保育園で「考える力」を育てる。AIAIが幼児教育を始めた理由
これまでのお話はこちらのマガジンにまとめています。初めましての方は、こちらもぜひご覧ください。
1. きっかけは「待機児童が解消した未来」の予測
2017年当時、まだまだ保育園は不足していました。
待機児童が多く、「入れる園」であることが最優先です。保育の質や内容よりも、まずは預けられるかどうかが重要視されていた時代でした。
しかし、保育園の増加と出生数の推移を分析していくと、2020年代後半には待機児童がほぼ解消することが予測できました。
待機児童が解消した瞬間に、「どこでもいいから入れる園」から「子どもが育つ選ばれる園」へと転換し、保護者が複数の園を比較して、条件や方針で選ぶ時代が来ます。
そうなったときに選ばれる園になっておくために、保護者にとって「選びたい園」とはどんな園なのかを知っておく必要がありました。
そこで、まずは保護者のニーズを明確にしようと、毎年の入園説明会で保護者アンケートを実施しました。
2. アンケートと「本当のニーズ」のズレ
当初は「駅から近い園が選ばれるだろう」と予想していました。
行政側も利便性の高い立地を求める傾向があり、駅近は公募でも有利とされていました。
そして、アンケート結果でも「駅から近い」「利便性が高い」という回答が多く見られました。
しかし、実際は異なる傾向が現れました。
定員充足率が高いのは、園庭のある園だったのです。
アンケート上の回答と、実際の選択行動は一致していませんでした。
そこで、「小さくてもいい、屋上でもいい。とにかく園庭をつくる」という方針を決めました。
次に、「保育に何を求めますか」という設問を設定してアンケートを取りました。
結果は以下の通りです。
1位:思考教育
2位:運動
3位:食育
英語教育は毎年5〜7位でした。
英語は上位に来ると予想していましたが、実際には、保護者は「考える力」と「運動」を重視していました。
食育については、「好き嫌いなく食べられる子」が求められていましたが、この点は、国が掲げる「生きる力を育む食育」を実践すれば、多様な食材への興味関心につながります。結果として、保護者のニーズとも合致すると判断しました。
そして最大のテーマは、1位に選ばれた「思考教育」とは何かでした。
知識教育は、覚えれば再現できます。
一方、思考教育は、仮説を立て、試し、間違え、やり直す力を育てます。
正解を当てることではなく、自分で考え抜く過程そのものに価値があります。
仮説を立てて、試行錯誤を繰り返しながら、複数ある答えの中から自分の答えを見つけ出す。
この「粘り強さ」「視点の切り替え」「引き出しの多さ」こそが、子どもにとって将来の武器になります。
そこで導入したのが、「IQ(いっきゅう)パズル」というプログラムで、小学生向けの「パズル道場」の未就学児版です。

数えていてはパズルは解けません。だいたいの予想と仮説を立て、違えば修正し、再挑戦する。その反復が思考力を育てます。
導入を始めたのは2017〜2018年です。しかし、最初に直面したのは「保育士が子どもたちに教えられない」という壁でした。
当時の保育園現場は、生活支援と養護を軸に専門性を磨いてきました。そのため、教育プログラムの導入には戸惑いや反発もありました。
「日々の保育でも十分に工夫しているのに、ここまで必要ですか?」
「保育園なのに、ここまでやるのですか?」
幼稚園を卒園しても、保育園を卒園しても、すべての子どもたちは小学校に就学するのですから、「保育園なのに」という考え方は実際に起こっている現実とズレています。
ほとんどの人にとって、変化は負担と恐怖と不安です。当時はまだ待機児童問題の真っ最中だったので、将来必要になる保護者のニーズに沿った思考教育という新しい変化に対して逃げたい気持ちが大きかったのだと思います。
しかし、これも反復と研修を重ねることで、徐々に実践できる体制が整っていきました。
3.新設保育園に学習室を設ける
思考教育プログラムでは動画教材も活用するため、プロジェクターやスクリーンを備えた環境が必要でした。
既存の保育室は生活中心の設計であり、集中学習には適していません。
