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宝塚の妖精、きっとタカラジェンヌのお姉さん

あの夏、宝塚で出会った
「きっとタカラジェンヌのお姉さん」の話


あれは、たしか小学六年生くらいの頃だったと思う。

同い年の従兄弟三人で、今はもう無くなってしまった

宝塚ファミリーランドに遊びに行った日のことだ。

動物園を見て、乗り物に乗って、

子どもにとってはそれだけで一日分の冒険だった。

中でも、当時の僕らのお気に入りはボブスレー。
遠心力で身体が横に持っていかれて、
「うおおお!」と声が出るあの感じが、とにかく楽しかった。

テンションが上がったまま園内を歩いていると、

なぜか話題は宝塚歌劇のことになった。

当時自分にとっての「タカラヅカ」は、
正直に言うと、
女なのに男役?
厚化粧で目がギョロッとしてる?
なんか気持ち悪い
……そんなイメージしかなかった。

それを、まあまあ大きな声で語っていたと思う。

すると――
どこからともなく、髪の長い、清楚で綺麗なお姉さんが現れた。

「あなたたち、どうして宝塚歌劇が嫌いなの?」

びっくりした。
どうやら、話が聞こえていたらしい。

子どもだった僕は遠慮というものを知らず、
なぜ宝塚が気持ち悪いと思うのかを、
なぜか全力で力説してしまった。

お姉さんは怒らなかった。
それどころか、少しずつ、宝塚のいいところを話してくれた。

「みんな、すごく頑張ってるのよ」
「だから、応援してあげてほしいな」

話すうちに、お姉さんの熱がだんだん上がっていくのがわかった。

気になって、僕は聞いてみた。

「お姉さん、タカラヅカの人?」

するとお姉さんは、ちょっと笑って、

「知らない。私のことはいいの」

そう言って、それ以上は教えてくれなかった。

さすがに言い過ぎたと思った僕は、
「気持ち悪いって言ってごめんなさい」と素直に謝った。

するとお姉さんは、

「今日は三人で来てるの?」

「あ、従兄弟なんです」

「そう。気をつけて、楽しんでね」
「宝塚も、好きになってね」

そう言い残して、去っていった。

別れ際、
「もう少しお話ししてよ」と言うと、

「私は忙しいの!」
「またね。いつかタカラヅカも観てね」

そう言って、本当に行ってしまった。

帰り道、僕は思った。

――あの人、絶対タカラヅカの人やろ。
――めちゃくちゃ綺麗なお姉さんやったな。

男役も、娘役も、芝居も、大劇場のことも、
何ひとつ知らなかった子どもの頃の話。

芸名も分からない。
ただ「綺麗なお姉さん」という記憶だけが残った。

それから数十年。
ひょんなことから、タカラヅカを人生初観劇。

気がつけば、
今ではすっかり、どっぷり、ヅカファンである。

あの日、宝塚ファミリーランドで出会った、
きっとタカラジェンヌだったお姉さん。

その節は、ありがとうございました。

心から。


読んでいただきありがとうございました。


Published under 本を読むようにレーベル

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