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今あるやり方をすこしだけ楽な方法あるいは廉価な手法へと手をくわえてみると


はじめに


 生命科学の分野にはさまざまな実験手法がある。日々あたらしい方法が論文で報告される。逐一そのひとつひとつをたしかめるわけでないが、なかにはとりいれたい方法に出会う。とりいれて何度かやるうちに、こうすればもっといい、さらに手軽にできる方法がみつかることも。

きょうはそんな話。

なかには


 論文になるほどの実験手法はそれぞれ従来法とくらべてメリットや新たな対象に迫れる側面をもつ。測定の感度の向上や簡便さ、迅速さなど従来法にまさると、あっというまに置き換わる。ところがなかには連綿と50年以上にわたり受け継がれ、いまもって現役の実験手法がある。そのひとつが以下の論文に掲載される手法。

すでに55年間、タンパク質をとりあつかう立場の方でこの論文もしくはこの手法を知らないことはまずないだろう。生命科学関連の実習でやった方もおいでだろう。過去の引用論文としてとりあげられるベストテンに顔を出すおなじみの報文。

論文と著者は

 なぜこの論文が引用されつづけているのか。この論文中の手法のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGEと略される。SDSとはドデシル硫酸ナトリウムの略で界面活性剤)がもっぱら世界中でいまもって利用されることため。

著者のLaemmiliは、みずからのバクテリオファージのタンパク質研究のためにこの手法を確立させた。あまりにすぐれているので、のちのタンパク質研究者たちがこぞってこの手法を取り入れた。そしていまもってこの分野では主要なおなじみの実験手法のひとつ。

のちに


 この手法ほぼ当時のまま「Laemmiliの手法で…」というかたちで論文中に引用される。実際にこの手法を用いたことから自筆の論文にいくたびも引用させてもらった。ごくごく一般的な手法として欠くことのできないもの。それが50年以上にわたり今も現役で使われている。

もちろんそのあいだにより低分子量のタンパク質へと適用が広がったり、たとえばTowbinらのウエスタンブロット法

Towbinらのウエスタンブロット法の論文(PNAS,1979)の表題部分

など威力を発揮する方面へ適用されたりして、そののちのタンパク質のさまざまな研究上で欠くことのできない手法となった。

おなじ生命科学の分野でも、とくに分子生物学や細胞生物学で用いるDNAや細胞を対象とする手法の自動化、コンピュータによる解析法の進展は著しい。もちろんDNAの電気泳動法自体はいまもって簡便法としてあまり姿かたちを変えずに汎用される。この点はタンパク質を研究対象とするSDS-PAGEと同様で興味深い。

改良


 実験室でその日のうちにいくたびかSDS-PAGEでタンパク質を分析する場合もある。装置を組み立てゲルを調製し、泳動を開始する。泳動が終わるとゲル中を泳動したタンパク質を可視化するために染色、そして余分な色素をとりのぞくと分析対象のタンパク質がはじめて姿をみせる。

そして撮影。場合によっては染色後のゲルを乾燥して実験ノートに貼りつける。初年度の学生実験に取り入れられる基本的手法のひとつだが、けっこう手間ひまがかかる。

なんとかしたい

 
 もちろん調製済みの市販ゲルもあるにはあるが高価。めったに使えないのでこうして毎回手づくりする。ふりかえるとLaemmiliの報文の時点で手法としてたいへん洗練されていたとわかる。みごとといっていい。

もちろんそれ以前の60年代にも基本となるOrnsteinとDavisによるゲルを用いたディスク電気泳動の手法はあった(こちらの手法もわたしは経験あり。もはや実体験のある最後のほうの世代かも)。Laemmili自身そんな過去の技法をやるうちに飛躍的な改良を思いつきやってみたのだろう。

おわりに


 ズボラなわたしはいつもこの方法をやるたびに、もっとなんとかならないか、せめてゲルの調製や染色・脱色のところだけでも簡便にできないかと、すこしばかりアレンジしようとしている。研究費がない分や時間の制約をそんなくふうで回避できないかと日々すこしずつチャレンジしている。

おもなねらいはふたつのどちらか。簡便もしくは費用を抑えるの2点。どちらかだけでも成功したら、広くつかってもらえるいい方法になりそう。


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