日本人のルーツ、4万年の旅。DNAに刻まれた「三重構造の秘密」
朝、寝ぼけまなこで鏡の前に立つ。
そこに映っているのは、昨日寝る前に見たのと同じ、少し浮腫んだ自分の顔。
鼻の形や目の開き具合、あるいはちょっと頑固そうな顎のライン。
これらは一体、どこからやってきたのでしょうか。
そんなことを考えるのは、決まって週半ばの木曜日のような、どこか中途半端な朝なのです。
そういえば、今日は4月16日。
あのクラーク博士が「ボーイズ・ビー・アンビシャス」の名言を残して北海道を去った日だと言われています。
大志を抱くのは素晴らしいことだけれど、その前に自分の足元、つまり「自分という存在のルーツ」があまりに遠いところから始まっていることに、最近の科学は気づかせてくれます。
42,300年前の「落とし物」が、歴史を塗り替えた朝
近年、私たちの歴史の教科書が、静かに、でも劇的に書き換えられているのをご存知でしょうか。
2024年、広島県の廿日市市にある「冠遺跡」という場所で、驚くべき発見がありました。
地中深くから掘り出された、小さな三角形の石器。
それがつくられたのは、なんと約 4万2300年前 の可能性が出ています。
これまで「日本に人類がやってきたのは3万7000年くらい前かな」と考えられていた定説が、一気に5000年も遡る可能性が高まっているのです。
5000年。
エジプトのピラミッドができてから現代までがすっぽり収まるほどの時間が、まるごと追加された計算になります。
想像してみてほしいのです。
まだマンモスが平然と歩いていたような時代に、この列島のどこかで、誰かが一生懸命に石を削り、獲物を追い、そして明日の予報とは無縁の空を見上げていた。
私たちの物語は、思っていたよりもずっと長く、そしてしぶといものだったのですね。
DNAに刻まれた「三重構造の秘密」と、第3の祖先
そんな悠久の旅を経てきた私たちの「中身」についても、近年の 三重構造モデル という説が、今までの常識を覆してしまいました。
私たちはこれまで、日本人は「元からいた 縄文人 」と「後から来た 弥生人 」が混ざってできている、というダブル・ミックス理論を教わってきました。
だが、現在の古代の記憶を読み解く技術(パレオゲノミクス)は、そこに「第3の存在」がいたことを突き止めたのです。
それは、古墳時代に東アジアから流入した人々でした。
2024年には、約25万人もの現代日本人のデータを解析した結果、こうした「三重構造モデル」は、現在の遺伝学において有力な説明の一つとされており、多くのデータによって支持されています。
つまり、私たちのDNAは「縄文+弥生」の2重構造ではなく、その形を決定づけるトッピングとして、最後に古墳時代に流入した人々の要素が加わって完成した、いわば「三重のレイヤー」でできているらしいのです。
朝の鏡に映る自分の顔の「なんとなくの造形」や、お酒に強い・弱いといった体質、果ては太りやすさの傾向まで、環境や生活習慣の影響もありますが、それらの多くはDNAに由来すると考えられています。
4万年かけてこの列島に流れ着いた、数え集められた人々の「仕様」の集大成。
そう思うと、自分の顔が少しだけ、壮大な歴史の最前線に見えてくるから不思議です。
4万年前の誰かが削った石の鋭さに感動したあとで、自分が今、あけくちが見つからないお菓子の袋を歯で食いちぎろうとしている浅ましさに、DNAの進化の格差を突きつけられてしまうのですが。
4万年の記憶を背負って、見失ったテープの切り口を追う
・・・・・なんて。
そんな壮大な太古のロマンに浸りながら、私はセロハンテープの切り口と死闘を繰り広げていました。
ようやく見つけた端っこを勢い余って斜めに引き裂いた瞬間の、あの何とも言えない敗北感。
地味な失敗と共に、歴史への全能感はあっさりと消え去ります。
でも、こうした小さな、でも必死な格闘を、それこそ何万年分も、幾千万回と途方もない数を積み重ねてきたことこそが、私たちの4万年の正体なのかもしれません。
セロハンテープの次は、週も後半だというのに泥と砂利をこっ酷く吸い込んでしまった外履きを洗うという、現代の生存戦略に取り掛かることにしましょうか。
太古の昔、あの鋭い石器で道を切り拓いてきた情熱を、今はただ、この一本のブラシに託して————明日を生きる、4万年の旅路の「最前線」に立つ小さな続きが、泥に足を取られず軽やかにその先を進んでいけることを願いながら。
▼もう少し「ふしぎ」を眺めたい方へ
生命がDNAというコードでできているなら、デジタルの「0と1」もまた、はるか東洋の知恵に導かれていました。無機質な数字が、急に人間臭く見えてくる不思議な物語です。
4万年の歩みの途中にあった、美しくも残酷な祈りの季節。修学旅行で見上げたあの大仏の裏側に、まさか「毒」が潜んでいたなんて、誰が想像できたでしょうか。
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