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【小説】怪異は連鎖する 第六話



もう一つの学校の怪異


さて、私の通う学校で起きた怪異をお話したが、実はもう一つ学校があった。分校というものだ。
そこはトリマーの勉強に特化した学校であり、学生だけでなく社会人も通える学校になっていた。
私たちの学校からは4駅分離れている。
校舎はかつて下宿屋として使われていたらしく、一階が実習室となっており、二階がキッチンとお風呂、三階は教室、四階には六部屋ほど個室が備わっていた。

生徒が主に使うのは一階と二階。
三階の教室は朝礼や点呼の際に使うだけで、朝に一度入るもののそれ以降は入ることがなかった。勉強内容も実習しかなかったため教室の席に座ることすら一度もなかった。
二階のキッチンスペースの横には長机を幾つかくっつけた広い机と椅子、その奥には三畳ほどの小さな畳のスペースがあったため昼食を取る休憩室として使われていた。

二年生になり就活がスタートする夏、私たちトリマー科はこの分校に研修として一人3日間行かなくてはならなくなった。
全員で行くにはキャパシティが足りないので名簿順に其々3日間通う。

すると、分校に通った友達が変な噂を聞いてきた。
なんでも、分校に通っている社会人のSさんが少し霊感があるらしく学校には幽霊がいると言っているらしい。
前述した通り、もともと下宿屋だったため個室がたくさんある。その一部屋をSさんは借りて、学校に住み込みしつつ(正に下宿)勉強をしているそうなのだが…部屋にいると怪奇現象に見舞われるそうなのだ。

そんな話を持ち帰ってきたものだから、私たち本校もその話題で盛り上がった。
どんな現象があったのか聞くと、ラップ音とポルターガイスト現象は日常茶飯事ということで、テレビが勝手に消えたり、机の上のペットボトルが勝手に倒れたり、本のページが勝手に捲れたり…といったことが起こるのだそう。

怖がりな友達…Kちゃんを含めた数人は怖い!行きたくない!と騒いでいたが、反対に私は興味が湧いてしまった。
確実に現象が起きている、そんな場所に行く機会なんて今後ないかもしれないし…ちょっとワクワクしてしまう。
 
 
そしてついに私の番が回ってきた。実習が始まる前に学校の生徒には朝礼で、そこに参加しない社会人の生徒には実習の準備中に挨拶をしてまわった。
その中にSさんもいた。小柄で細身の男性だった。流石にいきなり体験談を聞くわけにはいかないので、この時と実習中は我慢した。
そして実習が終わり掃除の時間に入ると、話を聞くチャンスが巡ってきた。

掃除をしながらSさんが話しかけてきてくれたのだ。どこ出身なの?などと雑談をした後、思い切って聞いてみることにした。
「先に研修に来た友達から聞きましたよ!ここに住んでいらっしゃるんですよね?何か不思議なことが起こるとか…」
「不思議なこと?…あー!そういえば喋ったね。何、噂になってるの(笑)」
「はい(笑)お化けが出ると聞きました!よく一人で居られますね…怖くないんですか?」
「いやー、そんなに怖くないよ。だって音がしたり、物が動くだけだもん。あ、でも寝る時は手とか足は布団から出さないようにしてる。手を引っ張られたことがあったから(笑)でもそのくらいだよ?」
笑いながらサラリと言われたが…手を引っ張られるって「そのくらい」で済ませて良いものなのか…。
「いやいや、それ十分怖いですから…」
私が突っ込むと、また笑っていた。

私はもう一つ、気になっていたことをSさんに聞いてみた。
「この実習室は雰囲気は普通だと思いますけど…でも、ここもヤバいんですか?」
「いや、俺の感覚だとここは大丈夫。でも二階から上はちょっと良くないかな。」
しまった。聞かなければ良かった。二階は利用頻度が高いというのに…。
私はホラー好きで好奇心も旺盛だが、そのわりにビビリなのである。
私の怯えた感情が伝わったのか、Sさんは気にしなくていいよ、大した事ないから!と笑って言った。

そんな話をしていると、先生がやって来たので話を振ってみた。
「先生もSさんの話聞きましたか?」
「何、またそんな話してるの!Sさん生徒を怖がらせないでくださいよ!」
「えぇー、僕のせい?だってみんな聞きたがるんですもん。」
くだらない話をするな、という雰囲気だったので先生は何か体験したことはないのかと聞いてみたが、そんなものはないと言われてしまった。
今いる先生方の中では一番長く勤めている先生だったので少し期待したが、特に不思議な体験はないそうだ。
「ほらほら、早く掃除して帰りな!研修報告書も忘れないようにね!……あ、でも強いて言うなら夜遅くまで残りたくはないかな。」
最後にボソリと呟いた。
「それどういうことですか!?」
詳しく聞こうとしたがはぐらかされてしまい、先生は去って行ってしまった。

その後、私は研修報告書を書くために二階に行ったのだが、電気を点けているのに薄暗く感じる空間に寒気がして、早めに作業を終わらせた。
 
 
私はSさんから聞いた話を本校の友達にも伝えた。
「確かに二階っていつ行っても薄暗いよね。」
「いや、三階もじゃない?窓がたくさんあるのに、曇ってるのかなってくらいにいつも暗いよね。」
「もう二階行きたくないんだけど…。」
みんなは口々に話していた。

研修は私の次の人に順番が移ったわけだが、その子がまた新たな話を持って来た。
「先生から怖い話聞いたよ!」
なんと私が話を聞けなかった先生から、体験談を聞けたというのだ。やはり体験はしていたということだ…私には言ってくれなかったけど。
 

 
その体験とはこうだ。
二階の休憩室の手前にはトイレがある。個室が三つあって、一つは掃除用具で残りの二つがトイレとなっている。
生徒たちが登校してくる前の、朝の出来事である。
このトイレを使おうとした先生は扉を開けたまま中に入り、個室へ入った。
用が済み、手を洗った後に出ようとして扉に目を向けると、開けたままにしておいたはずの扉が閉まっているではないか。
ゾッとして慌てて飛び出し、一階の職員室に駆け込んだがまだ一人として出勤して来てはいなかったそうで、校内にただ一人きりという状況だった。
(この時は下宿している社会人もいなかった)

そんな体験をしたが、たまたま扉が勝手に閉まってしまっただけなのかもしれない!と考え、驚くことに先生は再度トイレを使ってみたのだという。
今度は扉を開けたままにするのではなく、閉めて入ったそうだ。
用を足して、個室を出て扉を見てみると…
なんと…扉は開いていた。

今度は、閉めたはずの扉が開いていたのだ。

これには心臓が止まりそうになったと言う。
一度目の経験なら、扉がたまたま閉まってしまったのだと、そう思うこともできた。だが…ニ度目の経験は…説明がつかない。それまで幽霊は否定派だった先生だが、いるのかもしれないと考えるようになった。
それ以来、先生は二階のトイレを使うことはなくなったのだそう。
そして実は、この体験は分校の生徒数人に話したことがあったようで、それは次第に分校内に広がり今では二階のトイレを使う人はあまりいないのだそうだ。

「えー!私、使ってしまったよ!」
研修中に私は二階のトイレを利用していた。誰か教えてよ!とも思ったが、研修に来ている人にわざわざ教える人はいないだろう。
何事もなかったから良いのだが。それでも、私も二階のトイレを利用することは止めた。
 
 
ここから更に、分校での怪異は続いてゆく。

#創作大賞2024  #ホラー小説部門

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