かわんちゅー2025(2025/9/13〜9/14)
1.はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。今年もパタゴニア京都にてかわんちゅが開催されました。当然、私も今年の開催に行きました。ここで見てきたもの、去年との違い、今年の展示はどのようなものだったのかについて書きます。よろしくお願いします。
*去年のかわんちゅもこちらからご覧ください。
2.構成
今回の展示もパネル・イラスト・生体で展示が構成されていました。うぱさんとSakanazukiさんが中心で展示を作っていました。今回は、スタッフがおり彼らも展示を構成し、自らの展示も行っておりました。前回は、琵琶湖・淀川水系をテーマにした展示でしたが、今回は、中国〜南西諸島と取り扱う範囲は、拡大していました。

3.パネルと川の再現とイラスト
まず、最初に私たちを出迎えてくれる展示は、Sakanazukiさんの色鉛筆がです。ここでは、京都の魚と西日本に生息する魚の色鉛筆画を展示していました。解説には、生物の特徴だけでなく、Sakanazukiさんの想いや実体験委ついて書かれています。個人的には、オオシマドジョウがシマドジョウの中で一番好きだったということに驚きました。私も、ドジョウの中で一番気に入ったドジョウだからです。また、ニッポンバラタナゴの解説もあり、きんたい廃校水族館の個体と比べた際、大きくがっしりして赤みが強かったと答えてもらいました。



今年のかわんちゅでは、スタッフとして参加した「流されカマツカ」さんによる展示が行われていました。展示品は、桂川の嵐山に設置されている魚種の「看板の原本」です。ここに載っている魚のイラストは、流されカマツカさん自身でかいたものですが、何よりもすごいのが、描かれている魚種すべてが、流されカマツカさん自身の「タモ網」で「採取」して確認したものだからです。つまり、流されカマツカさんの調査によって、生息する魚類が分かったということです。
流されカマツカさんが採取した魚種の中で1番印象に残っているエピソードについて聞いた時は、「ヨドゼゼラ」と「ナガレカマツカ」と答えてもらいました。特に、ヨドゼゼラにおいては、生息しているであろうポイントが1つだけあり、そこでは成魚と幼魚が採取できたため、再生産されていることが分かりました。しかし、この看板を作成している時に、工事が行われ、そのポイントが失われてしまったと話していました。そのため、もういないのではないかと話していました。水系単位で見れば貴重な個体群であったであろう魚を失ってしまったのは、残念だとも思います。



今回も、展示フロアの壁に展示の協力者・団体の紹介、現在の魚たちや環境の解説がされていました。そして、うぱさんのイラストを使用して河川の環境を再現した展示が行われていました。今回は、淀川をモデルに入り口を起点に時計回りで川の上流から下流、海へと流れるように展示されていおり、それぞれの環境に合わせて魚が貼られていました。上流は、ナガレホトケドジョウから始まり、汽水・海はキチヌやコトヒキで終わっており、川の上層には遊泳力のある魚を中層・下層はドジョウやタナゴが中心となっておりました。


また、淀川の魚の生態の再現や小ネタもたくさん盛り込まれていました。オヤニラミに托卵するムギツク、ボラやオイカワが群れている所などと知っていれば、「これはこの生き物の生態だと気づき」になります。今年は、小ネタとして簡単なガイドブックが作られ、外来種と希少種がどこにいるのかを探せるように工夫がされていました。因みに、そのガイドブックがないとうぱさんらが作成したネタを私は、見つけきることができませんでした。外来種の代名詞とも言えるオオクチバス、コクチバス、カダヤシ、ブルーギルは当然貼られていました。ただし、淀川にいる外来種をただただ貼っただけでなく、外来種による悪影響も再現されていました。オオクチバスはタナゴを、コクチバスはアユを追い、ブルーギルは生まれたての稚魚を保護するという外来種による被害と生態を再現していました。

