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介護士はたくさんの靴を履こう

昨日、介護職の専門性についての3時間セミナーを行いました。参加者は、介護士を志すフィリピン人55名です。

半数は日本での就労を目指し、残り半数は中東、カナダ、オーストラリア、台湾、香港、あるいはフィリピン国内と、進路はさまざまです。

英語を話し、世界中で働く選択肢を持つフィリピン人ケアワーカーたちに、少しでも日本の介護に興味を持ってもらえたら――そんな思いで登壇しました。

さて、日本では介護職は「日常生活を支える専門職」として確立しています。

しかし、世界ではまだこの認識が一般的ではありません。だからこそ、世界に出て日本の介護を広げるためには、「日常生活を支えるとはどういうことか」を丁寧に伝える必要があります。

とはいえ、「認識がないことを認識してもらう」のは、とても難しいものです。なので私は、グループワークやアクティビティを通して、受講生たちに気づきを促す仕掛けをあれやこれやと準備しています。

たとえば今回のワークでは、「実際に介護を受けながら生活している方の事例」を紹介し、彼らの日常を想像して、「ある1日のスケジュール」を書いてもらいました。

結果、ほとんどのグループがこう書きました。

6:00 起床介助
6:30 トイレ誘導
7:00 牛乳を与える
7:30食事を配膳する
9:00 口腔ケアと整容介護
10:00 デイサービスへ送迎

これは、完全に【介護職側】のスケジュールです。

一方で、利用者の視点に立てば、こうなります。

6:00 起床
7:00 食堂へ行き、牛乳を飲む&朝食をとる
9:00 デイサービスへ行く準備をする
10:00 デイサービスに行く

介護職の都合に利用者を合わせるのではありません。利用者の「暮らし」に、私たち介護職が合わせていくのです。そこに、介護職の専門性があります。


今回のセミナーでは、あえて「間違える体験」をしてもらいました。「自分たち本位で生活を組み立てていた」ことに気づいてもらうための仕掛けです。

さらに、介護職が利用者の日常生活にどれほど深く関わっているかを、付箋ワークで“見える化”しました。


受講生たちは、自分たちが「利用者の暮らし」と密接に関わる職業を目指しているのかを、視覚的に理解するための仕掛けです。

英語には、相手の立場になって考えることを「put oneself in someone's shoes」(誰かの靴を履く)と表現します。

まさに、介護職は、利用者の靴を履くことが求められます。

さらに、プロの介護士を目指すのであれば、利用者の家族、地域で暮らす人々、他の専門職の靴も履きながら、多角的な視点で「生活」を支えていく専門性が必要です。なぜなら、生活を支えるために関わるステークスフォルダー(関わるすべての人たち)は、多様だからです。

たくさんの他者の靴を履ける人は、たくさんの気づき得て、それゆえ、たくさんの優しさを持ち合わせています。

私が「この人はすごいな」と感動する介護士は、例外なく、たくさんの靴を履いて、物事を多角的に考えられる人です。

たった3時間のセミナーで、このすべてを伝えるのは難しいでしょう。でも、きっかけだけでも届けられたらと願っています。

そして、日常生活を支える専門職である、日本の介護に興味を持ってくれたのなら、私は自分に◎を与えたいです。


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