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【デッドレコニング】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

#ネタバレ

結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。

登場人物
イーサン(トムクルーズ):IMF諜報員。凄腕すぎて政府から危険視される。
イルサ(レベッカファーガソン):元MI6諜報員。イーサンが愛する女。
ベンジー(サイモンペッグ):イーサンの同僚。
ルーサー(ヴィングレイムス):イーサンの同僚。天才ハッカー。
グレース(ヘイリーアトウェル):通りすがりの凄腕スリ師。
ガブリエル(イーサイモラレス):エンティティの指示で動く謎の男。
パリス(ポムクレメンティエフ):ガブリエルの部下の美しき殺し屋。
ホワイトウィドウ(ヴァネッサカービィ):裏社会で暗躍するブローカー。
キトリッジ(ヘンリー・ツェニー):CIA長官。IMF監査官。
デンリンガー(ケイリー・エルウィス):アメリカ合衆国国家情報長官。

監督:クリストファー・マッカリー
2023年製作/164分/G/アメリカ
原題または英題:Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One
配給:東和ピクチャーズ
劇場公開日:2023年7月21日

まずは、物語を三幕8場構成に分解します。

一幕
 一場:状況説明
 二場:目的の設定
二幕
 三場:一番低い障害
 四場:二番目に低い障害
 五場:状況の再整備
 六場:一番高い障害
三幕
 七場:真のクライマックス
 八場:すべての結末

参考:ハリウッド式三幕八場構成

一幕

1-1:状況:イーサンに鍵の回収命令;砂漠でイルサを捜索

1-2:目的:イーサンはIMFの命令を無視してエンティティ破壊を決意

二幕

2-3:障害:アブダビの空港(スリ女に鍵を奪われる)

2-4:障害:ローマ市街(スリ女に再び逃げられる)

2-5:状況:イルサ再会;死の覚悟

2-6:障害:ヴェニスのナイトクラブ;イルサOUT;スリ女IN

三幕

3-7:佳境:オリエント急行(ホワイトウィドウから鍵を奪う)

3-8:結末:スリ女IMF加入;イーサンは鍵を持って逃亡

TO BE CONTINUED…

▼解説・感想:

●構成

基本的には《なんでも先回りで計算できる超天才AI》が次々と一見意味不明な指示を出し続けて

①その指示通りに動くガブリエル達
②その危機から毎回とりあえず逃げるイーサン達
③そもそもイーサンが米国政府の命令を無視してるので追いかけるCIA
④なぜか鍵を狙う正体不明のスリ女(&その雇い主)
⑤鍵を使って世界の覇権を握ろうと暗躍する人達(米国政府など)

の5つの勢力が、それぞれの思惑で動いて起こすほぼバタフライエフェクトレベルの偶然とラッキーが重なって物語が奇跡的に収斂していく、という非常に難解な物語になっています。論理的に考えるほどバカを見るでしょう。

そんなことある?
いや、なっとるやろがい!

なんか映像はすごいけど、そもそも何してんの?
実はこういうことでした〜!(後出しドヤ顔)

の繰り返し。正直、しんどいです。(笑)

見せ場の数とか、時間配分とかは、ハリウッドの基本通りです。まあ、全体的に上映時間こそ長いですけど。

●物語の解析

あえて厳密に(なるべく論理的に)解説してみましょう。

1-1:状況:
イルサ:鍵を盗んで身を隠す。イーサンがきっと来てくれると信じて。
ガブリエル:殺し屋(パリス)を雇ってイルサを探す。
イーサン:鍵の回収指令を受けて、殺し屋を尾行してイルサを見つける。

1-2:目的:
エンティティ:世界中のシステムに侵入する。
米国政府:エンティティを制御するソースコードが欲しい。
イーサン:米国政府も危険と判断して、エンティティ破壊を決意する。
イルサ:実はイーサンが逃してました。君は死んだ!(=dead reckoning死んだも同然

