淡水魚から見る世界の湖沼ー琵琶湖博物館企画展示
1.はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。琵琶湖博物館で世界の湖沼の企画展示が実施されていました。世界の大型の湖とそこに生息する生物が展示されていました。今回、どのような展示がされていたのかについて紹介します。
*こちらの展示は、2025/9/28までの開催です。是非、展示に足を運んでみてください。
2.構成
琵琶湖博物館の水族展示室の1室で、各湖ごとにどのような湖か、どのような生き物がいるのかを生体と標本とパネルの解説で展示していました。主な展示構成は、下の図のようになりますが、その中で私が気になったもの、面白いと思ったことをここで紹介させていただきます。

3.日本固有の湖のサケ
ここで紹介されたのは、日本にしか、そして、日本の極一部の地域にのみしか生息しないサケマス類を展示していました。それが、「ビワマス」と「クニマス」です。今回の目玉展示は、「ビワマス」で、彼らは、琵琶湖とその周辺の水系に生息するサケ科の淡水魚で、琵琶湖を海のように利用しています。今回の展示でビワマスが注目される最大の理由は、「学名」の決定です。

ビワマスとは何か?を決める時の基本となる標本です。

秋になると婚姻色を持つ個体が展示されます。
・学名とは何か?ー何故、標本が大事なのか?
学名の決定が重要な理由は、その生物をその生物たらしめるための「正式な学術上の生物名」だからです。学名の決定には、生物の分類が大きく関わっています。新種の決定は、「学名」の決定と「標本」の2つの存在が決して欠かせません。
まず、その生物を生物として必要なものがあります。それが、「学名」です。学名は、その生物をその生物として決定する学術的な名前で、ラテン語アルファベット26字(*ハイフンは例外とし、特殊文字は使わない)を使用して決めます。そもそも生物は、目、科、属、種と細かく分かれており、原則、学名で使用するのは、属名と種名の2種名(*亜種などで3つなる場合もある)を使用します。学名に「ラテン語アルファベット」を使用するのには、理由があります。それは、「使われてない」言語だからこそ「統一」しやすいからです。下の図のでカワムツを例にして書きましたが、日本語で例えており、言語圏一つで1種類の生き物に対して複数の名前があり、それは、英語圏、中国語でも同じです。それ故、使用されてない言語の方が、都合がいいです。(*他にも先につけた学名が適用されるなどのルールもあります。)

*学名についてより詳しく知りたい方、または、基本が学びたい方は、こちらの動画を是非、ご覧ください。
学名の決定において最も重要な役割を担う存在が「標本」です。そもそも学名をつけることは、その生物がどのような特徴を持ち、他の生物とどのように違うのかをはっきりさせるものになります。つまり、生き物の分類という研究を行うに際し、同じ実験を行ったとしても同じ結果を再現できるという再現性が必要不可欠です。その生物をその生物にする物的証拠が標本ということになります。
学名の基準となる標本は様々ありますが、ここでは、「ホロタイプ」と「シンタイプ」について紹介させていただきます。「ホロタイプ」は、1個体の標本を学名の基準とするものとなります。今回、指定されたビワマス標本は、このホロタイプとなります。つまり、その生物の学名の基準となる唯一無二の標本が、ホロタイプということです。新種記載する時は、ホロタイプ1個体だけの登録になるとは限らず他の標本も登録させる場合があり、それらをパラタイプといい、ホロタイプとパラタイプを合わせてタイプシリーズといいます。一方、複数の標本で学名の基準にするのが、「シンタイプ」です。ただ、複数で登録しててもどれを基準にするのか?となった時に、1個体を選ぶと、それが、「レクトタイプ」となり、残りが、「パラレクト」になります。
新種として記載するには、ラテン語アルファベットを使用して「命名」すること、そして、その物的証拠となる「標本」が必要です。新種記載は、学名の記載と標本の指定を同時に行うことで成立するため、学名と標本は、どちらも欠かすことのできない関係にあります。


