家族信託の契約当日、公証役場で親だけが呼ばれた話
「お父様、お母様には、このあとお一人ずつお話を伺います」
家族信託(親の財産を、家族が代わりに管理できるようにしておく契約)の契約当日、公証役場でいちばんどきっとした一言です。
親が、私から離れた場所へ、1人ずつ呼ばれていく。
(大丈夫かな。変なことを言って、契約が止まったりしないかな。)
高齢の親を公証役場(公正証書という法的な書類を作ってもらう公的な機関)に連れて行くのが不安な方へ。今日は、うちの契約の日がどんな様子だったかをお話しさせてください。
🟩 契約の日の朝
冬の朝9時、父と母と私の3人で、駅前に集合しました。
親はふたりとも、いつもよりじゃっかんパリッとした服装でした。父はジャケットの上にダウンらしき上着を羽織っていて、ちょっとしたよそ行き感があります。
ああ、親なりに、今日という日を構えて迎えているんだな。
そう感じた一方で、道中の会話はたわいのない世間話だけでした。
このアンバランスさが、妙に印象に残っています。
🟩 パーティションの向こう側
役場に着いて、担当の公証人の先生からひととおり説明を受けます。話の長〜い先生で、ここでちょっとした事件も起きたのですが、それはまた別のお話。
説明が終わると、冒頭のあの一言です。
まず父が、フロアの端にあるパーティションの向こうへ消えていきました。本人が自分の意思で契約するのか、それを本人だけに直接確認する時間なのだと、事前に専門家から聞いていました。
姿が見えない数分間、私は席でそわそわしていました。
(いま、何を聞かれてるんだろう。詰まってないかな。)
隣にいた専門家の方と小声で雑談しながら、気を紛らわせます。
数分後に父が戻ってきて、母と交代。
ふたりとも、こちらが拍子抜けするほど普通の表情でした。
🟩 終わってみれば
そのあとは署名と捺印がしばらく続いて、手続きは終了です。
役場を出た親は、心なしかさっぱりした顔をしていた気がします。「気がします」と書いたのは、正直あまり覚えていないからです。記憶に残らないくらい、あっさり終わったんです。
別れ際の会話は、これだけでした。
「じゃあ、これから口座開設してくるね」
「お疲れさまでした」
親の役目は、この日でおしまい。子どものほうは、預かった財産を管理するための専用口座づくりなど、銀行での手続きがもう少し続くんですけどね。
🟩 数年たって、気づいたこと
実はこの日のことを、親が話題にしたことは一度もありません。
私にとっては、何ヶ月も準備を積み上げてきた一大イベント。でも親にとっては「サクッと終わった、普通の一日」だったようです。
最初はちょっと寂しい気もしました。でもいまは、これでよかったと思っています。
親の記憶に「大変だった日」として残らなかった。あの朝、よそ行きの服で構えて来たはずの一日が、です。それだけ親の負担が軽かった、ということですから。
種明かしをすると、その日がここまであっさり進んだのは、専門家の方が事前に段取りを整えてくれていたおかげでした。私たち家族がやったことといえば、ほぼ署名と捺印だけです。
もし親を公証役場に連れて行くのが不安なら、当日を頑張ろうとするより、当日までに任せられる人を見つける。私の結論は、これです。
当日の詳しい流れや持ち物、親がそれぞれ何を聞かれるのか、そして話の長〜い先生とのやりとりの顛末は、『親の終活×家族信託の体験談、いつかやろうじゃ遅い!』のStep11に置かせてください。
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次回のnoteは、「専門家ってどうやって選んだの?」の話を書きますね。実はこれ、いちばんよく聞かれる質問なんです。よかったら参考にしてみてください。
※本記事は私個人の体験に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。公証役場での手続きや確認の内容はケースによって異なります。実際の検討にあたっては専門家にご相談ください。
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