そこで、幼児教育を提供し始めた年から、新設園には学習室を設ける方針を打ち出しました。

しかし、学習室を設けるとなると部屋がひとつ余分に必要になり、保育園の定員数は減ってしまいます。
2017年当時は待機児童が多く、定員減は経営面でも公募審査でも不利でした。役所からは「もっと定員を増やして待機児童を解消して欲しい」、地主からは「もっと園児を受け入れて、もっと高い家賃を払える設計にした方がいいのでは」と言われました。
それでも、「今は待機児童問題があるから、どんな保育園でも定員一杯になります。でも、10年後、20年後はそうなりません。」と説明し、理解を得ていきました。
しかし、公募では、定員数が他よりも少ないことで落選するケースもありました。
それでも、幼児教育の提供のために学習室設置の方針は変えませんでした。
結果として、現在の充足率は全園で平均100%近い高水準を維持しています。
4. 子どもの未来を見据えたプログラム導入
保護者アンケートでは、順位は低かったものの英語プログラムも導入しました。
もともとは、英会話教師を保育園に派遣してもらっていましたが、これもプログラム化することにしました。
それが「KOKORO lingua(こころりんが)」です。
日本語だけで完結しない場面は、これから確実に増えていきます。英語に触れる機会の価値は、今後さらに高まると考えました。
今までは、日本経済が強かったので日本語だけでも十分に経済活動が潤っていましたが、今の子どもたちが大人になったとき、すでに今でも言えることですが、英語は社会で必須になるでしょう。
そのため、アルファベットや基本単語に触れておくことは、将来の選択肢を広げる土台になります。
現在、AIAIの幼児教育は以下の5本柱で構成されています。
IQパズル(思考教育)
Break it Kids(有酸素運動・身体操作)
KOKORO lingua(英語)
ろんり(出口式論理教育)
ハートフルステップ(道徳・心の育成)※実証中
5.子どもたちの変化で教育プログラムの成果が見え始める
導入当初は現場の反発もありましたが、保育園の日常生活でも子どもたちに変化が見られました。
指示理解が正確にできる
会話の抽象度が上がる
「ということは」「つまり」といった論理語が自然に出る
論理的思考が言語として表出していることが確認できました。
保育園は生活の場ですが、考える力は育てられます。
幼児教育を導入してから2〜3年後、小学校に進学した子どもたちの保護者から声が届くようになりました。
息子は机に向かい、問題を丁寧に読み、自力で解く習慣が身についていたため、授業の変化に苦労することなくスムーズに集中することができています。IQプログラムがなければ、かなり戸惑っていたと思います。心から感謝しています。(千葉県・小学2年生保護者)
小学1・2年の間、算数で苦手意識を持つことなく、テストでは常に高得点を維持できました。小学校入学前に数の感覚を身につけられたことが何より嬉しいです。(千葉県・小学3年生保護者)
学習に対する苦手意識がなく、自ら考える習慣が身につきました。(千葉県・小学3年生保護者)
国語の授業と比べて、IQパズルプログラムで学ぶ算数にはずっとやる気を見せています。基礎学力のおかげで、小学校の授業にもスムーズに移行できました。読解力や問題解決能力も大きく伸びたと感じています。(千葉県・小学2年生保護者)
このような、「AIAIで学んでいたおかげで、うちの子は小学校の勉強で困っていません」といった声が続々と届くようになったのです。
共働き家庭が増え、保育園で過ごす時間が長くなった今、保育園は単なる預かりの場ではなく、基礎を育む場所であるべきです。
AIAIの挑戦は、知識を詰め込む早期教育ではなく、子どもの可能性を育むことに重点を置いています。
新しい取り組みは負担を伴いますが、保育は、10年後、20年後の社会をつくる仕事だということを忘れてはいけません。
だからこそAIAIは、2017年の時点で「今」ではなく「未来」を見据えた保育を選びました。
その未来は、現場の手によって着実に形になっています。
