既読のまま、終わる
#パテック杯用記事となります。
画面に表示されたままのメッセージを、しばらく見ていた。
「今度、会える?」
短い一文だった。
三日前に届いて、既読はつけている。
返信はしていない。
できなかった、
というより、しなかった。
指は、何度も画面に触れた。
「いいよ」と打って、消した。
「忙しい」と打って、消した。
何も打たずに閉じたこともあった。
会えば、たぶん普通に話せる。
これまでと同じように、食事をして、笑って、
少しだけ距離を詰めることもできると思う。
でも、そのあとが想像できなかった。
関係が進むのか、終わるのか。
どちらにしても、今のままではいられない。
それだけは分かっていた。
画面を閉じても、履歴は残る。
何も変わっていない。
変わっていないのは、向こうだけじゃない。
自分も同じ場所にいる。
動こうとして、動いていない。
別の日、別の時間に、また開く。
同じ文章を読む。
「今度、会える?」
問いは変わらない。
考えた末に、ようやく一度だけ入力した。
「ごめん」
そこで止まった。
続ける言葉が見つからなかった。
理由も、言い訳も、どれも違う気がした。
消した。
そのまま、画面を閉じた。
それからは開いていない。
会話は、下に埋もれていく。
終わったのかどうかは、分からない。
ただ、何も起きていない状態だけが続いている。
それを選んだのは、自分だった。
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