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「サブスク解約忘れ」はシステムが賢すぎるせい?

ある日の午後。コーヒーを淹れて、ふとスマホのクレジットカード利用明細アプリを開く。

ずらりと並んだ日々の支払いのなかに、ひっそりと毎月鎮座している「500円」の文字。そう、半年前に「初月無料だから」という理由だけで登録し、それ以来一度もログインしていない動画配信サービスのサブスク料金です。

「あ、これまだ解約してなかった。……今日の夜には絶対やろう」

そう心に固く誓ってアプリを閉じ、気がつけばまた次の月になっている。そんな無限ループを、今度こそ抜け出したいと願いながら繰り返してはいませんか?

普段はスーパーで「こっちのお店のほうが20円安い!」と真剣に悩んでいるのに、こと固定費の話になると、なぜか財布の紐がゆるゆるになってしまう私たちの金銭感覚。

今日は、そんな「解約忘れ」に潜むシステムと心理の不思議な仕組みについて、少し考えてみたいと思います。


気がつけば森の中。圧倒的な「解約のしにくさ」

「よし、今日こそ解約するぞ」と意を決してサイトを開いたとき、私たちは愕然とします。

登録する時は、あんなにデカデカと「1ヶ月無料体験はこちら!(ワンクリックで完了)」と大歓迎されたのに、いざ解約しようとすると、そのボタンがどこにあるのか全く見つからないのです。

FAQの奥底のリンクを辿り、ようやく設定画面を見つけても、そこからが本当の戦いの始まりです。

「本当によろしいですか?」「今ならこんな特典が残っています!」「あなたの視聴履歴から、この作品がおすすめです」という、あの手この手の涙ぐましい引き留め工作。わざとボタンの色を背景に溶け込ませたり、「解約」という文字を極小フォントにしたりする、執念すら感じる設計の数々。

まるで、出口のない森の中を延々とさまよわされているような、あるいは 「別れを切り出したのに、思い出話を延々と語り出す恋人」 を前にした時のような、なんとも言えない重い空気。

実はこれ、企業側が意図的に解約のハードルを高く設定している 「ダークパターン」 と呼ばれる動線設計なのだそうです。私たちがあの森の中で迷子になるのは、ズボラだからでも偶然でもなく、 巧妙なシナリオ通りの迷子 にされているだけだった、というわけです。


「あとでやろう」と思わせる少額の罠

では、なぜ分かっていても放置してしまうのでしょうか。それは、この手強い「解約迷宮」を前にしたとき、私たちの脳が白旗を上げてしまうからです。

人間には 「現状維持バイアス」 という、変化を避けて今と同じ状態を続けようとする根源的な性質があります。解約という面倒な手続き(変化)に立ち向かうくらいなら、そのまま放置しておく(維持)ほうが、 脳にとっては圧倒的に「ラク」 なのです。

そこに拍車をかけるのが、「クレジットカードの自動引落とし」という魔法です。

もしこれが、毎月玄関のチャイムが鳴り、集金係の人に手渡しで500円玉を渡さなければならないシステムだったらどうでしょう。

「見てないんだから、もう来ないでください!」と、すぐに断れるはずです。しかし、自動引落としのシステムでは、手元から現金が減っていく物理的な「痛み」を直接感じることがありません。

「たかが月500円だし、今すぐあの面倒な手続きをするよりはマシか」

そうやって、どこかで『システムがそうさせているんだし』と、自分に対する優しい(ズルい)言い訳を作ってしまっているのかもしれません。


高い授業料を払った、ささやかな反逆

こうやって少し俯瞰してみると、私たちがサブスクの解約を忘れてしまうのは、単に自分がだらしないからというだけの理由ではない気がしてきます。

「解約手続きを極限まで面倒にする巧妙なシステム」と、「面倒くさいことを後回しにしたい人間の心理」。この二つが見事に噛み合わさった、 逃げ出すのが難しい、よくできた仕組み だったのです。

だから、解約を先延ばしにしていた数ヶ月分の料金は、「自分はなんて怠け者なんだ」と落ち込むためのものではありません。

社会に潜む巧妙なシステムに対する、ちょっとだけ高い勉強代だったと思うことにしましょう(笑)


もし今日、またあのアプリ画面で「500円」を見つけたら。今度こそ重い腰を上げ、あの解約迷宮へと足を踏み入れてみませんか?

何度も引き留めようとするポップアップを振り切り、ラスボスのようなアンケート画面を突破して、ようやく「解約完了」の静寂に辿り着けたなら。その一仕事を終えた自分を、今日は少しだけ大げさに褒めてあげてください。

あの重い扉を開け放つことで、私の財布に生還した500円。その銀貨一枚(のデジタル版)を握りしめ、スーパーで何度か手に取っては棚に戻していた、少しリッチなバニラアイスをカゴに入れてみませんか?

それが、現代の迷宮を突破した私たちに許された、 ささやかな「勝利の味」 です。

.........あ、このアイス、前買った時より20円高くなってる。

また別の 「ふしぎ」 に足元を掬われそうになりましたが、今日はもう深く考えないことにします(笑)


▼もう少し「ふしぎ」を眺めたい方へ

解約を邪魔するデジタルの迷宮。それは、何度変えても拒まれる「パスワード再設定」のあの究極のイライラとも似ているようです。

「明日こそやろう」と解約を後回しにする心。それは、資産形成を夢見つつ趣味に散財してしまう「あの不器用な朝」とも繋がっていました。

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