今回、ビワマスが新種記載されたことに対して、疑問に思った方がいるかもしれません。それは、「ビワマスそのものが最近見つかった生き物なのか?」ということではないでしょうか。これは、ビワマスの学名の決定、つまり、新種記載の経緯が非常に特殊だったということです。まず、新種の発見というと多くの人のイメージでは、自然の奥地から見たことも聞いたこともない生物を見つけることをイメージするかもしれません。しかし、新種を発見するというのは、これまで同一とされていたいた生き物が、別種同士に別れることが判明したため、新たに新種として記載される場合もあります。今回のビワマスの場合は、新たに学名とその基準となる標本が指定されたため、新種として記載されたのです。

突然見つかった自然の奥地の新種そのもののイメージに当てはまるのではないでしょうか?
新種が見つかる1番の好例としてRickyさんのシュモクザメの動画が非常に参考になります。大西洋に生息するシュモクザメが、遺伝子、頭の形状、脊椎骨などを比較して2種に別れるという研究結果がありました。これは、いきなり新種が見つかったのではなく、これまでに見つかった生き物を比較した結果、別種レベルで分かれることが分かったという例です。日本の淡水魚、爬虫類、両生類で新種記載される例はよくありますが、実際は、このような例が多いです。


*シュモクザメの新種発見の詳細についてはこちらの動画とブログをご覧ください。
ビワマスの分類の研究においては、当初は、アマゴ(サツキマス)と同種とされていました。ただ、ビワマスとアマゴを別種と見ていた研究者が過去にいたのは事実です。江戸時代の文献である『湖中産物図証』では、海のマスや北国(*アメリカ)のサツキマスと別物であると認識していたのは、明らかです。また、ビワマスも当初は、今回のものとは別にタイプ標本があり、学名があり、「Oncorhynchus rhodurus」で登録されました。その標本は、1920年に芦ノ湖へ放流されていたものを採取されたものでしたが、次第にビワマスとサツキマスは別種と考えられるようになり、1970年頃には、両者を比較した時に生態・生理の面から違いが見られるようになってきました。特に、両者を比較した時の大きな違いとしては、ビワマスは、「耐塩性」が弱いということで、その特徴から琵琶湖に適応した生き物であるということがわかります。遺伝子解析を行なった所、50万年前頃にビワマスが誕生したとされ、ビワマスとサクラマス群は、遺伝的にも明確に異なることが示されました。そして、1990年に最初に登録されたタイプ標本を観察した時、鱗の数や構造、内臓の幽門垂の数からサクラマスであることが適切となるため、「Oncorhynchus rhodurus」は無効とされました。今回の研究では、新たに採取された標本では、遺伝子解析を行った結果、交雑の「ない」個体であること、そして、サクラマス種群の近縁種とも明確に異なることが示されたため、ビワマスが改めて新種記載されたということになり、「Oncorhynchus biwaensis」(オンコリンカス・ビワエンシス)という琵琶湖固有という学名が与えられました。つまり、ビワマスは、サツキマスと別種と分かっていたものの過去の学名が無効になった状態が長く続いたという歪な状態が続き、現在になってやっと正式な学名がついたという非常に特殊な事情があったということです。ウチワシュモクザメのような場合と比較した際、非常に特殊な記載になります。

もう一つ注目される展示は、「クニマス」です。秋田県の田沢湖にのみ生息する日本固有のサケの仲間です。ビワマスとの共通点は、両者共に湖という環境に適応したこと、つまり、「海に降りない」ということです。ただし、ビワマスは、琵琶湖とその流入河川で回遊をするのに対し、クニマスは流入河川に遡上することはなく、水深が深く、湧き水がある所に生息します。海に降りないという共通する生態を持ちつつも回遊か閉鎖かという点で対極にあるのは、非常に興味深いです。私個人の考えですが、クニマスの生息する田沢湖の水深は、日本一です。この深さが、クニマスの生態が、閉鎖的なものになったのではないかと感じています。

