【小説】怪異は連鎖する 第七話
盛り塩の怪異
分校の怖い噂で盛り上がっていた私たちだったが、何とか全員無事に研修を終えることができた。
研修を終えると、分校の話をすることも徐々になくなっていったのだが、其々が就職先に内定をもらい就活が落ち着いた頃。
もう一度、分校へ研修に行くこととなった。今回は同時期に就職先に研修に行く生徒もいたので、名簿順というわけにはいかず前回と通う順番で研修に通うことになった。
すると、そう言えば怖い噂があったよね?と自然とまた話題に上がるようになってきた。
そして今回の研修中に強烈な怪異が巻き起こる。
先に研修へ行った友達がこんな話を持って来た。
3日間通う研修のうちの2日目のことだ。実習が終わり掃除も終えたところで、Sさんを含め先生方数人と雑談をしていた時だ。
Sさんが寝不足だと言うのでその理由を尋ねると、最近寝ていると金縛りに遭うのだと言う。そして、金縛りが解けると何故か眠気が全く無くなってしまい、テレビを観たり携帯を弄ったりしてしまうため、寝不足なのだとか。
友達と先生方は「やだー!怖い話しないでよ!」と怖がったそうなのだが、Sさんは「怖くはないよ。金縛りに遭うだけだから!」とあっけらかんとしていたそうだ。
しかし、次の日。その怪異は起こる。
朝礼を終え、実習の準備をしているとSさんがやって来た。
「ちょっとー!勘弁してくださいよー!!流石にそれはキツイですって!」
などと、苦笑いしながら大声で友達に言ってきたそうだ。何のことか全く理由が分からず返答に困っていると、Sさんは更に捲し立てるように話す。
「だって昨日の話はあなたとした話じゃん!そういう悪戯良くないよ?駄目だよ。」
大声で話すSさんのもとに、どうしたのかと先生もやって来た。Sさんは先生にも訴える。
「え、先生じゃないですよね?そんな子どもみたいな嫌がらせ流石にしないですよね?」
「何が?全く分からないんだけど。」
「ですよね。先生方ではないと思ってるんですが…。」
「私も分かりません!何もしてません!」
友達も否定すると、Sさんは黙り込み多少は冷静になったようだったが、怪訝な表情を浮かべていた。
もう一度、何があったのかと先生が尋ねるとSさんが話し始めた。
「今日、実習室に向かおうと階段を下りていたら…階段に盛り塩がしてあった…。
昨日金縛りの話をしたから、俺を怖がらせてやろうと生徒が悪戯で塩を置いたんだと思って。」
友達も先生もこれには戦慄してしまったそう。
先生は、生徒たちのなかにそのような悪戯をする子はいないし、勿論先生方もそんなことをするなんて有り得ないと言った。
友達も、悪戯のためにわざわざ電車の時間を一本早めて人のいない時間に来たり、わざわざ家から塩を持って来るなんて有り得ないと言った。
それから念の為に先生は生徒全員に向けて、階段に悪戯をした人がいたら直ちに片付けるように!と注意した。
しかし、生徒たちは「何のこと?」といったリアクションで、名乗り出る人や片付ける人は現れなかったそうだ。
友達は怖くて盛り塩を見に行くことは出来なかったという。
こうして、かなり不気味な体験をしてしまった実習は終わったのだが…問題は次に研修に行く人。…それはKちゃんだ。
「最悪なんだけど。」
あからさまに不機嫌になるKちゃん。
「Kちゃん階段見てきてよ!」
「何なら四階に行ってさ、様子見てきてよ!」
「写真…いや、動画か。何か映るかもしれないし撮ってきて!」
勝手なことを次々と言いまくる友達たち。
「ぜっっったいに、嫌だ!!」
断固拒否のKちゃん。
何事もなければいいが…。翌日から、Kちゃんは研修へと向かった。
それから3日が経ち、本校に戻って来たKちゃん。
早く話を聞きたいとワクワクしながら友達たちと一緒にKちゃんのもとに集まった。
「どうだった?盛り塩あった?」
私は怖がりのKちゃんのことだから、見て来ることは出来ないだろうなーと思っていたのだが、分校の友達の1人に付き添ってもらい、何と階段を見たのだと言う。
「あったよ。それっぽいの。なんか上から1〜3段と、下から1〜3段の四隅に塩っぽいものがあった。」
「本当に塩なの?」
「分かんない。だけど、粒が少し大きめで砂糖なんかとは少し違うような…。」
