GASで十分満足していたのに、AIエージェントに惹かれたのはなぜだったのか
前回まで、GASとAIを組み合わせて、毎週の作業を自動でまとめてメールする仕組みまで作りました。あのコードを書いてくれたのは、Geminiという「AIチャット」です。会話するように「これがしたい」と伝えると、コードを返してくれる。正直、僕はこれで十分に満足していました。
それなのに、いつからか「AIエージェント」という言葉に惹かれている自分がいました。同じAIなのに、何がそんなに違うんだろう。今日はその違いに絞って書いてみます。
AIチャットも、今はけっこうできる
まず、ひとつ誤解のないように書いておきます。GeminiやChatGPTのようなAIチャットも、今はただ質問に答えるだけの相手ではありません。
たとえばGeminiには「Gem」や「Canvas」、ChatGPTには「GPTs」や「プロジェクト」といった機能があります。あらかじめ役割や決まりごと、参考にするファイルや設定を渡しておくと、自分専用の相談相手として、くり返し同じ調子で手伝ってくれる。前回コードを書いてもらったのも、こうしたチャットの力の延長でした。
これはこれで本当に便利で、非エンジニアが最初に触るなら、いちばんとっつきやすい入口だと思います。この使い方は、また別の機会にちゃんと紹介したいと思っています。
AIエージェントで、やりたいこと
では、AIエージェントは何が違うのか。Claude Code、Codex、Antigravityといった名前を、どこかで聞いたことがあるかもしれません。
チャットが「相談すると、答えやコードをくれる相手」だとすると、エージェントは「目的を渡すと、そこから先を一貫してやってくれる相手」です。何をしたいかの壁打ちから始まって、実際の実装、さらにはそれを動かすための環境の用意まで、ひと続きで引き受けてくれる。
僕がGASでやったのは、スプレッドシート1枚の中の、決まった作業を自動にすることでした。エージェントでやりたいのは、その「やりたいことの自動化」を、もっと広い範囲へ広げていくことです。一つの表の外へ、いくつもの道具をまたいで、仕事そのものを任せていく。そういう景色に、僕は惹かれていたんだと思います。
どっちがいい、の話ではない
ここで大事なのは、チャットとエージェント、どちらが優れているかではない、ということです。
とっつきやすさなら、さっきのGemやCanvasが断然です。会話の延長で始められて、その日から役に立つ。一方エージェントは、最初の一歩が少し重い。けれど、できるようになると、任せられる範囲がぐっと広がります。
だからこれは、優劣ではなく、自分がどっちに向いて取り組むかの話だと思っています。まずチャットで身軽に始めるのもいい。腰を据えてエージェントに向かうのもいい。どちらを選んでも、間違いではありません。
使う側から、つくる側へ
思えばGASは、僕にとって「プログラミング」という遠い世界を、自分の手の届くところまで引き寄せてくれた道具でした。セルに日付をひとつ書き込む、たったそれだけのコードでも、自分の書いたものが、自分の意思で動く。その手ごたえを一度知ってしまうと、コードはもう、専門家だけのものではなくなります。プログラミングという言葉が、少しだけ自分の側に近づいてくるんです。
その最初の一歩は、ここから始めました。
そして、プログラミングが身近になるほど、AIとの距離も縮まっていきます。最初は「教えて」と尋ねるだけの相手だったAIが、コードを書いてくれる相棒になり、やがては仕事そのものを任せられる相棒になっていく。この距離の縮まり方は、GASで小さな一歩を踏み出したからこそ、地続きに感じられたものでした。いきなりエージェントの話をされても遠く感じたはずのものが、「ああ、あの延長にあるのか」と腑に落ちる。順番を踏むというのは、たぶんそういうことなんだと思います。
その先にあるのは、特別な誰かの話ではありません。これまで出来合いの道具を使う側にいた人が、自分の手で道具を作り、自分の暮らしや仕事を、少しずつ作り変えていける。プログラミングを身近なものにして、AIと並んで歩けば、もう誰だって「つくる側」に立てる。僕は、本気でそう思っています。
道具を使うだけだった人が、道具を作る人になる。与えられたものを受け取るだけだった人が、自分で差し出す側にまわる。その入口は、もう特別な場所にはありません。あなたの手元にある、いつものスプレッドシートの中に、ちゃんと開いています。
使う側から、つくる側へ。その一歩は、専門知識でも才能でもなく、「やってみようか」という気持ちひとつで、今日からでも踏み出せます。