しかし、この2種は悪い意味でも共通点があり、それは、「絶滅」です。クニマスは、本来の自然分布域である「田沢湖」では、玉川の水の導入により、湖のPHが酸性化に偏ったことが原因で絶滅しています。しかし、過去に卵が様々な湖に移植され、それが、偶然、移植先の「西湖で定着した個体が再発見」されたことで、完全に絶滅したわけではない「野生絶滅」で踏みとどまれただけです。まして、西湖は、山梨県の湖でありクニマスの本来の生息地ではありません。つまり、クニマスは「国内外来種」です。導入当時に外来種のリスクが認知されているとはいいがたい時代だったこそ行われたため、当時の行いはできません。確かに、嬉しい出来事ですが、問題のある状態で見つかったという事実は、変わりません。

アラル湖で野生絶滅し、緊急で日本に避難したものが系統保存されている
*本展示の展示個体
一方のビワマスも環境省レッドリストで「準絶滅危惧種」指定されています。その原因に河川改修やダムや堤防などの建設による産卵の際の遡上の阻害、そして、漁業用のアマゴの放流による遺伝子攪乱です。クニマスは自然分布からは絶滅しましたが、ビワマスは、クニマスと比較した際、状況はまだ悪くないですが、保全対策が求められる生物であることに変わりはありません。
4.五大湖
五大湖は、アメリカ・カナダの国境付近に位置する5つの湖です。この湖は、氷河湖ともよばれ、1400万年前の氷河の侵食によって形成された湖でもあります。湖とその水系に約160種の魚類の生息が確認されています。五大湖に生息している中で最も多いのは、サケ科目であり、それ故、レイクトラウト、ニジマスのような日本でも釣りで有名な魚がここでは養殖されており、現在でも観光管理、釣りのレクリエーション漁業の場にもなっています。私が、ここでの展示で注目したのが、「パンプキンシード」と「ファーヘッドミノー」の2種になります。
パンプキンシードは、ずんぐりとしたオレンジの体になり、1番目立つ特徴は、エラの近くにある「青の斑文」です。この青い斑紋は、サンフィッシュ科の最大の特徴です。そして、この特徴を持つある魚は、日本にも非常に縁が深いです。それは、「ブルーギル」です。姿・形を比べれば、彼らは非常によく似ています。つまり、彼らは、分類的に同じだということです。また、ブラックバスもサンフィッシュ科に分類されます。このサンフィッシュ科の最大の特徴は、「アメリカで独自に派生した属」である。つまり、北アメリカの固有種であるということです。彼らの存在が、アメリカの自然の独自性を示しているのではないかと思います。また、それ故、接触したことのある生き物がそもそもいないため、彼らが自然分布域外へ持ち込まれて、外来種として脅威になるのも納得できます。また、ブラックバスは、アメリカ国内において「国内外来種」として大問題になっています。



ファットヘッドミノーは、頭が丸みを帯びた魚で、オスは繁殖期に黒くなり、追星も出てきます。彼らの分類は、「コイ科」に分類されます。このコイ科は、日本の淡水魚も分類されるもので、日本の淡水魚の大半は、コイ科に分類されます。日本のカワムツ、オイカワ、タナゴなどが繁殖になるとオスが婚姻色を出しますが、その共通点が挙げられます。私は、過去にアラバマレンボーシャイナーという北アメリカに生息する熱帯魚を飼育していましたが、彼らは、「ウグイ」の仲間に分類され、日本にもウグイがいます。コイというと日本を含めたアジアの魚のイメージがありますが、意外にも北アメリカにもいるものであることが、知っていても驚く点でもあります。