「階段に盛り塩っていうのも不思議だよね。何かが上がってくるのを防ぎたいとか?」
「いや、下りてくるのを防ぎたいんじゃない。」
ぎゃあー!!と友達が叫び出す。誰が何の目的でやったのか?幽霊は塩を操れたりするのだろうか?真相は分からない。
次に分校へ行く人で研修は最後となる。
その最後の人とは…私だ。
「これはもう、四階に行くしかないって。」
と皆に言われた。
「えー?」などと口では言いつつ、実は私は興味津々だった。
謎の盛り塩。見てみたいではないか。
研修1日目。残念ながらSさんは他の店舗に研修に行っているらしく、この研修中に会うことはできなかった。そこでKちゃんが付き添ってもらったという分校の友達に私も声を掛けてみた。
「私も塩を見てみたいんだけど…。」
「あんたも!?好きだねー…。でも、先日の大掃除で片付けてしまったよ。1年生が掃除してたと思う。残念だったねー。」
「えぇ!12月の大掃除か…。じゃあもう無いってことー?」
「無いんじゃない?」
「じゃあそれでもいいや。取り敢えず掃除が終わったら付き合ってよ。」
呆れていた様子だったが、何とかお願いすることができた。
しかし…塩は片付けてしまったとのことで、ガッカリだ。Sさんもいないしタイミングが悪い。
そして掃除を終えて、待ちわびたその時がやってきた。
友達に声を掛けて、2人で階段へ向かう。その階段は普段生徒が使う階段とは別で、住み込みの人が使っている階段なので生徒は馴染みがない。私も初めて行く。
実習室を出ると、小さな空間になっており左には外に出られる裏口が。右にはまた扉があり、そこを開くと目の前に階段があった。
電気を点けて、1〜3段に注目して見る。
すると…掃き残してしまったのだろうか…塩が少し残っていた。
ほうきで掃いたのだろうから、四隅というよりは四辺の縦二辺に塩が残っていた。
「これ…塩なの?」
「分かんないよ。味見してみるしかないんじゃない(笑)」
「絶対無理。だけど、塩に見えるよね…」
Kちゃんの言う通り、3段目までそれはあった。そして、階段を上がっていくと最後の3段から再びそれが見られたのであった。
塩は確認できた。
しかしもう一つ、確認したいことが私にはあった。
「このまま四階まで行きたいんだけど…。」
友達は呆れながらも付いて来てくれた。他の階段には塩は無かった。
初めて足を踏み入れた四階は、とても薄暗かったが特に何かがあったわけではなかった。
「何も無いね?」
「だから何も無いってば。何を期待してんだよ(笑)」
すると友達は、ある一室の扉を開けてそのまま入って行った。私は慌てて追いかける。
「え!?鍵開いてるの!?」
「Sさんの部屋はここじゃないからね。他の部屋は開いてるんだよ。別に中は普通の和室だけどね。」
部屋を覗き込むと、確かに至って普通の和室のワンルームであった。
この一室と、もう一室見たのだが特に違和感などは無かった。
こうして、分校の探索は幕を閉じた。
因みに四階の探索中は携帯で動画を撮っていたのだが、そこには何も映っていなかった。残念だ。
研修の3日目。最終日。
分校とはいえ、研修は研修なので1日の終わりには報告書を書かなくてはならなかった。
いつも通り二階の休憩室で書こうとしたのだが、二階に来たところでトイレに行きたくなってしまった。二階にもトイレはある。
しかし…曰く付きの場所である。少し悩んだ末、一階に戻って済ませた。
再び休憩室に来たのだが、電気を点けた途端に蛍光灯がバチバチッ!っと激しく点滅したので驚いた。かなりの不気味さだ。
日中は普通に点いていたよね?と暫く見つめていると、点滅が収まって問題なく点灯した。
この場に1人でいるのが堪らなく怖くなったので、早急に作業を終わらせてその場を後にした。
これで、私の研修は終了した。
具体的に何がいるのかは分からないが、分校には確実に何かがいる。
因みにSさんだが、研修に通っていた店舗にて就職が決まっていたそうなのだが、その内定を蹴ってしまい、いつの間にか学校を出て行ってしまったとのことである。消息不明だ。
これが、分校での怪異の全てである。
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