こちらを元に探します





希少種の展示では、今では絶滅のリスクが非常に高い生物に加え、もう絶滅してしまった生物が貼られていました。その代表的な生物であるアユモドキは、京都の1水系のみでなんとか生き残っていますが、ヨドコガタスジシマドジョウは、30年未発見です。また、淀川から絶滅してしまった生物も張られていました。種ごと絶滅してしまったミナミトミヨ、淀川水系から地域個体群が消えてしまったニッポンバラタナゴとオヤニラミが張られていました。絶滅の原因は、開発や水位調整だけでなく、外来種の侵入などの理由が複合的に絡まって引き起こされています。どれか一つの要素が大きいことはあってもそれだけで説明できるわけではありません。どれも脅威です。ここで希少種となっている生物も絶滅することがなければ、普通にいたかもしれない本来あるべき淀川の姿として見ることができます。しかし、淀川は決して、絶望することばかりではありません。ツチフキが張られているからです。なぜなら、30年間見つかっていなかったものの近年、再発見されたためです。要因の一つに外来魚の駆除を継続したことで、外来魚の個体数が減り、在来魚が回復するようになったため、ツチフキもその影響を受けたためと考えられているからです。環境保全を正しく行えば、それに生き物は答えてくれるという一例です。








*ヨドコガタスジシマドジョウ、アユモドキについて詳細を知りたい方は、是非、こちらをご覧ください。
*ツチフキついて詳細を知りたい方は、是非、こちらをご覧ください。
ただ、今回のうぱさんの淀川再現で一番面白いと思ったのが、「国内外来種」であるミナミアカヒレタビラ、漂流・定着するアカメと本当にいたのか分からないスイゲンゼニタナゴです。
ミナミアカヒレタビラの生息地は、日本ですが、本来の自然分布域は、北陸・山陽地方であり、淀川水系には自然で分布していません。つまり、淀川水系では、彼らは外来種であり、「国内外来種」と言われるものです。外来種というと、ブラックバスやブルーギルのような日本ではない外国から来た生き物をイメージするかもしれませんが、国内の生き物が全てどこにでもいるわけでもなく、分布が限定的なものが、人の手によってその範囲を越えて移動したら、国内のものであれ、外来種になります。淀川で怖いのが、「シロヒレタビラ」との交雑になり、もし、交雑してしまったら、婚姻色がおかしくなってしまい、天敵に見つかりやすくなるなどの悪影響が出ると考えられます。ただし、このミナミアカヒレタビラも「絶滅危惧種」であり、絶滅寸前にまで追い込まれています。それ故、鳥取県、島根県では正式な理由のない採取が条例で禁止されています。つまり、外来種というと強い生き物のイメージありますが、原産地で見ると、むしろ、危機的な状況にあるという非常に歪な現実にあるということです。国内の生物であっても、どこから由来するものかをしっかり知らなければいけないですし、どこのものかわからない場合は、なおさら、生物を外に離してはいけないということです。


*ミナミアカヒレタビラについてはこちらをご覧下さい。
*国内外来種、または、外来種でも絶滅の危機にあるという矛盾した内容についてはこちらをご覧ください。
アカメは、四万十川を中心とした四国・九州に生息していますが、稀に海流で流されることがあり、淀川に迷い込む、捕獲されることが過去にありました。また、スイゲンゼニタナゴも過去に京都で見つかった個体が1体いるが、それ以降は見つかっておらず、本当に自然分布していたのか、実態はよくわからないものです。知る人ぞ知る小ネタです。先ほどの希少種の場合と合わせてですが、本当に過去の記録等をよく調べたからこそ、ここまでの展示ができたのだと感じました。



4.生体展示
今年の生体展示は、2ブース作成され、うぱさんとSakanazukiさんが実際に採取したものを展示していました。うぱさんのイラストがついた解説パネルがあり、どういう生物か、小ネタ、生物同士の関係性…などと簡潔でも情報がたくさんあります。また、生体での展示だけでなく、1日目はサメやフグの骨格標本、2日目はイトウの下顎の骨格を展示し、パタゴニア京都近くにある魚の郷土料理を扱うお店の紹介も行っていました。この中で、私が注目したのが、「ドジョウ」、「ハゼ」「マングローブ」です。



