⑨【新人:脳卒中】起立、歩行以外の片麻痺向けの引き出し、ちゃんとある?に答えるには
【今回のテーマ】
新人理学療法士に向けた脳卒中リハビリの第9回です。リハビリ室のプラットフォーム(広いベッド)上で、起立や歩行練習以外に何を行うべきか迷う新人PTに向けて、離床や歩行の土台となる「下部体幹と股関節」への具体的なアプローチ方法とその臨床的意義を解説します。
【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
【脳卒中シリーズ⑨】起立・歩行以外のアプローチ、持ってる?リハ室で迷わないための「股関節と体幹」の引き出し
前回は、長下肢装具(KAFO)を用いた歩行練習における、着脱の工夫や介助の三原則について実践的なコツをお伝えしました。(※前回の内容を軽くおさらいしたい方は [▶ 前回の記事へ戻る] をご利用ください) 今回は、リハビリ室の広いベッド(プラットフォーム)に患者さんを寝かせた際、「起立や歩行以外に、次は何をすればいいのか……」と立ち尽くしてしまわないための、脳卒中リハの「鉄板のアプローチ」をご紹介します。
はじめに
「リハ室のプラットフォームに患者さんを寝かせたけれど、次は何をすれば……?」 整形疾患の患者さんなら「筋トレ」という選択肢が浮かびますが、脳卒中の急性期ではそうはいきません。ただ手足を動かすだけでは、先輩から「それ、何のためにやってるの?」と鋭い指摘が入ることもあります。
今回は、脳卒中の病態を理解していることを示しつつ、患者さんの回復を促す下部体幹と股関節へのアプローチを整理しました。これなら、見ている先輩も「基本を押さえているな」と、自然にアドバイスをくれるはずです。
1. 股関節のブリッジ:麻痺側を「参加」させる
まずは、離床や歩行の土台となる「お尻上げ(ブリッジ)」です。
やり方: 両膝を立て、お尻を持ち上げてもらいます。 介助のコツ: 新人さんはつい非麻痺側の力強さに目を奪われがちですが、大切なのは麻痺側の下肢をしっかり抑えて、軽く介助を加えることです。 狙い: 麻痺側を置き去りにせず、両側性に力を入れる感覚を促通(引き出す)します。
2. 寝返り動作:体幹の「回旋」を引き出す
寝たままの練習から、少し動きを広げてみましょう。
やり方: 横向き(側臥位)になり、肩(上部体幹)と骨盤(下部体幹)が別々に動くような、体幹の回旋を意識した寝返りを促します。 狙い: 丸太のようにゴロンと転がるのではなく、体幹がねじれる動きを引き出すことで、起き上がりや歩行時のスムーズな重心移動に繋げます。
3. 股関節の回旋:中枢部をコントロールする
脚を動かす前に、股関節そのものの動きを整えます。
やり方: 股関節をゆっくりと内外に回旋させます。 狙い: 股関節周囲の緊張を整え、意図した方向へ足を出しやすくするための準備です。
4. 促通的なキッキング:第1回の応用
第1回で解説した「促通的なキッキング」も、広いプラットフォームならダイナミックに行えます。
やり方: 患者さんの足底に自分の手を当て、押し返すような動きを促します。 狙い: 「踏ん張る」という合目的的な動きを通じて、下肢の抗重力活動を呼び起こします。
おわりに:先輩は「あなたの視点」を見ている いざリハビリ室で戸惑うこともあるでしょう。しかし、上記のような「脳卒中ならここを診るべき」というポイントを押さえていれば、周囲の先輩は「脳卒中リハの本質を分かっているな」と感じてくれます。
個別性が足りない部分は、今のあなたには見えていないだけかもしれません。まずはこれらの運動を通じて患者さんの反応をじっくり観察し、「ここまではできたのですが、これ以上の促通はどうすれば良いですか?」と先輩に具体的に相談してみてください。そこから先は、リハ室にいる経験豊富な先輩たちがきっと強力にバックアップしてくれますよ!
【最後に】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 ベッド上でのアプローチも、一つひとつの動きに「なぜこれが必要なのか」という根拠を持つことで、より効果的な促通が可能になります。この記事が、皆さんのアプローチの引き出しを増やす一助になれば嬉しいです。
次回は、本シリーズの締めくくりとして、これまでの流れを整理しつつ、次なるステップへの道標となるまとめをお届けします。
この「脳卒中シリーズ」を最初から順に、または一覧で確認したい方は、以下のリンクをご活用ください。 ・[▶ このシリーズの記事一覧はこちら]
また、疾患別のより深い病態解釈や、リスク管理の徹底について学びたい方には、以下の関連マガジンもおすすめです。 ・[▶ 【脳卒中病型・高次脳シリーズ】見えない障害を見抜くための臨床推論] ・[▶ 【リスク管理シリーズ】急変を防ぐための実践的観察ポイント]
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