メークロン市場から国鉄を使いバンコクへ帰った話
線路沿いに立ち並ぶ露天商をかすめながら列車が通過していくメークロン市場。前回はバンコク中心部からバスとロットゥーを乗り継いでメークロン市場へ向かい、計3回の通過を体験した話を書いた。今回はその続きで、国鉄に乗ってバンコクへ帰る話だ。
というわけでさっそくスタート。列車が到着したのが 11:10 で、折り返し 11:30 に発車するスケジュールだ。発車時刻が近づいてようやく開いたチケット売り場に並び、終着駅までの乗車券をゲット。

この時 11:16 と列車が到着してからわずか6分後であるが、車内は観光客で大混雑。立ち客もたくさんいる状況だ……ったが、入口から遠い方の車両へ行くと人は減っていき、なんとか車端部ボックス席の進行方向窓側を確保することができた。

なお、駅停車中に混雑していたのは車内を見学するために乗り込んできた観光客が主な原因で、列車発車時には席に座れない人はほぼいないくらいの混雑率に落ち着いた。
いざ出発
というわけで、大量の観光客に見送られながらメークロン駅を出発する。

毎度おなじみの王族のでかい写真。公共の施設にはそこかしこに置かれているのが興味深い。

観光客の集まるプラットフォームを通り過ぎ……

駅前の踏切を抜けると……

市場へ侵入!畳まれた露店のテントが眼前に迫る。

目線を下げるとこんな感じ。……っておいおい、車体に触るな。

車内からも手を伸ばせばテントに触れてしまうレベルなので、あまり身を乗り出しすぎないよう注意しながら撮影。

徒歩よりも遅いスピードでゆっくりゆっくりと市場を通過していく。

レールの横ギリギリまで商品を並べている露店も発見することができた。

……といった感じで市場を抜けると、列車はすぐに速度を上げはじめ車窓は一気に田舎景色へと様変わり。

私は国内でも 18 きっぷなどを使った鈍行列車旅によく行っているため、こういった景色は大好物だ。

だだっ広い田舎景色を眺めていると、いきなり遠景にデカい黄金の仏像が現れる。なんともタイらしい光景で大変趣深い。

ちなみに列車は非冷房車なのでとても快適な車内空間とは言いづらいが、全開の窓から吹き込んでくる生暖かい風は非常に心地良かった。

そんなこんなで隣駅のラートヤイ駅に到着。時刻表や Google マップを見るとメークロン駅との間にバーンクラブン駅というのもあるのだが、こちらには停車しないようである。

で、ここで観光客がドバっと下車。まあ「メークロン市場の通過だけ見れれば十分!」という場合は1区間だけ乗って後はタクシーなどで移動するのが効率的ということだろう。

向かいに座っていた韓国人カップルも別の場所へ移動していったため、ボックス席を丸々占有することに。ちなみに、座席は海外の地下鉄でありがちなプラスチックの硬いイスだ。長時間座っていると腰を痛めそう。

というわけで一旦立ち上がって車内を散策する。まずはトイレから。垂れ流し式だろうか。

連結部分。安全対策という概念が存在しないのか、幌も設置されずむき出し状態である。列車はそこそこスピードも出す上にガタガタ揺れるためけっこうスリリング。ぶわああああああと吹き抜ける風を手すりにつかまりながら全身で浴びるのは、日本ではなかなかできない経験で楽しかった。

車内の様子はこんな感じ。メークロン市場は中国人観光客が全然おらず日韓・欧米人が中心だったが、鉄道に1区画以上乗るとなるとさらに欧米人の割合がガクッと落ち、車内は日本語・韓国語が飛び交う空間となっていた。

隣のボックス席に座っていた人に話しかけてみると、メークロン市場の見学とセットで何区画か乗る観光ツアーが組まれているらしい。バックパッカー民としてはツアーの存在自体が初耳だったのだが、たしかに自力での手配はやや面倒なのでツアーでパッケージングしてもらうというのは合理的な選択肢かもしれない。

