺だけを見ているわけではありません。
脳や心臓、腎臓を含めた体全体を守るために、
酸素を使用していることがあるのです。
酸素は特別な治療に見えるかもしれません。
しかし酸素は、
救命センターでは患者さんの体を整えるための、
基本的な大切な治療の一つです。
なので、
もし面会の時に酸素がついていても、
それだけで肺の病気だと決まるわけではありません。
その酸素には、
患者さんの体を少しでも良い状態に保つための、
意味が込められているのです。
