闇 429(下落合の聖母病院編)
闇 429(下落合の聖母病院編)

2025/12/20 sta
前回の章
二千十七年九月二十四日、日曜日赤口。
ここ最近連日ニュースで報道されている自民党豊田真由子議員。
秘書に向かって「このハゲー!」と猛烈な暴言を吐き、マスコミの報道は過熱している。
ラッキーハウスで設置してあるテレビで否が応でも目に入ってくるので、過熱報道には見ていていい加減嫌気がしてきた。
「こ、こ、こういう女がち、近くにいたら、お、俺はひ、引っ叩いてるな」
俺の隣りで画面を見ている川崎が呟く。
彼の気持ちも分からないでもない。
確かに豊田議員はやり過ぎだと思う。
しかしそれ以上に報道の仕方が俺には勘に触っていた。
賛否両論というよりも集団苛めにしか見えないのだ。
普段政治にはまるで興味のない俺。
それでも自身の心境を何となくフェイスブックへ投稿してみる事にした。
悪いのは豊田真由子議員だし、別に彼女の擁護するつもりではないけれど、ここ最近のマスコミの報道ラッシュには疑問を感じる。
公の場へ出て謝罪しているのに、未だ例の映像を何度も何度も垂れ流し……。
これってマスコミの見苦しい部分だし、イジメにしか見えないのは俺だけだろうか?
イジメ問題をよく扱うけど、そのマスコミがイジメを繰り返しているのだから、いつまで経ってもイジメなんて無くなるわけないよね。
この投稿に対し、KDDI時代柔術で世話になった岡本大がコメントを寄せてくれる。
氷山の一角なんでしょうが、極めて目に付いたんじゃないんですかね。
政治家も結局は潰し合い化かし合いの世界ですからねー。
大いに利用されたんだしょ。
とある関係者から聞いた話ではそもそも箸にも棒にもかからない秘書を無理くり押し付けられたとか。
そうやって権力者の礎にされてしまうんでしょう。
まぁ誰の為とか口にしてますけど政治家なんてロクなのおらんでしょ。
それ以上に一人一人が他国に比べ愛国者が少な過ぎますね。
全く以って平和な国ですよ。
皮肉でね。
彼のコメントを見て嫌な世の中になったものだと痛感する。
本当に平和ボケした国だなと思います。
今度から悪質な犯罪者は、北朝鮮送りにすればいいと思います。
そう短くコメントを返した。
初期横浜時代にブラウザーネットゲームで仲良くなった森貴裕からも、コメントが届く。
他人の不幸は蜜の味的な輩が、こんな報道に食いついているのも要因のひとつなのではないかな、と。
確かに今の日本は相当病んでいると思う。
視聴率至上主義になってしまっている時点で、ジャーナリズムって何?と思うんですよね。
正直な心境をコメントで返す。
マスコミも国民性もすべてがおかしくなっている現代。
そこに危惧するたちのコメント。
横浜の石川雅之も続く。
致命的なミスを繰り返す秘書にキレないほうが異常な気もしますが。
それらも秘書たちの罠だったのかもですね。
なるほどと思うような意見。
あそこまで暴言をタイミングよく拾うには、日頃の恨みか逆にそう誘導させる罠的思考も否めない。
まあその秘書が証拠を撮ろうと動き、あのようなものを残される以上、さすがに扱いが酷かったのは否めないですけどね。
どっちもどっちだし、その秘書へ出馬要請しようとした民進党も、かなり世の中舐めているなあと思いました。
正直に感じた自身の感想。
豊田真由子報道について、俺だけでなくみんなそれぞれ感じるものがあったのだろう。
実際俺たちのコメントのやり取りがどれだけ役に立つかなんて分からない。
それでもこういった国民一人一人のやり取りは、とても大切な事のように思えた。
しかしこれ以上気になっている事が一つあった。
斉藤弘一の事だ。
前回叙々苑で焼肉をご馳走してもらった俺は、定期的に食事の誘いのメールをしていた。
今までなら日にちを開けずに返事をくれた彼だが、八月からまるで連絡が無いのだ。
彼と最後に食事をしたのが七月末。
「でも明らかに斉藤さん、前よりほっそりしていますよ? ある程度は食事取って下さいね」
「抗癌剤ってあるじゃないですか」
「ええ、それがどうしました?」
「あれはですね…、人間の身体を壊す薬なんですよ」
「……」
「だから私は飲んでいないんです。まあ自分の身体ですからね」
「でも、斉藤さん、それだと……」
「もちろん医者にはちゃんと言っていますよ。ただ抗癌剤だけは飲みませんと伝えているだけで」
「俺、斉藤さんに何かあったら嫌ですからね!」
「やだなー、岩上さんは…。そう、真面目な顔で言わないで下さいよ」
「いやいや、そりゃあさすがに心配しますって」
あの時叙々苑で交わした会話。
さすがに一ヶ月以上返信が無ければ心配になってくる。
不本意だが、同じ店『ジョーカー』で働く山下哲也へ、明日辺り連絡を取ってみよう。
あまりあの男とは繋がりを持ちたくなかったが……。
二千十七年九月二十五日、月曜日先勝。
今日も斉藤弘一からの連絡は無いまま。
杞憂に過ぎなければいいが、これまでのやり取りを振り返ると嫌なイメージしか湧かなかった。
仕方ない。
山下へ電話を掛けてみよう。
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