日陰は束の間・2|掌編小説集「ゆうぐれドキ」#17
おれが外したシュートを金田がリバウンドで決めるたび、胸が濁る。仲間たちと同じように「ナイッシュー」とはどうしても言えない。胸が濁るにつれて、ボールの軌道は逸れていく。ダメなおれ。
「ここだけの話だけどね」
松井はおれの話を黙って聞いていた。話し終えた後も、特に返事はなかった。どうしてこんな情けないこと話しちゃったんだろ。恥ずかしい。
駅のホームは、ちょうど快速列車が出たばかりでがらんとしていた。おれの最寄り駅は普通列車じゃないと止まらない。
「金田はどう思っているんだろうな」と、松井が気のなさそうな声で言う。ベンチの隣に腰掛けた彼は、ぼんやりと駅の広告なんかを眺めている。
「おれが外すたびに内心ほくそ笑んでるんだよ、きっと」
おれは気恥ずかしさを紛らわすために、わざと荒っぽく言ってみる。
「なんとも思ってないんじゃない」
「そんなことねぇよ。金田のやつ、おれのこと馬鹿にしてるんだ」
脳裏に金田の姿が浮かぶ。誰よりも早く朝練に来て、ドリブルの音を響かせる金田。いつも掃除用具を最後に片付ける金田。
「僕はそんなことないと思うけどな」
「お前にはわかんないよ」
思ったより冷たい声が出たな、と自分で驚く。気まずくなって松井から目を逸らす。松井がおれの方に目を遣るような気配がした。
「僻むなよ。お前上手いんだから、もっと真面目に練習しろ」
松井は肘でおれの脇腹を突いた。腹の筋肉が驚いて、狼狽えるように震える。くそっ。でも、そうだよな。金田の目にはおれの姿なんて端から映っていなかったんだ。分かっていたはずなのに、悔しい。
駅のホームに普通列車が滑り込んできて、おれらはベンチから立ち上がる。
「そういえば、松井。お前いつも快速に乗ってたよな」
「別に急いでないし」と、素っ気なく言い捨てて、さっさと列車に乗り込む。いつもより広く見える友人の背中を、おれは追った。
〈了〉
最後までお読みいただきありがとうございます。はらとけいさん主催の「せりふ三題噺」に参加させていただきました。素敵な企画をありがとうございます。今回のお題はこちら。
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