【小説】怪異は連鎖する 第八話
林間学校の怪異
学校に入学して直ぐのこと。一つ目の学校行事がやってきた。林間学校の宿泊だ。一学年全員で林間学校に一泊し、学年の仲を深めようという目的の行事だった。
一年生全員でバスに乗り込み、隣の県にある林間学校へ向かった。
二時間ほど走ったところで施設に着いたのだが、山の中にあって周辺には何もなく、携帯の電波もギリギリ入ったり…入らなかったりという場所だった。施設の建物自体は想像していたよりも大きかった。
部屋は名簿順に振り分けられ、一部屋8人で二段ベッドで寝るという形式だった。
日中はホールに学年全員が集まって、自己紹介をしたり、動物愛護について考えたり、エントリーシートの書き方を学んだりといった授業を受けていた。
夕方、この後は食堂で夕食の時間となるが、それまでの時間は自由時間にすると先生に言われた。私は友達のSちゃんと外に出てみることにした。
裏手に回ってみると広場があり、水場と炊事場があったため、明日の野外炊飯(定番のカレー)はここでやるんだねということが分かった。
外をふらつくのにも飽きて、再び施設の玄関に戻ると、そこには男女数人の生徒が屯していた。
「外見てきたの?」
「何かあった?」
私たちに声を掛けてくれたので、裏に炊事場があったよ。と明日のことについて話していると、そこに施設長のおじさんが通り掛かった。
「自由時間かい?」
「そうなんです。夕食まで自由にしていて良いということで…」
それからは学校のこと、ペットのことなどの話題で施設長も交えて雑談を楽しんだ。
すると、私たちの楽しそうな声に釣られたのか…また一人、また一人と生徒が集まって来た。
そしてそんな時だった。施設長が今日はどの部屋に泊まるの?と突然聞いてきた。
「私たちは205です。」
私とSちゃんは同部屋である。
「俺たちどこだっけ?やべ、忘れちゃった」
「307だろ!馬鹿!」
男子生徒がケラケラと笑っていると、施設長が薄笑いを浮かべながら問いかけてきた。
「この中に202に泊まる人はいないの?」
その質問に生徒同士が顔を見合わせる。その雰囲気には誰かいる?という確認と、何故そんなことを聞くのだろう?という戸惑いも混ざっていた。
誰も口を開かなかったので、再び施設長が喋り始めた。
「ここの噂、聞いたことない?みんな県外の子たちだから分からないかぁ…。実は202号室にね…'出る'んだよ」
「え、もしかして…お化け?」
聞き返しながらも私はそんなベタな話ある?と思っていた。林間学校のある部屋には幽霊が出るだなんて…ベタ中のベタ、超定番の怖い話ではないか。
施設長は薄笑いを浮かべたまま、私の問いに頷いた。
「そこに泊まった人がね、よくそんなことを言ってくるんだよー。
いや…まぁでも、そんな怖いもんじゃないよ?なんかね、寝ていると髪の長い女が上に乗ってくるんだって!それだけだから!」
なんのフォローにもなっていない…。めちゃくちゃ怖い話だ。
「えぇーー!」
「キャー!やだー!」
生徒たちが口々に叫んで怖がりだす。そんな中、叫ぶこともせずずっと黙っていた女子生徒がいたのだが、その子がポツリと呟いた。
「私…その部屋に泊まるんだけど…。」
一瞬、その場が静まり返ったが、直ぐに施設長がただの噂だよ!と笑いながら言った。それに続いて周りの生徒も、そんなの嘘だよ!怖がらせて楽しんでるだけでしょー!と笑い飛ばしてその場を和ませた。
ここで夕食の時間が近付いているのに気付き、施設長とは別れて食堂に向かうこととなった。
向かいながら、私はSちゃんに話しかけた。
「林間学校に幽霊が出るなんて、都市伝説レベルの話だよね。」
「よく聞くよね(笑)絶対嘘でしょ。」
「でもさ、施設長だよ?そんな立場の人があんな具体的な嘘を付くもの?何のためにそんなことするんだろうって思わない?」
「うーん。メリットない。…本当だったりしてね?(笑)」
そんな半信半疑の怖い話であったが、友達同士で楽しく夕食を食べていると、そんな話はすっかり忘れてしまった。
その後、部屋毎に順番にお風呂に入り、部屋に戻ると既にお風呂を終えた生徒たちが手洗い場付近に集まって歯を磨いていた。
私たちもそこに加わって歯磨きをしようと準備をしていると、そちらから「わぁ!」と大きな声が聞こえた。
なんだろう?何かあった?と同部屋の皆でそちらへ行ってみると、その大きな声を出したであろう子が焦ったような様子で、それを他の子が茶化している状況だった。
同部屋の子が声をかける。
「なになに、どうしたの?」
「分かんない!この子がさぁ、急に叫ぶからびっくりしたよ(笑)何?どうしたの?」
「だって、みんながトイレに行っちゃったからさ、私も行こうと思って口をゆすいでたの。終わって、鏡を見たら私の真後ろに誰か立ってたんだもん!!」
「えー?絶対見間違いだって(笑)」
「本当にいたんだって!私の後ろにいたから、全体が見えたわけじゃなくて頭と肩が見えたくらいだけど…。」
「顔も見えなかったの?」
「見えない。けど、髪の毛の雰囲気からして女だと思う。だから私も普通に生徒の誰かが後ろに来たんだと思って…。大きな声出して申し訳なかったなって振り返って謝ろうとしたら…誰もいないし…。」
「本当にみんなは、トイレに行ってたの?誰も一緒にいなかったの?」
「いなかった。でも私は順番待ちで個室には入っていなかったから、声を聞いて直ぐに廊下に出たけど…他の子はいなかったんだよね。」
歯磨きをしていた手洗い場の右横にトイレはある。トイレの扉を開ければ手洗い場が見える。叫び声を聞いて直ぐに扉を開けたが、そこには友達が一人立ち尽くしているだけだったとのこと。
私は施設長の話を思い出した。だが、その話では寝ている時にやって来るという話だったわけで、この件とは関係ないか。と思い直した。
結局、見間違いだということでその場は収まったが、体験した子は不服そうだった。
私たちも歯磨きとトイレを済ませて部屋に戻ったのだが、部屋に向かっている最中に小声でSちゃんが話し掛けてきた。
「さっきの子たちさ…泊まる部屋どこだと思う?」
「そういえば聞かなかったね。分からないな。」
「202だよ。」
私は思わず立ち止まってしまった。
「嘘でしょ?」
「施設長と話してた時に自分は202だって言ってた子いるじゃん?その子がいたもん。
トイレにいたから最初はいなかったけど、途中で出て来たよ。」
一部屋8人であるから、その場にいたのは16人。私は叫んだ子の近くにいたが、Sちゃんは後ろにいたため全員が見えていたそうだ。
途端に半信半疑であった施設長の話に真実味が出た。
その夜、私たちは全員熟睡して何事もなく朝を迎えた。
202号室の様子が気になったが、夜は特に何事もなく、平和だったそうだ。
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