革命の火種は徹底的な悪役になること|『レーエンデ国物語 夜明け前』
多崎礼氏の『レーエンデ国物語 夜明け前』を読みました。シリーズもいよいよ第4巻です。『夜明け前』というタイトルにふさわしく、物語は暗闇の中から希望を探す展開でした。
物語の主役は「レオナルド・ペスタロッチ」と「ルクレツィア・ダンブルシオ・ペスタロッチ」。二人は貴族生まれの異母兄弟です。
物語では、レオナルドが昼、ルクレツィアが夜として描かれます。為政者は人々に圧政を強いており、本来なら国民は立ち上がらなければなりません。しかし、相手はあまりに強大で、一筋縄ではいきません。
人々は諦めており、立ち上がろうとはしません。そんな人々が、少しずつ立ち上がるまでの物語です。
「夜明け前」という副題の通り、本当の夜明け(国民の反撃)は5巻に訪れると思われますが、そこに至るまでのことが描かれています。
≫ Audible版【耳から聞きたい方向け】
≫ Kindle版【じっくり読みたい方向け】
全400年の中で描かれる壮大なストーリー
全5巻の壮大なストーリーです。100年単位で歴史を飛び越えて物語が展開されています。
100年ひと昔と言われます。記録を残しやすい現代であっても100年前がどんな時代だったのかを正確に思い出すことは難しいでしょう。
映像として残った部分のみ、その時代の象徴のように語り継がれ、残されなかった部分は記憶から完全に消滅します。
以下のような形になります。
1.レーエンデ国物語(522年~537年):
帝国支配下のレーエンデ建国と初期の抵抗。
不死の御子エールデの伝説誕生。
2.月と太陽(656年~664年)※約134年後の物語:
月と太陽の対立を軸とした内紛。
信仰と権力の葛藤が深まります。
3.喝采か沈黙か(775年~798年)※約111年後の物語:
喝采と沈黙の選択を迫られる革命の萌芽。
シャイア城事件が発生します。
4.夜明け前(897年~907年)※約122年後の物語:
レオナルドとルクレツィアの兄妹が革命の火種を灯す。
銀夢草畑焼却と決別の物語。
革命とは、徹底的な悪役になること
人々は立ち上がります。そのためには奮起させる英雄が必要です。その英雄の顔は表と裏があります。
それは、人から称えられる真の英雄と、立ち上がる裏付けとなる恨み・怒りの源を作り出す裏の英雄です。
ことに裏の英雄はとても辛い立場です。自分を殺しつつ為政者の懐に入りその実権を奪います。その権力を使い、自らの私利私欲をあえて追求します。それは、本気で欲に溺れるためではなく、自分を「悪の標的」に仕立て上げるためです。
自分が権力を得る過程で、盤石だった体制を意図的に弱体化させ、自分のもとへ権力を集中させていきます。こうして、自分が倒されたとき、国は混乱しやすく、反撃しやすくなります。
その覚悟の果てに見えるのは、自らの破滅を引き受けてでも人々に“夜明け”を託す決意です。
表と裏の英雄たちが離れ離れになり、やがて敵同士の関係になってしまったとしたら、どんな気持ちになるでしょうか。
フィクションではありますが、とてもつらいと思うのでした。
相変わらず色気がない物語
下世話な話ですが、シリーズを通して純愛物語でもあります。毎回思うのは、主人公に色気のあるシーンが少ないのです。もっと、恋人同士らしい思いをしてほしいのですが、本作も同じです。
とはいえ、主人公の恋愛相手の側には「色恋」がありました。正しくは望まない「色」だけであり、目的を達するためのものです。
しかし、そこは人間です。裏の英雄は、わざと圧制を強いたり、人を殺めたりすることで、快楽を覚えていくのです。本心ではないはずなのに、そんな感情に溺れてしまう。その人間らしさが、かえって切ないのです。
人間とはなんなのか。大願を成就させるには、苦しむことだけでなく、愉悦に浸る状態に自分をもっていかないと途中で投げ出してしまうのかもしれません。
ちょっと歪んだ『好きこそものの上手なれ』なのかもしれませんね。
最終巻『海へ』の発刊が待ち遠しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。記事が少しでもお役に立てたなら、感想をいただけると、とても励みになります。
作品のリンク
Audible版【耳から聞きたい方】(オーディブル会員なら0円)
Kindle版【じっくり読みたい方】
実際に使ってみたAudibleとKindleの違い
音声で聴く読書と、紙や電子書籍の読む読書の良い点、悪い点を実際に使った感想をもとに比較してみました。
▼ おすすめマガジン
他にもこんなマガジンもあります。お立ち寄りいただけたら嬉しいです。
2025年からウクレレを始めています。ウクレレを通して音楽や楽器についての気づきを綴っています。
有料記事をまとめています。ちょっと人には言いにくい興味や、自分の失敗談などを書いております。
大人の話題です。三大欲求のえぃっちーな話題です。少し刺激的で、でも大真面目な話題です。
感想の交換や新しい出会いも楽しみにしています。こちらからお気軽にどうぞ。
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただきありがとうございます🙇♂️
記事が気に入られましたらサポートをよろしくお願いします。
いただいたサポートはnoteクリエーターとしての活動費に使わせていただきます!
