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「場所」と「人」の視点を持った瞬間、中学生はビジネスパートナーになった。

「現在、日本にはどのくらいの自治体があるでしょうか? 」
 
これは、中学生たちの視野を広げるために、私が講話で投げかけた質問です。
 
総務省のホームページを開くと、出てくる数字は「1,718」。
私たちの暮らすいわき市も、その数ある自治体のひとつに過ぎません。
 
しかし、この「ただの一つの自治体」が、そこに生きる子どもたちにとって「自分たちの居場所があり、いわきだからこそ面白いことができる場所」に変わること。それこそが、私たちいわきアカデミアが挑んでいる「ひとづくり」です。
 
先日、いわきアカデミア事業に協力いただいている「いわき経済同友会」の方にお声がけいただき、いわき市教育委員会が主催する「いわき中学生Basecamp」の第3回講座で講話をしてきました。
 
依頼されたテーマは、直球で「いわき市の現状」。
 
実は2年前にも、この事業の前身である「いわき志塾」で同じテーマでお話しさせていただく機会がありました。そのときの記憶を大切に持っていてくださった方々から、ぜひもう一度とありがたい機会をいただいたのです。


なぜ「場所」と「人」という視点を説明するのか

せっかく、いわきのビジネスの最前線を走る企業の方々と実施する講座です。
だからこそ、大人がビジネスで使っている「視点」を渡し、この現状を自分事として捉えてほしい。
そう考えて、私はいわき市の現状を、「場所」と「人」という2つの視点で切り込みました。

まず1つ目は、「場所」という視点です。
いわき市は東京23区の約2倍という圧倒的な広さを持ち、東北エリアでも上位の製造品出荷額を誇る工業都市です。
豊かな自然と広大な土地、そして確かな産業の基盤があること。
これがいわきの持つ大きなポテンシャルであり、外から見たときの最大の強みと言えます。

一方で、2つ目の「人」という視点に目を移すと、見える景色は一変します。
そこにあるのは顕著な少子高齢化、そして高校卒業時に約6割の若者たちが進学や就職のために市外へ出ていってしまう「転出超過」の現状という、地域のリアルな課題が浮かび上がってきます。

これは単なる地理や統計の授業をしたいわけではありません。
この「場所」と「人」という視点は、企業が「どうすれば地域の人に選んでもらえるか」「どうすればこの新しいエリアで利益を出せるか」を決めるときに分析している「営業戦略の基本」そのものだからです。

そして、私が伝えたかったのは、「場所が変われば人の暮らしが変わり、人の想いや行動が集まれば、場所の価値も変わる」という、まちと自分との地続きのつながりです。

「場所」と「人」という視点を持つことは、「この場所に生きる自分たちは、これからどう動くか」という問いを自らに立てることに繋がります。
この関係性に気づくことこそが、まちを当事者として面白がるための、本当の意味での探究のスタートラインだと私は信じています。


空気を変えた、1枚の「名刺」

講話後は、いよいよ企業の方々とのワークショップの時間です。
しかし、大人も子どもも最初は少し緊張気味。
そんな空気を一気に溶かしたのが、ユニークなアイスブレイクでした。

なんと、企業の方々が自社の「本物の名刺」を用意してくださったのです。
そこに中学生たちが自分の氏名を記入し、即席の「マイ名刺」が完成。

大人から名刺交換のマナーや所作を教わり、会場全体での「名刺交換会」がスタートしました。

〇〇会社の〇〇です。よろしくお願いします!

大人と同じように名刺を差し出し、頭を下げ、笑顔を交わす。
このステップを踏んだことで、中学生たちの背筋がスッと伸び、会場の空気は一気に「ビジネスの場」へと変わっていきました。


大人のプロの目が変わった、本気のディスカッション

アイスブレイクで一気に関係性を縮めた後、各企業の方々が自社の事業を紹介するプレゼンテーションを行いました。
自社が地域でどんな役割を果たしているのか、どんな想いで働いているのか。
それを聞いた上で、中学生たちに今まさに企業が直面しているリアルな「ミッション」が投げかけられました。

ここからの時間が、本当に面白く、そして美しかったのです。

中学生たちは即席のプロジェクトチームとなり、自分たちの知識と感性をフル活用して、各社のミッションに取り組む企画を必死に考えていきました。

圧倒されたのは、むしろ大人たちの方でした。
途中で完全に目の色が変わり、一人の「ビジネスパートナー」として中学生の言葉に本気で感心する瞬間が何度もあったのです。

自分の頭で考え、大人のプロを驚かせるアイデアを生み出す。
そんな子どもたちのエネルギーこそが、これからのいわきを変えていく何よりの原動力であり、私たち大人が信じるべき可能性そのものです。


どこへ行っても、いわきはみんなのスタートライン

将来、進学や就職でいわきを離れる選択をする人はたくさんいると思います。
外の広い世界へ飛び出し、新しいことを学ぶのは、本当に素晴らしいことです。
思いきり、羽ばたいてほしい。

ただ、みなさんが「これから自分は、世界のどこに身を置いて生きるか」という選択を迫られたとき。ぜひ、「場所」と「人」という視点を、もう一度思い出してほしいのです。

自分が心地よく生きられる「場所」はどこか。
自分が幸せにしたい「人」、自分を必要としてくれる「人」はどこにいるか。

人生の大きな決断をするとき、その選択肢のなかに、「いわき」というまちが並んでいたら。
心のどこかで「いわき」のことを誇りに思ってくれていたら、これほど嬉しいことはありません。

これから夏休みが始まります。
イベントでも何でもいい。一歩、まちのリアルに触れてみてください。
「なんでここにはこれがあるんだろう?」
その小さな違和感や探究心が、みんな自身の未来を、そしていつか選ぶことになる「あなたの場所」を切り拓く確かな力になります。

本気で大人にぶつかって意見を述べてくれた中学生のみなさん、そして彼らの感性を一人のパートナーとして温かく受け止めてくださった、いわき経済同友会の皆様、本当にありがとうございました!

いわき中学生Basecamp 第3回講座協力企業様
・常磐共同ガス株式会社
・東部ガス株式会社
・株式会社エナジア
・株式会社鈴木電機吾一商会
・株式会社小名浜包装資材
・有限会社正月荘
・三井住友海上火災保険株式会社
・福島民報社