・ドジョウ
ドジョウは、前回のかわんちゅでも多く展示していましたが、今年は、さらに多くのドジョウがいました。ドジョウ、ニシシマドジョウ、オオシマドジョウのような割とドジョウらしいドジョウも展示されていましたが、今回のドジョウで注目されるべきドジョウは、「スジシマドジョウ」になります。スジシマドジョウは、日本国内10種ほど生息していますが、今回の展示で、その半分近くを見ることができました。また、日本の最西端に生息するアリアケスジシマドジョウと最東端のトウカイコガタスジシマドジョウが、ここで同時に見られるという淡水魚専用の水族館でもできないことを実現するという快挙を成し遂げました。スジシマドジョウの面白い所は、「分布域」です。チュウガタスジシマドジョウが、スジシマドジョウの中で1番分布域が広く、トウカイコガタも東海地方に広く生息しているスジシマドジョウですが、オンガスジシマやアリアケスジシマの場合では、その周辺水域のみとなっています。つまり、種類によって、生息範囲というのが、地域単位から水系単位までと広くもあり狭くもあるのです。
スジシマドジョウは、本当に厄介な生物でもあります。それは、見分けがつきにくいからです。生体展示でいくつかのスジシマドジョウは、1つの水槽に入って展示されており、素人の私には、一切見分けがつきませんでした。せめてチュウガタくらいなら、筋が通っているから、すぐに分かるかなと思っていましたが、ダメでした特に、九州地方には、数多くのスジシマドジョウがいることもあり、どれがオンガスジシマなのか、アリアケスジシマなのか、またまたトウカイコガタもいたため、カオスな水槽でした。また、展示を作成したうぱさんも「何で混ぜてしまったのか?」と後悔していました。



土岐川観察館での個体
*私はニシシマとよく間違えます。



ドジョウの展示で見れて嬉しかった生き物もいました。それは、「ヤマトシマドジョウ」です。イシドジョウを探している時にとれた個体だそうです。ヤマトシマドジョウは、九州地方と山口県の一部に生息する大型のシマドジョウになります。九州に生息するシマドジョウは、ヤマトシマドジョウとオオヨドシマドジョウの2種が代表的で、アリアケスジシマやオンガスジシマと合わせて九州にしか生息していない淡水魚を見ることができるとは思わなかったため、貴重な機会に立ち会えたと思います。

九州に生息しているのになぜ、「大和」というのでしょうか?
・ハゼ
今回、展示されたハゼで注目すべきものは、「タメトモハゼ」と「クロマダラハゼ」の2種です。この2種に共通することは、「デカイ」と「琉球列島」です。私自身もそうでしたが、ハゼというと日本にいるものは、ひっそりとしていて小さい地味なものだと思っていました。しかし、ここで展示されていたハゼは、私が持っていたそのイメージをぶち壊すものばかりが展示されていました。
タメトモハゼは、体の色が、赤、青、黄色と非常にカラフルなものになっており、奄美大島以南の河川の中流〜下流にて生息するハゼになります。体長は、最大で30cmになるのですが、この個体は、15cm程でまだまだ大きくなるポテンシャルを持っています。また、非常に気性が荒く、名前の「タメトモ」も源為朝が由来しており、元となった人物も性格が豪放な性格で弓術に長けていたとされています。


色鉛筆画
クモマダラハゼは、「日本最大」のハゼです。最大で全長が40センチとなり、体色は黒色となっております。本種は、かつてホシマダラハゼと同種とされていましたが、細分化され、こちらが日本で最大のハゼになりました。Sakanazukiさんが、採取した個体となり、夜の河口、汽水域でヘッドライトをつけて獲ったものだと教えてもらいました。今、岩の隙間に潜んでおり、このチャンスを逃がしたら、獲れなくなると感じていたそうです。
この2種のハゼを見て私が感じたことは、沖縄であっても「異国」を感じさせるということです。同じ日本と言っても地域で見れば、生物相は違います。渡瀬線を始めとする生物地理区が設定されているほど、日本国内での生物相に違いがあります。それを肌で感じさせる生き物が、この「クモマダラハゼ」と「タメトモハゼ」の2種です。特に、タメトモハゼの場合ですが、体色が非常にカラフルだったこともあり、外国の熱帯魚を想起させるようなイメージも持っていました。また、何といっても私がイメージする淡水・汽水のハゼと比べた場合、非常に大きく、「でかい」というのが、彼らの異質さ、そして、日本と一言で言っても異国であることを示してくれた魚だったと思います。