ちなみに何気なく撮ったこの写真、拡大してみると奥の方にうっすらと直線に伸びる線路が見えることに後から気づいた。メークロン線は何もない田舎を走るため、非電化単線だが線形には非常に恵まれておりスピードも意外と速い。

田舎景色に建物が現れてくると少しカーブして集落の方へ入っていき、駅に滑り込む……といった感じだ。

一方で、周りに人家が全くなさそうな場所にも駅が設置されているのが面白かった。

……といった感じでちょこちょこ駅に停車しながら進んでいくと次第に車内は空いていき、観光路線からローカル線へと雰囲気も様変わり。ちなみに混雑緩和のためか、韓国人ツアー客はこの駅で下車、日本人ツアー客はこっちの駅……などといった感じで分散しているようだった。

先ほどまでは観光客ばかりだった車内も今やほとんどの乗客が地元民。のんびりと景色を眺めていると車掌さんが「どこまで行くの?」と少し焦った様子で声をかけてきたため、「終点まで行きます」と乗車券を見せた。おそらく置き去りにされたツアー客ではないかと心配していたのだろう。それほどこの区間は地元民以外の利用が珍しいということだ。

乗客の中でおそらく私が唯一の日本人となった列車はさらに進んでいき、またしても集落っぽいところへ突入。車窓からは珍しく中華な雰囲気の建物が見えた。

……で、その次の駅でいきなり終点を迎える。

駅舎もプラットフォームも存在しない場所がターミナルとなっているのだから面白い。

ちなみに現在時刻は 12:30。メークロン駅からは1時間の道のりで定刻通りの運行だった。

「あれ?意外と早くバンコクに着いたね」と思ったかもしれないが、実はこの終着駅、なんとバンコクから 35km ほど離れた位置にある。
マハチャイ線へ
「どういうこと?!」となった人向けに解説をしていくと、国鉄メークロン線はバンコク側のターミナルであるウォンウェンヤイからマハチャイまでを結ぶマハチャイ線と、メークロン駅からマハチャイの対岸に位置するバンレームまでを結ぶメークロン線に分かれているのだ。両路線はターチン川によって隔てられており、乗り継ぐには渡し船を使う必要がある。

「いやいやなんで橋を架けないんだよ!」と思うところだが、まあいろいろ事情があるのだろう。というわけで渡し船の乗り場まで歩いていく。駅から乗り場まで絶妙に離れているのが厄介なところだ。

駅のすぐ横には寺院があり、巨大な黄金の仏像が。

正直もう見慣れてしまった感はある。

で、さらに歩いていく。実はこの絶妙な距離のほかにもう1つ厄介な点として、両路線の接続が悪いというのがある。平均的には 30 分あれば乗り換えできるくらいの感じなのだが、接続時間はピッタリ 30 分だったり、45 分だったり、1時間15分だったり……とバラバラだ。メークロン線は1日4往復しかないのだから、うまく接続させればよいのにと思ってしまう。

特にひどいのが、メークロン駅 8:30 着の始発列車。この便は 7:30 にバンレームを出るのだが、マハチャイ線の始発列車がマハチャイに着くのは 6:23、その次の列車が着くのは 7:27。3分での乗り換えは不可能なのでマハチャイ線も始発列車に乗る必要があり、バンコク側のターミナルを 5:30 に出なければならない……という状況なわけだ。これが前回述べた、往路を列車に乗ってメークロン駅へ 8:30 に着くには3時間前にバンコクを出なければならない理由である。

で、小さなアーケード商店街的な通りを進んでいくと……

突き当りで船着き場に到着。お金を払って列に並び渡し船を待つ。ちなみにここまでの徒歩移動ですでに 10 分ほどかかっている。

で、船の到着とともに乗り込んでいく。原付で乗り込む利用客の多さが印象的だった。

乗り込みが完了したらすぐに出港!

