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【叙事詩】セトナ王子と亡霊の呪い ②『不運な王子』

第二節:不運な王子


セトナとネネフェルカプタハの間には、
貴族が使う遊具盤が置かれていた。

獣の骨のサイを投げ、駒を進める遊び。
「幸運」のマスに止まれば勝ち、
「不運」のマスに止まれば負け。

ネネフェルカプタハが最初にサイを投げる。
駒が「幸運」のマスに止まった。

その瞬間、セトナの足元が砂状に崩れ、
地面が彼を引きずり込んだ。
両足が地中に埋まり、身動きが取れない。

「これはどういうことだ……!」
セトナはもがいた。

「次はそなたの番だ」
ネネフェルカプタハは静かにサイを渡した。

セトナがサイを投げると、駒が「不運」に止まった。
砂がうねり、腰まで埋められる。

ネネフェルカプタハがサイが再び投げる。
またも「幸運」。

地面さらに沈み、
セトナは耳まで埋められてしまった。

「早く引き上げてくれ!」
セトナは叫んだ。

それでも――
視界の端に見える魔法の書への執念は消えない。

「アンヘルルウ!
ファラオからプタハ神のアミュレットを借りてきてくれ!」

アンヘルルウは御所へ走り、
ファラオに事の顛末を伝えた。

ファラオは驚愕し、
召使にアミュレットを持ってこさせ、
アンヘルルウに渡した。

墓に戻ると、セトナは砂の沼と格闘していた。

「早くアミュレットを!」
セトナは叫んだ。

アンヘルルウがアミュレットを置くと、
セトナの体は光を放ち、地上へ浮き上がった。

そして、すかさず
「トト神の魔法の書」を奪い取った。

セトナとアンヘルルウは墓の入口へ駆け上がった。

その後をネネフェルカプタハが追う。
周囲には悪霊が渦巻き、
墓の空気が震えていた。

二人が入口に辿り着くと、
急いで扉に閂をかけた。

ネネフェルカプタハと悪霊の影が
ゆっくりと遠ざかっていった。

私は見た。
「セトナよ、そなたは必ず懺悔をしながら
魔法の書を返しにくるであろう」
ネネフェルカプタハはこう言ったのを。


カルナック神殿の大列柱室の中央通路から、
移動玉座に座したファラオが静かに現れた。
天窓から差し込む光が、石の森を黄金で染めた。

セトナは魔法の書を手に、
書を得た経緯を弁明した。

ファラオは驚愕し、こう仰せになった。
「直ちに書を戻しなさい。
そうしなければ、ネネフェルカプタハは、
そなたに何をするか分からない」

しかしセトナは聞く耳を持たず、
魔法の書を開き、
皆の前で読み上げた。

第三節につづく

※こちらからお読み頂くと、更に楽しめます。

本叙事詩は、大城道則氏『神々と人間のエジプト神話』に収められた
「セトナ・カエムアスとトト神の魔法の書」をもとに、
守護女神メルセゲルの視点から再構成した創作作品です。

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