私が過去に飼育していた個体
五大湖の見て感じたことは、「日本と共通しつつ違う」ことが一緒に味わえるということです。パンプキンシードを代表にしたサンフィッシュ科は、北アメリカで独自に派生したが故に、日本との繋がりがないもののファットヘッドミノーのようなコイ科は、日本との繋がりを想起させる存在です。アメリカというと、日本から見れば、海の向こうで遠いイメージがあります。ただ、北アメリカと日本を含むアジアは、過去に「ローラシア大陸」として一つの大陸をなしていた時がありましたし、ある時は、ベーリング海峡が繋がっていた時がありました。そういう背景を知っていると展示されていた生き物から、日本を含むアジアとの共通点と相違点としての独自性が垣間見える展示でした。
5.太湖
太湖は、長江のデルタ地域にある中国で3番目に大きい湖です。太湖には、長江下流域と類似した魚類相を持ち、固有種はいません。ただ、2科108種が確認されており、魚類相が豊かであると言えます。
この湖の特徴でありつ琵琶湖と共通点の一つは、「稲作」と「漁撈」が一体化している点です。つまり、稲作と並行して淡水魚の利用が行われているということです。まず、稲作を行うには、水田が必要です。その水田は「人」から見れば稲の生産場です。しかし、視点を変えると水田そのもののあり方が変わります。それは、淡水魚の視点であり、水田は湿地帯になります。つまり、水田は、生息地であり繁殖地であり、水田が人為的に作られたとはいえ、魚側も人の創出した環境を利用しているということです。水田に水を入れるとそれに合わせて用水路が増水するため、用水路や水田へと魚が遡上するため、彼らを狙った漁撈が行われるということです。
魚類相と生態にも共通点があります。そもそもアジア圏の淡水魚は、コイ科に分類されるものが多く、彼らの多くは、春〜夏で雨などによって増水がトリガーとなって湖の沿岸地帯のエコトーンへ進出し、産卵するという生態をもっています。湖の沿岸に加え、その周囲に水田ができることで、人の意図せざる結果、水田が湖のエコトーンとして機能するようになったということです。しかし、これらの特徴自体は、太湖だけのものではなく、東南アジア、そして、日本でも共通してます。その上、稲作の起源地が、長江流域となり、太湖付近の遺跡からは、稲作に関する痕跡が見つかっています。琵琶湖や朝日遺跡と中国の遺跡で出土した魚の骨からどのような漁撈を行ったのかを復元した際、コイやフナの咽頭歯が多くみつかり、コイやフナを利用していたことは共通していたことがわかります。


*琵琶湖の漁撈活動、稲作が伝わってからの漁撈活動について過去に書いています。琵琶湖の漁撈活動についてはホンモロコを、稲作と水田漁撈については、朝日遺跡の記事をご覧ください。
しかし、太湖と琵琶湖には、「相違点」もあります。まず、種数と生き物の構成です。太湖には、24科108種の魚種が確認されているものの固有種は1種もいないそうです。一方の琵琶湖は57種の魚種で固有種が17種確認されています。琵琶湖の場合、500万年の歴史があり、過去にいた魚が琵琶湖に取り残されたもの(➡遺存固有種)と琵琶湖へ進出し適応したもの(➡初期固有種)などと固有種のでき方が、一様ではありません。
次に挙げられる違いは、魚種と生態です。当然、太湖には琵琶湖には見られない魚がおり、彼らの生態は琵琶湖の魚たちとの違いを持ちます。その違いとして、「ソウギョ」と「カワアカメ」が代表的です。彼らの持つ「産卵」が、日本のコイ科と大きな違いを持ちます。日本のコイ科の産卵は、増水した時の水草に卵をばら撒くスタイルが基本です。しかし、ソウギョやカワアカメは「水面に産卵」し、卵が孵化するまでは、川の水面を漂うという生態になります。日本だと河川の長さは短い上、流れは早いです。しかし、中国を中心とした大陸の河川は、長さが非常に長く流れは緩やかです。大陸の河川だからこそ、水面に産卵するという生態が成り立つということがわかります。(*日本だと水面に産卵しても利根川水系を除く河川では、海に流され、死んでしまいます。だから、彼らは定着しないのであり、特定外来生物にも指定されないのだと思います。)