♪〜スパイ大作戦のテーマ〜♪

2-3:障害:
イーサン:バイヤーに売るためにベンジーとルーサーと空港へ行く。売った後でバイヤーを尾行して鍵の利用方法を突き止める作戦。
エンティティ:フェイク爆弾でイーサンのチームを翻弄する。
ガブリエル:殺し屋(パリス)を雇ってバイヤーを殺す。
米国政府:CIAを派遣してイーサン逮捕を目論む。(失敗)
グレース:鍵を盗みローマ行きの飛行機に乗る。


エンティティは先読みしまくって「バイヤーを殺せ」とガブリエルに命令し、ホワイトウィドウにも「グレースを使って盗ませろ」と命令していた。

2-4:障害:
イーサン:弁護士のふりをしてグレースと鍵を回収しようとする。
ガブリエル:殺し屋(パリス)を雇ってイーサンとグレースを襲う。
米国政府:CIAを派遣してイーサン逮捕を目論む。(失敗)
グレース:地元警察に逮捕されるも、鍵を隠しきって再び脱走する。
イルサ:ベンジー達と合流してイーサンを救出する。


エンティティは先読みしまくって「イーサンとグレースを殺せ」とガブリエルに命令した。イーサンが逃げ切るのを先読みしていたからである。

2-5:状況:
イーサン:状況を整理してこれは危険すぎると葛藤する。
イルサ:イーサンを色仕掛けで説得する。


エンティティは先読みしまくって英国諜報員に偽装して「鍵を盗め」とイルサに命令していた。イルサを巻き込めば、イーサンが折れて、巡り巡って最終的に鍵が手に入ると先読みしていたからである。

2-6:障害:
イーサン:鍵の使用方法を知るためにナイトクラブへ行く。
ホワイトウィドウ:鍵を受け取るためにナイトクラブへ行く。
ガブリエル:ホワイトウィドウを脅迫し、どちらかの女を殺すと宣言する。
米国政府:CIAを派遣してイーサン逮捕を目論む。(失敗)
イルサ:グレースを救おうとしてガブリエルに殺される。
グレース:鍵を上手く隠して逃げる。イーサン達にスカウトされる。
ルーサー:エンティティを破壊するプログラムの開発に着手する。


エンティティは先読みしまくって「今夜、イルサとグレースのどちらかを殺せ」とガブリエルに命令していた。そうすれば巡り巡って明日のオリエント急行で鍵が手に入ると先読みしていたからである。

3-7:佳境:
イーサン:変装マシンが故障したのでオリエント急行に途中乗車する。
グレース:ホワイトウィドウに変装して2本の鍵を入手する。
米国政府:CIAを派遣してイーサン逮捕を目論む。(失敗)
米国政府キトリッジ:極秘にホワイトウィドウから鍵を買い取る。(失敗)
米国政府デンリンガー:実は黒幕。極秘にガブリエルと交渉する。(失敗)
ガブリエル:デンリンガーを殺し、鍵を入手して途中下車する。
パリス:ガブリエルに刺されたが、一命を取り留めてイーサンを助ける。


デンリンガーはエンティティの元になったAIを、沈んだロシア潜水艦に仕込んだ張本人だった。潜水艦に残されたAIのソースコードはエンティティを破壊する材料になるので、エンティティはガブリエルに命令して潜水艦の位置情報を知る唯一の人物デンリンガーを殺させた。(潜水艦の中だけはネットが繋がってなかったので唯一エンティティが破壊できなかった;しかしイーサンは不可能を可能にする男だから取りに行くかもしれないのでエンティティはイーサンを消したい;なのでイーサンと因縁があるガブリエルを雇用したと考えられる)
一方で、エンティティは先読みしまくって追加で「パリスを殺せ」とガブリエルに命令していた。パリスは先日ヴェニスでイーサンに命を救われていたので近い将来に裏切る可能性があったからである。

3-8:結末:
パリス:鍵は潜水艦で使うとイーサンに教える。今後味方になる?
イーサン:実はガブリエルから鍵を盗んでいた。潜水艦を探すぜ!
ガブリエル:鍵を盗まれていたと気付いて叫ぶ。いいいいさああああん!
グレース:キトリッジと面会してIMFに正式雇用される。


