第6回古参従業員は“翻訳”で動く──否定ではなく「意味の翻訳」で合意をつくる
はじめに
これまでの回では、「事業を見直す」「小さく試す」「やめる」など、
“会社を動かす仕組み”の話をしてきました。
しかし、どんなに良い戦略を描いても、最後に立ちはだかるのが「人」です。
とくに、古参従業員との関係は、承継者の最大の試練と言っても過言ではありません。
「新しいやり方に変えようとしても、現場がついてこない」
「何を言っても“それは難しい”で終わってしまう」
「今まではそんなことやってないし、先代はどう考えているのか」
このような声を、経営支援の現場でよく耳にします。
でも実は、古参従業員は敵ではありません。
彼らを“翻訳”できるかどうかで、会社の未来は大きく変わります。
ケース:新しい提案が“拒否反応”で止まった瞬間
ある承継者が会議で提案しました。
「来期から受注管理をシステム化しましょう。Excelでは限界です。」
すると古参の幹部は、眉をひそめて言いました。
「そんなことしたら、余計にミスが増えるだけですよ。」
会議は重い空気のまま終了。
若手からは「また止められましたね…」と苦笑い。
でも、なぜ反対するのでしょう?
本当に“変化が嫌い”だからでしょうか?
古参従業員の本音:
「否定された」と感じる瞬間がある
古参従業員には、
長年の経験で“現場を守ってきた誇り”があります。
そこへ承継者の新しい提案が来ると、
「今までのやり方を否定されたのか?」
「自分たちの努力をリセットする気か?」
「“古いやり方”と切り捨てたいのか?」
と受け取られやすい。
これは「変化への抵抗」ではなく、
プライドが傷つくことへの防御反応です。
承継者に求められる「意味の翻訳」
同じ提案でも、言葉の選び方を変えるだけで
受け取られ方は180度変わります。
【悪い伝え方 → 良い伝え方】
「このやり方は古いです」
→「この方法をベースに、さらにラクにできる形にしたいです」「データ化すればミスが減ります」
→「部長のチェックが、より確実に伝わるように視える化したいです」「若手中心で進めます」
→「ベテランの知恵を反映した形で、若手に引き継ぎたいんです」
📌 “変える理由”ではなく、“守る価値”を言語化する。
それが「翻訳」です。
翻訳の第一歩は「共感の言葉」
古参従業員の心を動かす最初の一言は、理屈ではなく“尊重”。
「このやり方で会社を守ってきてくださったんですよね」
「ここまでの積み重ねを、次に活かせる形にしたいんです」
承継者が持つ強みは、過去を否定せず未来を描けること。
その姿勢が巻き込む力を生みます。
「翻訳者」になる3つの実戦ステップ
1️⃣ 聞く:背景を理解する
反対意見の裏には、必ず“守りたい理由”がある
2️⃣ 置き換える:共通言語に変える
例:
「KPI」→「毎週、みんなで見る“前進の目印”」
3️⃣ 巻き込む:小さな成功を共有する
「〇〇さんの提案から、この成果が生まれました」
この一言が信頼を一気に深めます。
承継者は「翻訳者」であり、調和のデザイナー
過去と未来をつなぐ
理論と現場をつなぐ
世代を超えた調和をつくる
それが承継者の役割。
会社のDNAを残しながら
新しい風を通せるのは、承継者のあなただけです。
今日からできる小さな行動ヒント
古参従業員に「一番うまくいった工夫」を聞く
提案の前に「この方法をベースに」と一言添える
改善が実ったら「〇〇さんのおかげで」と伝える
信頼は、
言葉の積み重ねでしか生まれません。
まとめ:古参従業員は“翻訳”で動く
抵抗は「否定された」という防御反応
「守る価値」を翻訳すれば、共に動ける
承継者は現場と理論の橋渡し役
古参従業員は敵ではない。
あなたの会社の“歴史そのもの”です。
※本記事で紹介している事例は、実際の支援経験をもとに構成した架空のケースです。実在の企業・人物とは関係ありません。
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著者プロフィール
熊谷 篤(くまがい あつし)
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
年間400件以上の経営相談を行い、承継後3年以内の後継者を中心に伴走支援を実施。
VCでのIPO支援や年商100億円規模企業の改善支援など、多様な現場で成果を創出。
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