神戸の神さんめぐり vol.2|ゆづるはさんと、名前の縁と、御影スイーツの話。
📍 神戸市東灘区御影郡家 / 阪急御影駅から徒歩約5分
はじめに
弓弦羽神社、と書いて「ゆづるはじんじゃ」。地元では「ゆづるはさん」と呼んでいる。
保久良神社が「山の神社」なら、こちらは「街の神社」だ。阪急御影駅から歩いて5分。住宅街の中にありながら、鳥居をくぐった瞬間に空気が変わる。都会の中にあるのに、豊かな緑に包まれた境内がその落差をつくっている。
ただ、近年この神社を一躍有名にしたのは、その静けさとは少し違う理由だった。
01|神社の成り立ち。「御影」という地名の起源

弓弦羽神社の歴史は古い。社伝によれば、神功皇后が三韓征伐からの帰途、忍熊王の挙兵を知り、この地で弓矢・甲冑を納めて熊野大神に戦勝を祈願したのが起源とされる。
その「弓矢を納めた」故事から、神社背後の山を「弓弦羽嶽(ゆづるはだけ)」と呼ぶようになり、それが後に「六甲山」という字が宛てられた。つまりこの神社は、六甲山という名前の由来にも関わっている。
さらにもうひとつ。神功皇后がこの地の泉に御姿を映されたことから、この里を「御影(みかげ)」と呼ぶようになったという。「御影」という地名そのものが、この神社と神功皇后の故事から来ているのだ。
地元に生まれ育っていながら、大人になってから知ったことのひとつがこれだった。駅名や地名をずっと当たり前に使っていたのに、その由来がここにあったとは。

正式に社殿が造営されたのは嘉祥2年(849年)。平安中期以降は熊野信仰の隆盛とともに崇敬を集め、「郡家」「御影」「平野」の三地域の総氏神として親しまれてきた。
02|境内の見どころ。八咫烏と、大楠と、サッカーボール
弓弦羽神社のシンボルは八咫烏(やたがらす)だ。熊野三山の神使いである三本足のカラスで、導きと勝利の象徴とされる。
境内に入ってまず目を引くのが、神戸市指定第1号の天然記念物でもある樹齢450年を超える大楠だ。これだけの大木が街中の神社にある。見上げるだけで、「ここはずっとここにあったんやな」という気持ちになる。

そして、少し意外なのが本殿脇に鎮座する御影石製のサッカーボールだ。日本サッカー協会も八咫烏をシンボルとしていること、さらに日本初のサッカーチームが近隣の御影師範学校で編成されたという縁から、サッカーとの結びつきが深い。INAC神戸レオネッサがシーズンイン前に必勝祈願を行う神社としても知られている。

また元旦の午前0時には「灘の旨酒呑み比べ」が行われ、菊正宗・白鶴・剣菱の樽酒が振る舞われるという。灘の酒どころらしい正月行事で、これを目当てに来る地元民も少なくない。お酒好きには見逃せない話だ。
03|名前が縁をつないだ話。某フィギュアスケート選手と弓弦羽神社

ゆづるはさんが全国区の知名度を得たのは、フィギュアスケート選手・羽生結弦さんの参拝がきっかけだった。
神戸在住のファンが「名前が似ている」という縁でお守りを贈ったのがはじまりで、羽生さんはそれを機にこの神社の存在を知り、2010年秋頃に初めて参拝した。当時まだシニアデビューしたてだった羽生さんが、お母さんと一緒に訪れたという。
その後ソチ五輪・平昌五輪で金メダルを獲得するたびに、境内には参拝者が押し寄せた。金メダル直後には参拝者が20倍になったとも伝えられている。羽生さん自身もこれまで計4回参拝し、五輪後には試合で着用した衣装の一部を含む記念品を奉納している。
現在、境内の絵馬の7割近くが羽生さんへの応援・必勝祈願のものだという。「難読の神社名をすらすら読んでもらえるようになったのは羽生さんのおかげ」と宮司さんが語っているのが印象的だ。
地元民としては、もともとこの神社を知っていたから「そうか、羽生さんも来たんか」という感じだったけど、知らない人にとってはこの縁の話自体がこの神社の魅力になっている。それはそれで、ええことだと思っている。

04|御影・住吉エリアのスイーツ
ここは神戸一の洋菓子激戦区だ。
参拝のあとは御影の街へ。ここは神戸の中でもスイーツ激戦区として知られるエリアで、老舗から話題店まで徒歩圏内に集まっている。
マモン・エ・フィーユ
開店前から行列ができることで知られる御影の洋菓子店。発酵バターの香り高い「フレンチビスキュイ」が看板商品で、缶に入った「ビスキュイ缶」は神戸土産としても人気が高い。手土産を探しているなら迷わずここへ。
おわりに

弓弦羽神社は、神戸の東灘という落ち着いたエリアにある、品のある神社だ。
御影という地名の由来から始まり、八咫烏の勝利の加護、そして羽生結弦さんとの不思議な縁。歴史の深さとポップな話題の両方を持ち合わせているのが、この神社のおもしろいところだと思っている。
参拝して、大楠に圧倒されて、御影の街でスイーツを食べて帰る。そんな半日が似合う神社だ。
📍 弓弦羽神社 基本情報
住所|神戸市東灘区御影郡家2-9-27
最寄駅|阪急神戸線「御影駅」南東へ徒歩約5分
最寄駅|JR神戸線「住吉駅」から徒歩約10分
最寄駅|阪神本線「御影駅」から徒歩約15分
駐車場|なし(公共交通機関を利用)
公式サイト|yuzuruha-jinja.jp
⛩ 御祭神
伊弉冉尊(いざなみのみこと)
事解之男命(ことさかのおのみこと)
速玉之男命(はやたまのおのみこと)
※三柱を総称して「根本熊野三所大神」と称する
天照皇大御神・素佐男尊を配祀
🙏 ご利益
厄除開運・家内安全・交通安全・諸願成就・必勝祈願・子供育成守護
