やってみないと、わからない。──「向いてる」と言われた先で見つけた、自分の強み(iQra Interview)
やったことのない仕事を、最初から「やりません」と決めるのは好きではありません。やってみなければ、向いているかどうかわからないからです。
もともとは採用の仕事がしたくてイクラに入社した私が、いまはマーケティングにいます。適性があるとは思っていませんでしたが、周りが見つけてくれた「向いているかもしれない」に乗ってみたら、想像以上の自分に出会えました。自分の強みは、いつも他人の言葉が教えてくれます。
山内 葵
2025年12月、イクラ株式会社に入社。現在はSGチームで、サイトの改善やメタ広告の運用などマーケティングを担当している。高校卒業後、5年間、演劇の道に打ち込んだ経歴を持つ。人のつながりや可能性に携わる仕事を志してイクラへ。会社理解を深めるため、入社後はカスタマーサクセスで売主対応を約1か月経験し、その後2026年1月からマーケティングへ移った。「やりたいこと」と「向いていること」のあいだで挑戦を重ね、いまでは複数のプロジェクトを支える存在になっている。
5年で、区切りをつけた。──やり切ったから、未練はなかった
──高校卒業後、演劇の道を選んだと伺いました。どんな5年間でしたか。
シンプルに、演技が好きでした。小さいころからドラマの前で一緒に演じるような子で、目立ちたがりな性格もあって、迷わずその道に進みました。ただ、続けるうちに、自分の得意な範囲が少しずつ見えてきました。
──「5年で目標を越えられなかったら辞める」と決めていたそうですね。なぜ期限を切ったのですか。
最初から厳密に決めていたわけではありません。親の反対を押し切って始めたので、約束のように口にしていた程度でした。しかし、2年目くらいで自分から離れた役になると、途端に演じられなくなると気づきました。自分の延長線上でしか戦えない。得意な範囲に絞る以上、一定の成果が出ないなら、その先は厳しいと感じました。好きだからこそずるずると続けるのではなく区切りをつけて、それを超えるつもりで臨みました。
──やり切って、後悔はなかったですか。
不思議と、未練なく辞められました。大きかったのは、3年目に演出助手を任されたことです。公演全体のスケジュールを管理し、演出の意図を汲んで裏方をつなぐ調整役でした。やってみたら、自分にとても合っていると感じました。一つの作業に集中するより、全体がうまくいくように動くほうが楽しい。「これは、普通に働くことに近い仕事なのではないか」と、次にやりたい働き方が見えたので、迷いなく区切りをつけられました。

「現場を知らずに、採用はできない」。──売主さんと過ごした一か月
──もともとは、採用の仕事を志望して入社されたそうですね。なぜ採用だったのですか。
前職の人材会社で、営業の仕事を近くで見ていました。人と関わり、その人の良さを見つけて、本人とすり合わせていく。人のつながりが多い仕事に惹かれて、自分も携われたら嬉しいと思ったのがきっかけです。
──「現場を知らずに採用はできない」という方針。どう受け止めましたか。
採用の段階から聞いていたので、納得していました。イクラのことを知らなければ、会社に合う人を採用することはできませんから。イクラがいちばん大事にしているのは、売主ファーストです。その考え方を肌で感じられるカスタマーサクセスで、しかも売主対応そのものを一か月間経験できたのは、本当に良かったと思っています。
──実際に売主さんと向き合って、どんな発見がありましたか。
売主さんが何にわからなさを感じ、何を求めているのか。それを肌で感じられました。いまでもマーケティングで迷ったときは、売主さんのチャットを見に行って立ち返ります。あの一か月があるから、いまの仕事ができていると感じます。