ソウギョ・カワアカメは水面に産卵
*琵琶湖の固有種について詳しく知りたい方は、是非、こちらをご覧ください。タモロコとホンモロコの違い、琵琶湖の固有種の進化について書いています。
魚の知識を知っている身としては、展示されている魚は、日本のものとの「違い」が目立つかもしれません。しかし、日本と中国では、地理的な距離は、当然近いです。まして、過去は地続きでした。私は、「稲作」と「漁撈」を比較して違いがみられるものの日本と中国を繋ぐものがあるのだと改めて感じました。
6.東南アジアのメダカーメダカの分化とは?
ここでは、海外、インドネシアのスラウェシ島の古代湖のメダカについて紹介されていました。スラウェシ島には島全体で1000種以上の淡水魚とその内の約60種が固有種とされ、メダカ、ハゼ、サヨリで固有種が多いことが知られています。また、島には4つの古代湖があり、ここでは、トウティ湖のマーモラタスメダカとトゥティメダカ、ポソ湖のネブローサスメダカと二グリマスメダカが生体で展示されていました。



ここでは、古代湖であるが故に同じメダカでも「種単位」で違うメダカになっています。アジアの中でも特に東南アジアのインドネシアは、メダカのホットスポットであり、アドリアニクチス属の全種とメダカ属の約半数である24種がここに生息し、「固有種」になります。古代湖を含めた湖は、地殻変動でできた構造湖であるものが多く、そのような湖沼では、メダカが独自に進出して進化をしています。
また、東南アジアのメダカの展示は、生体だけでなく、「標本」も見所満載です。一つの湖に複数種のメダカが生息していることが分かるように展示されており、同じ湖でも種で違うメダカがいるのは、意外な一面でした。また、個人的には、ポソ湖のメダカが生まれる寸前の卵を抱えている標本が面白かったです。日本のメダカだと卵はすぐに水草に移すため、日本のメダカとの違いが印象的でした。


3種も展示されており、驚きました。

ここでは、メダカの進化についても紹介されていました。そもそもメダカは、インド、東南アジア、東アジアから40種ほどが知られており、そのほとんどが、熱帯に生息しています。メダカは、アドリアニクチスが祖先的となり、そこから小型化を伴いながら進化してきたと推測されます。その関係から、日本のメダカは、メダカの中で最も進化的で、温暖期に北へと分布を拡大したとされています。また、日本のメダカは、日本に1種だけの存在ではなく、東北地方の日本海側に生息するキタノメダカと北日本と太平洋側に生息するミナミメダカの2種に分かれます。その上、ミナミメダカも東日本や高知などと地域集団でさらに細かく分類され、展示パネルでは10集団で紹介されていました。種単位ほどではなくとも日本でもインドネシアのようなことが起こっていると分かります。また、日本のメダカの進化のあり方は、世界的にも最も北に進出した日本のヒラタクワガタと似ているなとも感じました。


