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石原書房の三年間と四年目

 先日三期目の確定申告を終え、石原書房は四期目に入りました。
 2023年4月の創業から曲がりなりにも満三年間出版社として活動したことになり、それなりの節目の感があります。
 改めまして、小社の本を手に取ってくださった読者の皆様、仕入れてくださった書店の皆様、制作にご協力を頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。
 
 さてこの三年間にどういうことがあったか、簡単に列挙してみます。

▼2023年

4月
・創業
8月
・『奇奇怪怪』(TaiTan、玉置周啓著)刊行。代官山蔦屋書店でPOPUP「圧と密」を開催。

11月
・東京文フリ37に出店。
12月
・『IMONを創る』(いがらしみきお著)刊行。


▼2024年

1月
・noteにて金子由里奈さんエッセイシリーズ「いるものの呼吸」連載開始。

2月
・『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」(大森時生×ダ・ヴィンチ・恐山)開催。

3月
・ポッドキャスト「ゼーロンの背中」(川勝徳重×柴崎祐二)配信開始。

9月
・『改元』(畠山丑雄著)刊行。
・「本のまち八戸ブックフェス2024」に出店。

11月
・『改元』刊行記念対談「小説という自由(をもう一度獲得するために)」(畠山丑雄×樋口恭介)開催。

12月
・『改元』刊行記念対談「歴史≠小説の生成」(畠山丑雄×円城塔)開催。


▼2025年

1月
・京都文フリ9に出店。
4月
・『改元』が第38回三島由紀夫賞候補となる。

9月
・「奇奇怪怪/脳盗」の有料コミュニティ「品品団地」に出演、小説家・大江健三郎について、TaiTanさん(Dos Monos)、原宿さん(オモコロ編集長)、大森時生さん(テレビ東京プロデューサー)と語る。

・MONO NO AWARE「走馬灯」のMVに国書刊行会時代に企画した『奇奇怪怪明解事典』が登場するのを見て、誰かの棺に入るかもしれないものを作っている自覚が生まれる。

11月
・『改元』電子版配信開始。
・東京文フリ41に出店。

12月
・『IMONを創る』電子版配信開始。


▼2026年

1月
・畠山丑雄さんとのポッドキャスト「牛歩元年」配信開始。
・『叫び』(新潮社)が芥川賞を受賞。
・『問いつめられたおじさんの答え』(いがらしみきお著)刊行。『改元』への注文と新刊の注文が重なり、大変なことになる。
・「独立出版者エキスポ」に出店。

2月
・ポッドキャスト「意味不明おばさん」(金子由里奈×高島鈴)の制作を担当。
・日テレ系「冬のなんかさ、春のなんかね」(今泉力哉監督)に『改元』が登場。

3月
・「奇奇怪怪/脳盗」の有料コミュニティ「品品団地」に漫画家・川勝徳重さんと共に出演。古典作品の可能性について語る。

4月
・「新潮」5月号掲載の町田康氏×畠山丑雄氏対談「愚かな〝人でなし〟として祈る──『朝鮮漂流』と『叫び』をめぐって」構成を担当。

5月
・「新潮」6月号掲載の松浦理英子氏×藤本由香里氏対談「異性愛は男女の対等な闘争たりうるか?」構成を担当。
・東京文フリ42に出店。

 こうして並べてみると意外といろいろやっているようですが、版元としての手数の少なさは否めず、これは現在格闘中の課題です。

 課題といえば、石原書房がどういう出版社なのかを一言で表すようなフレーズがあった方がいい気がしており、ちょっと前から折に触れて考えています。現在最有力なのは、「勝手にやるためのエネルギーと技術を供給する出版社」というものです。

 というのは、版元勤務時代から今までの自分の担当作やそれに関連する仕事を振り返ってみると、誰に頼まれるでもなくどんどん勝手に何かをやっている人たちと共働し、結果としてその「何かを勝手にやる」ための体勢と力が読み手にインストールされるようなものを作ってきた、ということは一貫しているように思われたからです。また私自身も、これまで企画した本や一緒に仕事をした人たちからそうしたものを受け取っていろいろ勝手にやってきた結果今こうなっているという実感もあります(そのことを一層実感するきっかけになったのは、畠山丑雄さんの『改元』の刊行とその後の展開でした。詳しくはこちらの記事リアルサウンドブックでのインタビューをご参照下さい)。

 ではそれを踏まえて、これから石原書房はどういうことをやっていくのか。


今後の展望

 目下取り組んでいるのは、ウェブ上に公開されたテキスト作品の書籍化です。
 テキストサイト黎明期から約30年を経て、ウェブ上に公開された文章は意外と後世に残らないということがいよいよはっきりしてきたように思います。当然その中には長く残るべきものが多くあり、それらを書籍化し「残るもの」として存在させるべく、いくつかの企画を進めています。しかし何より(このような企画に限らずですが)、自分がそれらの作品を本という形で読みたいというのが一番の動機です。

 先日、濱口竜介監督が「人生を変えるような体験はテレビドラマでも配信でも起こりうるが、その効果を最も効果的に発揮できる映像メディアは映画館における映画視聴体験以外にない」という意味のことをこちらの動画で仰っていましたが、あるフィクションの形式の制作に携わる人なら誰しも、自分が作るものについてこのようなことを感じているのではないかと思います。
 私も紙版・電子版問わず、書籍という媒体によって文章を読むことが、テキストによる作品が人間の身体にもたらす効果を最大化できる形式だと考えています。

 また紙の書籍というものは一度刊行されて流通すると、図書館に収蔵されたり古書として人から人へ渡ったりと簡単には地上から消え去りません。ある作品を本にして残すということは、それを誰かが読む可能性、その作品が持つものに触れた誰かが、そこから走り出さずにはいられないエネルギーや世界の見え方が変わってしまうような何かを汲み上げる可能性を擁護し保存することです。
 時代を超えて残り続け、50年後、100年後にもその本を開いた読者に「何かを勝手にやるためのエネルギーと技術」を提供するものを、我々を自分一人ではたどり着けない地点まで連れて行ってくれる精神の乗り物としての本を、石原書房はこれからも刊行していきます。それに付随する企画も続々とやっていく所存です。
 どうぞ今後とも、よろしくお願いいたします。

このロゴは祖父が中学生の頃に使っていたフランス語の教科書から借用したものです。


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