〔読書感想〕ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか
昨年10月から図書館にて予約していた本をようやく読むことができました。多くの人がこのタイトルに惹かれ、どうしたら「豊か」に暮らせるのかを知りたがっているようです。私もその一人でした。
ドイツには過剰サービスがない
日本はサービスが充実している、と本書の著者は言います。もちろんそれは「お客様は神様」という精神があるからで、いつでもどこでも、ほしいときにほしいサービスが受けられるのは、利用者にとっては本当にありがたいことです。
ただ、提供側(労働者)の立場に回ってみれば、サービス残業や仕事量の増加など、賃金に見合わない業務に追われ、中には体を壊す人もいるのが実情です。
しかし、ドイツではそういうことがほとんど行われていないと言います。レストランでも、座っていれば店員が注文を取りに来るということはなく、従業員は自分が与えられた仕事だけをこなす。人が少なくても、一人当たりの労働量が増えたりはしません。対費用効果を考えた働き方が基本なのです。
収入を増やすより、健康や自由時間が大事
一日当たりの労働時間が、上限10時間を超えてはいけないという決まりがあり、それに違反すると罰金を取られるのがドイツ。だから平社員はその時間内に仕事を終わらせなければならず、管理職も彼らに残業しないよううるさく言わなければならないそうです。
労働時間が短いと言うことは、収入が少ないと言うこと。しかし彼らは家族と過ごしたり、芸術鑑賞をしたりする時間を楽しんでいる。つまり、心の余裕があるのです。その、心の余裕が「物欲」とも関係している、と著者は指摘しています。
日本人が買い物好きなのは、自由時間がないことの裏返し
長時間労働により収入は多いかもしれない日本人。しかし、心身ともに疲れ切っている人も多いでしょう。そんな日本人のストレス発散が「新商品を買うこと」。常に新しいものが市場にあふれるし、皆がこぞってほしがるために古いものを持ち続けることがかえって窮屈に感じる世の中でもあります。
買い物は、長期休暇が取りづらい日本人にとって、週末の数時間で手軽にできる「癒やし」のようなもの。頑張って働いた「ご褒美」の意味合いもあるでしょう。
ところがドイツでは、古いものを大切に使ったり、自分で修繕したり。リサイクルも盛んに行われているそうです。日本でもリサイクルやゴミの分別はしっかり行われていますが、分別されたゴミの半分近くは焼却処分されており、真の意味でリサイクルされていない実態があるようです。
日頃受けているサービスについて考えさせられた
本書を読んで強く感じたのは、土日祝に気軽に買い物をしたり、宅配便を受け取ったりすることが、実はものすごくありがたいことなのだと言うことです。
特に24時間、365日休みなく営業している店や配達業の従業員の方はいつ休んでいるのだろう? と思うと胸が痛みます。
本にあったようにみんなが「少しの我慢」をして、多くの労働者が、健康を害さない働き方に変わっていくのが望ましいと感じました。
日本人は働き過ぎだ、とかねてから言われていてずいぶん働き方も変わってきていますが、ドイツなどと比べてしまうとまだまだ心が「豊か」になるほどの改革はされていないな、と感じます。
お金では計れない価値。「真の豊かさ」と言う意味において、私は次の一文がすべてを言い表していると感じました。
「例えば、詩を書くだけでは、なかなか生活を支えることはできない。しかし、詩を読んだ人々が共感を持ったり安らぎを感じたりすれば、その詩人は社会に貢献している。GDPを増やすことだけが、社会への貢献ではない」(終章 P183)
私がモットーにしている「今、ここ」を生きるという考えに通ずるところがあり、とても共感した内容です。
私自身、物書きとしてこの場で作品を投稿しています。全く金銭は生んでいませんが、読んだ人の中に、一人でも心動かされる人がいて、生きるヒントのようなものを感じてくれたなら、私が書く意味はあると思っています。(少し、自信が持てました!)
本書を読み、心を豊かにするお手伝いを、私もしていけたらいいなと改めて思いました。
(ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか 熊谷徹 著 青春出版社 2019年2月)
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