日本の介護を「KAIGO」に変える3つの越境
現在、日本国内では介護人材不足が深刻な課題となり、介護の魅力を発信する取り組みが増えています。
僭越ながら、私が考える最も効果的な方法は、日本の介護福祉士が既存の枠を超え、海外に飛び出して新たな価値を生みだすことです。そのためには、3つの「越境」が必要になります。
1. 施設介護と在宅介護の越境
介護の本質を理解するには、施設介護と在宅介護の両方を経験することが不可欠です。施設介護では、介護士がルールを決め、統一された環境の中でサービスを提供できます。
一方、在宅介護では、その家庭のルールに従う必要があり、介護士は「アウェイ」の環境で適応力が求められます。これは、海外に出ても同じです。
在宅介護は、利用者の生活に深く入り込むため、日常生活支援の本質を学ぶには最適な場です。しかし、その家庭独自のルールに慣れすぎると、他の環境への適応力が低下するデメリットもあります。
両方の現場を経験することで、介護士としての汎用性と応用力を高めることができるのです。
2. 介護保険制度からの越境
日本の介護は介護保険制度と密接に結びついており、制度の枠内で成り立つ仕事になっています。しかし、介護を「KAIGO」に変換するには、この枠を超えた新しい価値を創造しなければなりません。
例えば、日本では1万円の介護サービスを、利用者負担1割の1,000円で提供できます。しかし、海外では同じサービスを提供するのに、利用者から1万円いただかなくてはなりません。
この違いによって、介護は福祉サービスから、質の高いケアを提供する「ホスピタリティ産業」へと変化が求められます。
この視点の変化は、日本の介護福祉士にとっても重要です。介護保険に依存しない介護のあり方を模索し、海外市場で通用するサービスを確立しなくてはなりません。
3. 日本の枠からの越境
日本の介護は、日本の文化や生活習慣に根ざしています。しかし、これを「KAIGO」として世界で価値を創造するためには、異文化に適応する力が不可欠です。
語学力はもちろん、現地の社会制度や価値観を理解し、柔軟に対応できる能力が求められます。
先日、フィリピンで介護施設経営を始める方から相談を受けました。その際、最も驚かれたのは、
「受け入れた利用者が利用料を払えなくなった場合、どう対応するか考えていますか?」という私からの質問でした。
日本では、施設の入居者が財政的に困窮しても生活保護があるため、施設を追い出されることはほとんどありません。しかし、社会保障制度が十分でない国では、サービス設計の段階で「利用料を支払えない利用者をどうするか」を考えなければなりません。
実際、フィリピンのある高齢者施設では、施設のオーナーが「利用料が支払えなくなった場合に、その高齢者を送り返す場所を把握しておくことが重要」と話していました。
このような違いは、日本の常識だけでは想定しにくいものですが、海外で介護を展開するためには避けて通れない課題です。
異文化への理解と適応力がなければ、どんなに「KAIGO」という言葉を使っても、その言葉の意味に曖昧さが拭えないはずです。
「KAIGO」に到達するために
三つの越境なくして、介護を「KAIGO」にモデルチェンジして、世界で活躍するのは困難です。
では、私自身は「KAIGO」を十分に理解しているのか?と問われれば、まだその域には達していないと自覚しています。現段階では「漢字の介護」から「ローマ字のKAIGO」に至る過程の「カタカナのカイゴ」といったところでしょうか。
本当の意味で、グローバルで通用する「KAIGO」に到達するには、海外で外国人を対象に介護を実践し、新たな価値を生み出し、外貨を獲得することです。
そのためには、語学を学び、介護の技術・理念・専門知識を異文化に適応させる能力が求められます。
決して簡単な道のりではありませんが、これら三つの枠を超えて海外で介護を通じて価値を生み出せたとき、介護福祉士の対象は日本の1億2千万人から、世界の80億人へと広がります。
これこそが、介護という仕事の本当の魅力を示す最良の方法ではないでしょうか。

