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【叙事詩】セトナ王子と亡霊の呪い ①『セトナと蘇るミイラ』

私はメルセゲル。
テーベの岩山に身を巻き、
千の王の眠りを守るコブラの女神である。

遠い昔、ネネフェルカプタハ王子は、
決して踏み越えてはならぬ蛇の結界を破った。

「トト神の魔法の書」と引き換えに、
彼は自らと家族の命を犠牲にした。

だが――時は巡り、
またもや魔法の書の力を欲する者が現れた。

ラムセス2世の息子、
セトナ・カエムアスである。

セトナが神の力と引き換えに何を見たのか。
そして、ネネフェルカプタハの呪いは
果たして解けるのか。

セトナ王子の運命は、
いま静かに動き始めようとしている。


第1節:セトナと蘇るミイラ

祭りを行う人々が町を行き交い、
メンフィスの空気は賑わっていた。

プタハ神殿を彩るのは
噂話に花を咲かせる神官や貴人たち。

その声に耳を傾ける若い王族二人――
ラムセス二世の息子、セトナ・カエムアスと
弟のアンヘルルウである。

貴人たちは語った。
「メンフィスの墓に眠るネネフェルカプタハ王子は
トト神の魔法の書を携えている。
その書にすれば、神々の力を得られるのだ」と。

セトナはその話に釘付けになり、
アンヘルルウを連れて墓へ忍び込んだ。

ひっそりと薄暗い墓には、一つの石棺。

その石棺を抱きしめる高貴な女性――
イフウェレト。

彼女の手には「トト神の魔法の書」があった。

セトナが思わず手を伸ばすと、
イフウェレトはその手を払い、言った。

「この書は私たち家族の命を奪いました。
関わってはなりません」

だがセトナは聞く耳を持たなかった。
「その書をよこせ、力づくでも奪う」

そのとき、石棺が音を立てて開き、
ミイラとなったネネフェルカプタハが姿を現した。

墓の中に、彼の威光が放たれた。
セトナは思わず後ずさりした。

「どうしてイフウェレトの言葉に従わぬ、
どうしても書が欲しければ、私と勝負せよ」

「いつでもお相手しましょう」
セトナは虚勢を張ったが、声は震えていた。

二人の前に遊具盤が置かれ、始まった。

第2節につづく

※こちらからお読み頂くと、更に楽しめます。

本叙事詩は、大城道則氏『神々と人間のエジプト神話』に収められた
「セトナ・カエムアスとトト神の魔法の書」をもとに、
守護女神メルセゲルの視点から再構成した創作作品です。


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