見た目がブラックタライロン
・汽水域の生物
ここに展示されている生き物は、全てうぱさんが、実際に採取したものになります。8種という豪華さに加え、ここに展示されている5/8がハゼとなり、うぱさんの好みがよく表れたと感じます。今回展示されていたハゼは、どの種も姿・形が特徴的で変に似たり寄ったりしなかったため、思ったより見分けがつきやすかったです。タネハゼのような体が細長くも胸鰭が非常に広いややアンバランスなハゼが、印象的でした。ハゼ、つまり、底生の魚だけでなく、上・中層を泳ぐ魚も印象的です。特に、人目につく生き物が、「クロホビタカサゴイシモチ」になり、その特徴は、全身が「透明で透き通っていること」になります。私が、過去に飼育していたグラスキャットの海水魚版です。和歌山県でも獲れることがるそうですが、実際に採取できる数はあまり多くはないそうです。沖縄などにいた個体が流されたのではないかと考えられます。




ただ、この水槽の注目すべき点は、「マングローブ林」を再現した展示であるということです。濾過に実際の植物を出しマングローブの雰囲気を出していました。特に、ヒメツバメウオの存在が、熱帯の魚らしいイメージを持っていたと思います。ただ、私がこの展示を見た時、ここに展示されている魚たちは、小さいものが多いと感じました。それは、展示されている魚がしょぼいと感じたという意味ではなく、稚魚・幼魚にとってマングローブ林が過ごすには非常に重要な環境であることを見せたかったからだと感じたからです。そもそもマングローブ林は、主に汽水域の潮の満ち引きの影響を最も受ける所に位置する樹林です。満潮時は樹林一帯が海水で満たされ、干潮時は辺り一面が陸地になり、環境の変化を非常に受けやすい樹林となります。魚から見た場合、マングローブ林は、木の根が複雑に張り巡らされているため、隠れ家として利用するには、非常に好都合です。展示個体のクロホシマンジュウダイに縞模様が入っており、私が、それが木の根の「擬態」になれていると感じました。また、木の根が複雑に張り巡らされているが故に、激しい波が打ち消されるため、遊泳能力があまり高くない稚魚にとっては、住処として非常に重要な住処・避難所であるということです。つまり、生物が非常に集まりやすい環境になっているということです。それ故、マングローブ林は、「海の命のゆりかご」と言われています。また、マングローブ林がもたらす恩恵は、海の生物だけではなく、私達もその対象です。まず、波を緩和するため、防波堤としての役割を担っています。その上、マングローブ林は、地球温暖化を抑止するためにも働いています。いわゆる「ブルーカーボン」の1つです。ブルーカーボンの場合、ただただ光合成で二酸化炭素を吸収するだけでなく、地中や海中へと運ばれます。つまり、地球温暖化の原因である温室効果ガスの中心である二酸化炭素が大気中にたまることを防ぐという非常に重要な役割を担っており、これは、陸上の森林ではできにくいことです。マングローブ林が地球において担っている役割は、生物への住処の提供、防波堤、そして、炭素の貯蔵と1つで3つ実現しています。それ故、マングローブ林の存在が非常に大切です。うぱさんは、このことをどうしても伝えたかったため、2日目に解説パネルを急いで作成し、追加したと教えてくれました。





それを図にしました。

縦の縞模様がマングローブの根と重なると上手く隠れられる。

まとめ
以上が、2025年度のかわんちゅの内容になります。去年もすごかったと感じていますが、今年は、さらにパワーアップしたと感じる展示になっていました。その要因として、取り上げる範囲が非常に大きくなったことが挙げられます。去年は、琵琶湖・淀川水系が中心でしたが、今年は、西日本を広く扱い、特に、九州・沖縄の展示が目立ったと思います。それを示したのが、生体展示のドジョウ、ハゼ、汽水域の生物になると思います。ただ、琵琶湖・淀川水系の展示がしょぼかったかというとそうではなく、壁で生態を再現した展示は、過去・現在、本来あるべき姿を示しており、何が、どこに貼られているのかを見たら、生物の生態、関係性を表現しており、彼らの実際に生きている姿がうまく再現されていたと感じました。つまり、浅くて広いが縦に深堀ができた展示になっていたと思います。また、今年は、スタッフによる展示の構成が行われました。彼らの作った展示と解説が、今年のかわんちゅのクオリティを大きく底上げしたのではないかと感じます。
今回の展示では、Sakanazukiさんとうぱさんの「知識」だけでなく、「体験」や「経験」も感じることができる展示になっていたと思います。展示の解説ボードにある豆知識や体験談がそれをよく示していたと思います。この展示を見て、私も九州や沖縄へより行きたいと感じることとなりました。リアルのタメトモハゼが見たいです。
以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回もお楽しみに。
