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汚いのは、私だけ。|ライトノベル『傍観者の恋』


貿易会社の社長令嬢であるレイチェル・メイスフィールドは20歳になったばかりの秋に結婚をした。

相手は、織物工場を経営しているハーシェル家の三男、ノア・ハーシェル。

ノアはまだ18歳であったが、周囲はその若さで年上の女性と結婚するほどレイチェルに惚れ込んでいるのだろう、と好意的に解釈していた。

誰もが祝福する結婚式。

しかし。

暖かな日差しの降り注ぐ庭園で、この婚姻が茶番だと知っているのは私とノアだけだった。

『傍観者の恋』

6年前にレイチェルが引っ越してきた家の、隣家であるハーシェル家には4人の子どもがいた。
3人が男の子。そして、体が弱い1人の女の子。

レイチェルの遊び相手は歳の近い2歳年下の三男・ノアだった。
それがいつから恋だったのかはわからない。

ハーシェル家の一人娘・アリシアに引き合わされたのは、3人の息子たちより随分後のことだった。

生まれつき心臓が悪いのだという彼女の美しさはハーシェル家の中にあっても別格だった。初めて会った時、私はしばらくポカンと口を開け、閉めることが出来なかった。

『傍観者の恋』

ノアへの恋心が実らないことをレイチェルが知ったのは、“年頃の娘の同伴者は大抵が恋人だ”という収穫祭を断られた時だ。

そして、レイチェルはノアが、姉であるアリシアを“家族ではなく”好きなのだ、ということに気がつく。

自分の恋心が実らないのならば。

父に接するように、アリシアとノアにも振る舞えばいい。本当の気持ちは隠して、彼らの望む良き隣人になればいい。

『傍観者の恋』

出来る限り、ノアの側にいる為に。
不純な動機からレイチェルはアリシアを定期的に見舞うようになる。
アリシアを喜ばせれば、ノアも喜ぶ。

私の推測が正しければ、アリシアは恋敵だ。それなのに、彼女のことまで好きになってしまうなんて、そんなことがある?

『傍観者の恋』

純粋に自分を慕ってくれるアリシアのことも、また、レイチェルにとってかけがえのない存在になっていった。

発端は、ノアへの疑惑を晴らす為の詮索だったのに、とっくに目的は変わってしまっていた。
とんだ偽善だと嘲られてもいい。振られた癖にいつまでも執念深い女だと指をさされてもいい。私は彼らの傍観者でありたかった。

『傍観者の恋』

しかし、子どもでいられる時間は長くない。

学校を卒業し、レイチェルにも結婚の話が持ち上がった。
相手は父の会社の男性で、レイチェルも面識のあるブライアンだった。

空気が綺麗な保養地としても有名なミヴェに屋敷を買ったので娘婿にそこの支社を任せたい。
そして、体の弱いアリシアも呼んだらどうか。

という父の話を、――ノアから聞いた。

「好きな人なんていない。どうしても結婚しなきゃいけないのなら、相手はノアがいいわ」
「……は?」

『傍観者の恋』

以前に、この醜い恋心を悟られないように「男性に触れられるのが苦手だ」という嘘を持ち出して。

そして、ノアが家族としてではなく、アリシアの側にいたいと思っていることを知っていると脅して。

「もちろん本物の結婚じゃないわよ。私は意に染まない縁談に振り回されずに済む。あなたは、今まで通りアリシアの傍にいられる」

『傍観者の恋』

レイチェルは人生をかけて。
この姉弟の傍観者であることを決めたのだ。

※この作品はKindleUnlimitedで配信しています。


初読みだけど、有名な作品らしい

著者は ナツ
沢山の作品が配信されている作家さんです。本作は女性向けライトノベルですが、TL作品の方が多い印象です。

出版社は ジュリアンパブリッシング

掲載誌・レーベルは フェアリーキス

発売は 2017年03月
既刊1巻。完結済。

吉田了 作画によるコミカライズも進行中。(既刊1巻。連載中。)



切ない両片思いの偽装結婚

切ないー。何度読み返しても切ないー。
これ、カバー絵可愛いんだけど、作品のテイストからすると可愛すぎる気がする。

結構、内容はシリアスです。

ノアの事が好きで、アリシアのことも好きで、ずっと側にいたくて嘘をつき続けるレイチェル。

ノアとアリシアも嫌な姉弟なら良いのに。

アリシアの事は大事だけど、だからと言って友人であるレイチェルの幸せを踏みにじりたくはなかったノア。

2人の邪魔をしたくないけれど、体が弱く、自分1人では決めることも、行動することも出来ず、そして特別扱いではなく、友人として接してくれるレイチェルが大好きなアリシア。

3人がそれぞれ、善良な人間で、少し利己的で。

そして、長く生きられないと言われたアリシアはどんどん弱っていって。

ノアはアリシアへの気持ちと、レイチェルへの気持ちの違いに気づき始める。

だけど、自分の気持ちを隠すことに。周りにつき続けた嘘に気づかれない為に必死なレイチェルは、その変化に気づくこと無く均衡を見失っていく。

誰も悪くないのに、報われない。

切なさMAXの良作でした。
個人的にですが、フェアリーキスは私にとって“当たり”が多いレーベルで、今回もそれを確信させてくれる作品だったな、と。
KindleUnlimitedで読めるので、加入している方は是非読んでみてください。


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