66. 土砂災害は「止める」だけでは守れない ~JIBANNOTE~
「砂防(さぼう)」と聞くと、土砂災害を完全に防ぐもの、というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、実際の砂防工事の目的は、土砂災害をゼロにすることではありません。
砂防の本質は、
土砂の動きを抑え、勢いを弱め、被害を最小限にすることにあります。
砂防工事で行われている主な対策
砂防では、地形や災害リスクに応じて、さまざまな工事が組み合わされます。
たとえば──
◆上流に砂防堰堤(さぼうえんてい)≒ダムを設置
◆斜面をコンクリート枠で押さえる
◆壁状の構造物で斜面を支える
◆植林によって地面を安定させる
◆川底や川岸が削られないよう護岸を強化する
どれも、「完全に止める」のではなく、
被害を小さくするための工夫です。


土砂災害にはタイプがある
土砂災害とひとことで言っても、性質はさまざまです。
■土石流:一気に流れ下る災害
土石流は、土砂・岩・流木が水と一体となり、高速かつ強大な力で流れ下る災害です。
速く、重く、力が強いため、
「勢いを弱める」「流れを分散させる」対策が重要になります。
■ 地すべり:ゆっくり、しかし確実に動く災害
一方、地すべりは少し性質が異なります。
一気に流れるというより、ゆっくりと、しかし確実に動き続ける災害です。
地すべりの大きな原因は、地面の中にたまった水。
そのため、次のような「水をコントロールする工事」が行われます。
●地下水を外へ逃がすための井戸を掘る
●雨水が地中に入りすぎないようにする排水路を整備する
さらに、
杭やアンカーを地中に打ち込み、地面そのものを押さえる工事
も実施されます。
災害対策は「組み合わせ」が重要
土砂災害対策で欠かせないのは、
災害の性質を見極め、それに合った方法を組み合わせることです。
どれだけ工事を重ねても、大雨や地震が重なれば、すべてを防ぎきることはできません。

「防ぐ」だけでなく、「早く逃げる」ために
そこで重要になるのが、
「早めに逃げる」という考え方です。
●センサーなどでいち早く異変に気付く
少しでも早く調光を察知できれば、避難するための時間を確保できます。
ただし、センサーを多数設置するにはコストがかかります。
そのため今でも、人の目によるパトロールで
地面のひび割れ・沈み込み・木の傾きといった、地すべりのサインを見逃さないことが欠かせません。
最近では、人工衛星を使って広範囲の地面のわずかな動きを捉える技術も活用されています。
現地に行かなくても変化を把握できる点は、大きな強みです。
工事・監視・避難はワンセット
土砂災害対策で本当に重要なのは、
「工事」、「監視」、「避難」
この3つがセットになっていることです。
砂防とは、
命を守るための「時間を稼ぐ仕組み」でもあります。
見えないリスクを、見える情報へ
地盤ネットは、地盤調査・解析を通じて、こうした「見えないリスク」を見える情報に変えてきました。
「正しく知る」「早く気づく」「迷わず逃げる」
これからも、
災害に振り回されない暮らしを支えるため、
地盤リテラシーを分かりやすく発信していきます。
【Better World Words】
「本当の世界ってものは、
幸福でもなければ、不幸福でもなければ、
不健康でもなければ、また健康でもないの。
そのまんまなの」
思想家、実業家 中村天風

今日の「地盤の音」はどんな音色を奏でていますか?