*過去に種分化についてはヒラタクワガタで、メダカの地域性は土岐川観察館で書いているので、こちらも是非、ご覧ください。
7.まとめ
以上が、琵琶湖博物館で開催された企画展示「淡水魚から見る世界の湖沼」の内容になります。紹介したのは、一部だけです。ただ、魚を見て思うのが、日本に生息しているものとは違う生物だということが感じられると思います。地域によっては、日本との接点がないのもありますが、自然環境の違い故に生まれた違いでもあります。それは、日本に固有のマスの存在からも感じることができます。同時に日本と世界の湖を比較して共通する点も多かったです。中国の稲作漁撈、アメリカのコイ科、メダカの分化・・・などと生物同士での共通や接点などが挙げられると思います。日本の生物でしていることから繋げることもできると思います。
しかし、残念ながら、日本と世界の湖を比較した時、悪い意味でも共通点はあり、「環境破壊」が当てはまります。湖の開発や汚染も共通していますが、ここで挙げられていたのは、「外来種」です。琵琶湖では、減少傾向にあるブラックバスやブルーギルがその代表ですが、近年は、チャネルキャットフィッシュの琵琶湖への侵入を防がなければならないと関係各所が血眼になっています。五大湖ではウミヤツメ、ミャンマーのイシレー湖ではコイ、インドネシアではナイルティラピア、ティティカカ湖ではニジマスが、在来の魚への競合・捕食で問題になっています。外来種問題で最悪の事例が、ビクトリア湖の「ナイルパーチ」であり、ビクトリア湖に持ち込んだナイルパーチと並行した環境破壊によって、ビクトリア湖固有のシクリッドがおよそ500種類絶滅したという事例が実際に起こっています。ただ、外来種は産業での活用が目的です。つまり、生活のために利用するのであり、持ち込みそのものを否定することはできません。しかし、実際に問題が起こっているからこそ、駆除は必要であり、今後も利用をするのであれば、どのようにして管理外から外に出さないのか、その対策が求められます。

後ろのパネルは、外来種へ変わる湖の変遷です。



・生物や環境の保全は恩恵を受けるために行う
最後になりますが、生物を含めた環境の保全が求められる理由についてここで書いていきます。日本では、ビワマスとクニマスが日本固有のマスとして生息していますが、彼らは当然、利用されており、今日、昨日の話ではありません。ビワマスでは、延喜式にその存在が記述され、「あめのうおご飯」や「ますずし」が地域の伝統料理として食べ続けられてます。また、クニマスは、私が知っている限りで、江戸時代には利用されていたことが分かります。つまり、生物の利用には、文化と歴史があるということです。生物が絶滅することが、何故いけないのか?その答えの一つが、「私達が利用する」ためであり、それは食、医療、技術革新などとその目的は広いです。

この展示が行われる前後でウナギが、ワシントン条約で国際的な取引が規制されるのではないかということがニュースになりました。日本の見境ない利用が、海外にまで影響しているのが問題です。日本では明確に反対する声が大きかったのですが、「今現在」「私達だけが」食べれればいいのでしょうか?うぱさんは、ウナギの完全養殖の動画で、「養殖ウナギが食べたい」といいつつも「ウナギは食べない」とはっきり言っています。過去には、アワビの絶滅危惧種の指定で「今のうちに食べなければ」という声もありました。このような状況で日本は、生物を利用し続けることはできるのでしょうか?つまり、ウナギとの歴史と文化を次の世代に繋げることができるのかということで、ビワマスのような利用がこれからもできるようにあるべきだということです。まして、日本が、うぱさんにこういうことを言わせてしまう現実にしたことを恥じるべきです。私は、縄文時代の貝塚の出土品からウナギの骨を見たことがあり、それを考えれば、ウナギのこの現実が改善されてほしいと強く感じており、先程のビワマスやクニマスのことと合わせて考えてほしいです。ウナギは、ただおいしいだけの消費物ではないです。まして、日本はクニマスを絶滅させています。クニマスが絶滅したことで、利用する文化は断たれたといっても過言で張りません。クニマスのようなことを繰り返さないため、ウナギの消費のあり方は、もう大きく見直されるべきです。ビワマスやクニマスの現実は、話題になったウナギと共通すると思います。
ここで書いたことは、日本だけの話ではないです。世界各地の湖で、様々な生物との付き合い方があります。湖にいる生物には、確かに違いがありますが、違うものであっても歴史や文化を作っているということは、同じです。湖の生物や環境を保全する目的というのは、日本に限らず、歴史や文化を守ることに繋がるということも知っておくべきだと思います。
*ウナギについて知りたい方は、こちらから
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250719/k10014868311000.html
以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございます。次回もお楽しみに。
