2025年6月に開始されたISACAの新資格「Advanced in AI Audit(AAIA)」、AI監査人のための試験に合格しました(^^)
AI監査の資格に関する情報は日本語ではまだ限られているため、試験を通じて得られた知見を今後挑戦を検討されている方々の参考になるよう整理しました。
AAIAは、AIのライフサイクル全体(設計・開発・導入・運用・監視)を対象に、リスクを評価し統制の有効性を監査の視点から検証できる専門家であることを証明する資格です。
出題分野は
Domain 1 – AI Governance and Risk(33%)Domain 2 – AI Operations(46%)
Domain 3 – AI Auditing Tools and Techniques(21%)の3つに分かれており、配点の重さからも単に監査技法を知っているだけでは不十分で、AIガバナンスやオペレーションを幅広く理解していることが重視されます。
受験資格はCISA、CIA、CPA(US)のいずれかを保有していることが条件で、当初は日本の公認会計士(JICPA)は対象外でしたが、2025年7月以降はACCAやCPA Australia、JICPAなども追加され、グローバルに対象が広がっている様です。
準備にはISACA公式のQAE(Questions, Answers & Explanations Database)を使いました。最初の演習では正答率が5割程度に留まりましたが、繰り返し解き直して理解を深め、最終的に8割を安定して超えるまで練習を続けました。
そのうえで、ISACAのAIレビューマニュアルを読み込み、全体を体系的に理解しました。レビューマニュアルは有料ですが、AI監査を俯瞰できる包括的リソースであり、QAEで点在していた知識を体系的に結びつけるのに役立ちました。
特に、試験ではQAEと同じ問題はほとんど出題されないためレビューマニュアルで応用力を身につける必要があります。
レビューマニュアルで特に印象的だったのは、AIガバナンスの責任分担から、AIレジストリによる資産管理、セキュリティ統制の詳細(アクセス管理・構成管理・脆弱性是正)、さらにAI特有のサイバー攻撃(データポイズニング、敵対的攻撃、モデル窃取、プロンプトインジェクション)といったAIに焦点を当てた新しいリスクの位置づけを詳細に説明してくれていることでした。
また、説明可能性(Explainability)やバイアスのチェックも大きなテーマであり、データの収集・同意・クリーニング、モデル設計とハイパーパラメータの記録、学習・評価・検証プロセスにおける透明性確保(バイアス・アドバーサリアル・有害性テストを含む)がAI監査で特に問われる論点であると学びました。試験では様々角度でこの理解が問われます。
私は準備期間を8週間程度とし、平日は1〜2時間、週末にまとめて5時間を確保し、総学習時間はおよそ100時間ほどでした。
補助教材としては、IIA(内部監査人協会)が公開している「AI Auditing Framework」を参照しました。これは無料で入手でき、特にリスク評価やガバナンスの視点を補うのに有用でした。試験問題は、ISACAらしく「複数の選択肢が妥当だが最も適切な対応はどれか?」を問うシナリオ型が中心であり、AIガバナンスとリスク管理では責任分担(RACI)、CAIOやCDOの役割、AIポリシー策定、リスク委員会とKRI、ベンダーリスク管理が、AIオペレーションではデータ品質管理、アクセス制御と変更管理、構成管理、継続的モニタリング、AI特有のインシデント対応が問われ、サイバー攻撃リスクとしてデータポイズニング、敵対的攻撃、プロンプトインジェクション、説明可能性、バイアスなどが問われました。これらは単なる知識ではなく「実務でどう判断するか」を問う内容でした。
試験はピアソンVUEのテストセンターで受験しました。受付で厳格な本人確認があり、パスポートや運転免許証など公的に個人を特定できる証明書を1点必ず持参する必要があります。手荷物はすべてロッカーに預け、ポケットの中身や腕時計まで確認され、場合によっては金属探知機でのチェックもありました。試験室では指定PCとホワイトボードのみが用意され、90問を150分で解答する形式でした。1問あたり1分強のペースで進める必要があり、私は最後の問題を解いた時点で残り時間は15分程度しかありませんでした。
またISACA試験特有の「間違えると自動的に不合格になる重要問題(killer question)」も含まれており、全体の正答率が高くても落とす可能性があるため一問ごとの慎重な対応が不可欠でした。
試験終了後すぐに画面に「Pass」と表示され、正式なスコアレポートは10営業日以内にオンラインで確認できます。
AAIAは単なる資格にとどまらず、AI特有のリスク・ガバナンス・法規制・倫理・説明可能性を包括的に理解できるフレームワークを提供してくれる点に大きな価値があります。特にプロンプトインジェクションを含む新しい攻撃手法や説明可能性の確保といった論点は今後のAI監査に不可欠であり、この資格を通じて得られた体系的な知識は大きな武器になると感じています。
今後はこの資格を活かしてAI監査の実務や研究に取り組み、組織の透明性・公平性・信頼性の確保に貢献していきたいと考えています。これから受験を検討される方にとって、この体験記が少しでも参考になれば嬉しいです。