それなりに大きな川……ではあるが、やはり「普通に橋架けろよ」とは思ってしまうレベル。

船内はこんな感じ。観光客が珍しいのか、乗客の先導をしているお兄さんの娘さん(?) がやたらちょっかいを出してきた。子どもの人懐っこさは東南アジアだなあという感じ。

で、サクッと対岸に到着。ここまででバンレーム駅に着いてから 20 分ほどが経過している。

マハチャイ側の景色はこんな感じ。この通りをまっすぐ進んでいくのかと思いきや……

すぐ横のごちゃごちゃした通りへ突撃。マハチャイ市場と呼ばれる商店街でけっこうな賑わいをみせていた。

露店の商品を横目でチラ見しつつ進んでいくとマハチャイ駅に到着。案内看板などはあるものの、商店街から少し奥まった場所にあるので気をつけていないとうっかり見落としてしまいそうな感じだ。

ちなみにここまでの所要時間は 27 分。

バンコク側のターミナル、ウォンウェンヤイまでのチケットを購入。ちなみにけっこう発音が難しくて困った。

次の列車は 13:15 発。メークロン線からは 45 分での接続となっており、ゆっくり歩いても間に合う珍しく良い感じの接続具合だ。

ホームにはすでに列車が入線しており、発車時刻を待っている様子。

反対側を見ると車庫。殺風景なバンレーム駅と違い、こちらは終着駅らしい雰囲気だ。

ホームを歩いていくと駅の構内にも露店が進出しており、ちょうど飲料が尽きそうだったので購入。なぜか子どもが店番を担っており、英語が通じないので指で意思疎通してお金を払った。1~10 くらいのタイ語は覚えてから行けばよかったなあ……。

で、車内はこんな感じ。相変わらずの非冷房車&石のように硬い椅子だが、ボックス席で景色を楽しめるので個人的には問題なし。

発車時刻になり列車が動き出す。マハチャイ市場も線路脇で商売している露店があるらしく、ミニメークロン市場的な景色を楽しむことができた。

非電化単線ではあるもののメークロン線に比べればずっと市街を通り抜けるため、車窓からは人の往来がよく見え各駅での乗降もそこそこあった。

線路ギリギリに建てられたバラック小屋もよく見かけるようになった。スラム街的な感じなのだろうか。

ちなみに列車のドアは駅に到着すると列車が完全に停車する直前にドガンと雑に開くのだが、なんとプラットフォームがない側も平然と開いてしまう。安全性的にどうなのよ……と思ってしまうが、まあ誰も気にしていないから問題ないのだろう。

……といった感じでローカル色の強い近郊路線の雰囲気を楽しんでいると、あっという間に終点のウォンウェンヤイ駅に到着。マハチャイ駅からの所要時間は 55 分、メークロン駅からは2時間40分である。

ウォンウェンヤイ駅周辺の町並みはこんな感じで、バンコク市街だが都心部ではないといったくらいの賑わい具合。ここから都心部へ向かう場合は都市交通線のウォンウェンヤイ駅へ行けばよいが、徒歩 10 分ほどかかるので注意が必要だ。路線同士の接続が尽く厄介すぎて笑ってしまうレベル。

……といった感じで、バンコクへ戻ってきたところで今回はここまでとしたい。
おわりに
なんやかんやで振り返ってみると、私が選んだメークロン市場へバスとロットゥーを乗り継いで行って午前中に観光し、復路は鉄道を乗り継ぐという旅程は満足度も高く、安くそこそこ効率的に移動できるものだったと思う。もし「メークロン市場へツアーやタクシーを使わずに公共交通機関で行ってみたい!」という場合は、ぜひ参考にしてみてほしい。

メークロン線の一番の見どころはやはりメークロン市場の通過であるが、それ以外にもだだっ広い平野にぽつぽつ集落のある田舎景色から少しずつ建物が増えて市街へと変わっていく沿線の景色、地元の利用客の様子や息遣い、わずかな距離を行き来する渡し船など、大変魅力的な光景に溢れていた。
正直、メークロン市場の通過だけを体験するというのはもったいないと思ってしまうほどだ。非冷房の列車に揺られながら車窓の変化を楽しみ、地元民の様子をチラチラ観察しつつ窓から吹き込む生暖かい風を全身で感じていると、旅をしているなあという感覚があってとても楽しい経験だった。ぜひ、メークロン線・マハチャイ線の全線完乗に挑戦してみてほしい。
……といったところで今回はここまで。