エンティティの先読みをイーサンが超えてきた!エンティティが危険と判断して殺害命令を出したのにガブリエルはパリスを殺し損ねた。さらにガブリエルは鍵の入手にも失敗した。後半へ続く。

…こうして論理的に整理してみると、エンティティが頭良すぎて意味不明というか、簡単なことをわざと難しくしているというか、メタ的な視点で映画として見せ場を作るためにデタラメをやっているように思えてきちゃいますよね。(苦笑)

「風が吹けば桶屋が儲かる」ですか?(笑)

まあ70年代の娯楽映画を目指してるなら、それが正解だとも言えますし、トムクルーズとクリストファーマッカリーは自覚しながらやってるんだと思いますけど。それでアクションが十分に面白くて高品質なのだから、これで良いのではないでしょうか。

●日本語字幕の弊害

ただでさえ難解なストーリー進行ですが、さらに日本語字幕ではトムクルーズの《日本の母》のような存在である戸田奈津子先生の、強引かつ簡素で言葉足らずでクセの強い独自解釈だらけの翻訳のせいで、ますます難解になっています。

最大の要因は、エンティティに6文字消費するのが嫌だったのか、終始「それ」と書いてしまっているので、もういちいち引っ掛かるんですよね。加えて細かいツッコミ所が多いので、なまじ英語ができる人はそれがノイズになってますます難解になっているのではないでしょうか。「字幕を読んでると感じさせない」という戸田奈津子氏の仕事への矜持からは最も離れた結果になっているのが、なんとも皮肉です。

戸田奈津子はここぞという場面での意訳は優れたものが多い。でもそれ以上に誤訳が多いからダメ。今のままじゃ使えない。

90年代くらいまでのハリウッド映画は単純だったので、戸田奈津子字幕の欠点があまり気にならなかったが、21世紀に入ってからは緻密な映画が増えたので悪目立ちするようになった。

https://twitter.com/james_miles_jp/status/1794944364579561580
1993年のSF映画『ジュラシック・パーク』にて、生きている恐竜ブラキオサウルスを見て自信を無くしたグラント博士が「僕たちは失業だ」と半分くらい本気で言った時に、すかさずマルコム博士が反応した言葉「(それを言うなら)絶滅だろ」この字幕を担当した戸田奈津子が、やがて同じ言葉を世間から突き返されるようになったという皮肉。

吹替版はかなり原語に忠実に頑張っています。トムの生声を聴きたい人達も一度こだわりを捨てて吹替版で視聴することをお勧めします。ただし、それでも主語や目的語の明瞭さでは劣るので、日本語音声・英語字幕で視聴するのが日本人にとっては一番正確に理解できる組み合わせかもしれません。

例:ガブリエルがパリスを殺そうとするシーン

字幕:お前は裏切り-/お前を見逃したハントに-/全てをブチ撒ける

吹替:お前は裏切る。いま聞いたことをハントに打ち明ける。命の恩人だからな。

原文:You will betray us. And you will tell Ethan Hunt everything you have learned. Because he spared your life.
直訳:あなたは私たちを裏切るでしょう。そして、あなたが知ったすべてをイーサン・ハントに話すでしょう。彼があなたの命を助けたからです。

もし私が字幕担当したらこうする代案:
お前は裏切り-/ハントに全て話すだろう/ヤツに救われたから

もし私が吹替担当したらこうする代案:
お前は裏切るだろう。そしてハントに全て話すだろう。ヤツがお前を殺さなかったから。

解説:(お前を生かしておくと)やがて裏切って、イーサンに全て話すだろう、なぜならばイーサンがお前を殺さなかったから(とエンティティが言ってる。だから俺はお前を殺す)…という内容が、かなり省略されたセリフですね。本当はヴェニスの時点で、エンティティはイーサンがパリスを殺すと予想していたが、イーサンが予想を裏切って殺さなかったということかもしれません。超高性能AIを超えてくる予想できない人間それがイーサン!

もし私が字幕担当したらこうする代案(自由意訳バージョン):
俺を裏切るか?/ハントに全てを話すか?/ヤツがお前を生かしたから!

▼2025年6月13日追記:

パート2も同様の記事を書きました。

【ファイナル・レコニング】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)

(了)

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