「向いてると思う」と言われた日。──やってみないと、わからないから
──社長からマーケへの打診。率直に、どう思いましたか。
CSに入って約1か月が経った、12月の最終日。社長の坂根さんに呼ばれ、「マーケに行かないか。向いていると思う」と声をかけられました。正直、まさかと思いました。マーケティングについては何も知らず、サイト改善の仕事は「すごいことをしている人たちがいる」と遠くから眺めていたほどです。しかし、不思議と「嫌だ」とは感じませんでした。
──「分析が得意」という自覚はありましたか。
まったくありませんでした。自己評価が低くて、何が得意なのかも自分ではわかりません。ただ、やったことのないことを、最初から断るのは好きではありません。坂根社長ほどの人が「向いている」と言うのなら、一度やってみないとわからない。そう思って飛び込みました。
──未経験の仕事に飛び込む不安はありませんでしたか。
不安より、やってみたい気持ちが勝ちました。向いていないと思ったら戻っていい、と言ってもらえたことも、背中を押してくれました。自分にあまり期待していないからこそ、何でも一度はやってみたいと思えるのかもしれません。
感性を、言葉にする仕事。──華やかさの裏側で
──マーケティングは「華やかでクリエイティブ」と見られがちです。実際にやってみて、どうですか。
実際は、裏方だと感じています。数字を追うイメージがありましたが、イクラでは売主さんのサイト上の動きを録画で見たり、チャットを読んだりして、その困りごとから改善案を出します。数字だけを見ていてはいけません。成果も季節やタイミングに左右されるので、自分の手柄だとは言いにくい。それでも、全体を支える「裏の中心」になれる仕事です。
また、リーダーをはじめ、チームのみんなも、わからないことを聞けば、答えだけでなく、その考え方やプロセスごと、120%の熱量で返してくれます。「絶対に突き放さない」という安心感があり、決めつけずに一緒に考えてくれる。だからこそ、私もこの仕事を続けられています。
──チームでは、感覚で動くメンバーの意図を、言葉にする役割だそうですね。
チームには、感覚がするどいメンバーがいます。その人が「これが良い」と感じたものを、私が言葉にし、仮説や数字に落としていく。逆に、数字からわかったことを、その人の感覚に落とし込んでいく。感覚と数字、そのあいだをつなぐ橋渡しが、わりと得意だと思います。
──演劇の経験が、いまの仕事に活きていると感じることはありますか。
演劇では、役を作るときに、キャラクターシートと呼ばれる、その役の履歴書のようなものを書いていました。どんな人生を送ってきて、だからこの場面でこう発言するのか。そこまで深く書き込んで、人物を自分のなかに落とし込んでいきます。その感覚は、いまの仕事にもつながっています。上司の笹島さんから「売主さんを役として演じてみたら」と言われたとき、すっと腑に落ちました。向き合う相手は、数字の先にいる売主さんだからです。
思えば昔から国語が好きで、小説を読むときも、情景を頭のなかで映像にしながらゆっくり味わうタイプでした。頭のなかにあるものと言葉を一致させる訓練を、知らないうちに重ねてきたのかもしれません。

「やりたい」と「向いてる」のあいだで。──適性は、自分ではわからない
──いまも、採用の仕事への思いはありますか。
正直に言うと、いまは「採用の部署に行きたい」という気持ちは、あまりありません。もちろん、会社から必要とされて声をかけてもらえるなら、そこで新しい成長ができるので喜んで挑戦します。ただ、マーケティングはまだ自分でできていると胸を張れません。「一人前」と自覚できるまでは、この部署を離れたくないと思っています。
──「やりたいこと」と「向いていること」のズレを、どう受け止めていますか。
演劇時代に言われた「調整力」も、自分では話が長すぎるデメリットだと思っていた「言語化能力」も、皆さんに教えて頂きました。自分の得意なことは、いつも人から言われて気づいたものばかりです。自分に強い思い込みがないからこそ、今回のような大きな異動にも、まずは飛び込んでみようと思えたのだと思います。
──もしあのとき「採用以外はやりません」と断っていたら、いまの自分はなかったと思いますか。
なかったと思います。演劇でも、演出助手を任されていなかったら、未練なく辞められなかったかもしれません。自分の良さを生かせる場所で頑張るのも、立派な選択だと気づきました。自分では気づけない「強み」を見つけてくださり、磨き上げてくれる環境にいられることが、本当にありがたいです。

自分に、期待しすぎない。──だから、何でもやってみたい
──「何が向いているかわからない」と悩む人に、どんな言葉をかけますか。
強い信念を持つことは大切です。でも、その思いが「本当の信念」なのか、「ただのプライド」なのかは、一度切り分けて考えてみてもいいかもしれません。やりたいことという一点に凝り固まると、自分の可能性を狭めてしまう。人から言われたことを素直に受け入れてみると、自分では気づけなかった強みが、思いがけず見つかることがあります。
──経歴や学歴に自信が持てず、踏み出せない人もいます。伝えたいことはありますか。
私自身、学歴も経歴も少し変わっていますし、自分には特別に秀でた才能があるとは今でも思っていません。それでも、周りが「向いている」と言ってくれるのなら、一度は挑戦してみる。もし本当に無理だったら、その時にやめればいい。自分に期待しすぎないからこそ、失敗を恐れず、何でも一度はやってみることができるのかなと思っています。
──これから、イクラでどうなっていきたいですか。
新しいプロジェクトが立ち上がるとき、「山内と一緒にやりたい」と一番に名前を挙げてもらえる存在になりたいです。そして、私がリーダーの石新さんに支えてもらったように、新しく入ってきた人にも、答えだけでなく考え方から丁寧に返せる人になりたい。それが、いまの目標です。
