【臨床tips】2度起こし法|起立性低血圧は「起こし方」で変わる
はじめに
「血圧が下がるから起こすのをやめましょう」
臨床現場でよく耳にする言葉ですが、そう判断して離床を先延ばしにした結果、かえって廃用が進み、さらに血圧が下がりやすくなる悪循環に陥る患者さんを何人も見てきました。
実は私自身、過去に苦い経験があります。術前、術後早期と長期臥床をしていた患者さんの初回離床の際、急に起こしたところ反応が曖昧になり、だんだんと眼球が上転してしまったのです。慌てて臥床させ、その日の離床は中止しました。
その結果、患者さんは「こんなに起きられないなんて、私はどうすればいいのか…」と深く悩んでしまいました。
自分の準備不足を猛省し、起立性低血圧への対処法を必死に調べていた時、ある看護研究の文献で出会ったのが、これから紹介する「2度起こし法」です。
この方法は、現場ですぐに取り入れることができ、先ほどの様なケースにはドンピシャで効果を発揮しました。以来ずっと実践しています。
看護研究はこちら:寝たきり老人の起座時(起立性)低血圧を防ぐ試み
では、その具体的方法をお伝えします。
■ 2度起こし法とは
やり方は非常にシンプルです。
一度起こす(ギャッチアップや端座位など)
すぐに休ませる
再度起こす
たったこれだけですが、重要なのは「どう休ませて、どう判断するか」という具体的な手順です。
■ 具体的な「休ませ方」の基準
休ませる時間の目安は「概ね1〜2分」です。気分不快が出て、休んで、少し楽になった、と患者さんが言ったら再度離床を始めていきます。
この時の姿勢は、患者さんの状態によって変えます。
血圧低下が深刻な場合: 完全にフラット(背臥位)に戻します。
数値は下がっていないが気分不快がある場合や、起きて数値を測る前に「目が回る」と訴えて慌てて臥床させた場合:完全に寝かせず、ベッドアップした背もたれに上半身を預け、下肢は下垂させたまま休ませます。
■ 2回目を起こす「判断と声かけ」
1〜2分経って、患者さんが「落ち着いた」と言ったら、「もう一度だけ起きてみますか?」と声をかけ、同意を得てから再度起こします。
パターンA:気分不快が減り、起きられた場合
「こんな感じで休みながらでも起きれば、身体が起きることに慣れてきますね。少しずつ頑張りましょう」とポジティブな声かけをします。
パターンB:2回目でもダメだった場合
これが一番重要です。臥床してもらった後、「よく頑張りましたね。やはり長いこと寝ていると最初は起きるのが大変ですが、今日のように無理せず少しずつ起きる練習をすれば、身体が少しずつ慣れていく面もあります。また少しずつ起きていきましょう」と伝えます。
これにより、患者さんの中で「失敗した」という感覚より「挑戦した」という印象がつき、「今日の練習は無駄じゃなかった」という前向きな雰囲気を残すことができます。
■ なぜ効くのか
起立性低血圧が起きる最大の理由は、起き上がった時に重力で血液が足やお腹に下がり、心臓に戻る血液が減ってしまうからです。
長く寝たきりだった方や、パーキンソン病などで自律神経の働きが低下している患者さんは、この「血管を収縮させる反応」が遅れたり、弱くなったりしています。
ここで「2度起こし法」が有効な理由は、1回目の離床を、自律神経を働かせるための「予備刺激」として利用している点にあります。
1回目の挙上: 軽く起こすことで血圧の低下を体に感知させ、自律神経の働き(血管の収縮)を促す。
休ませる・戻す: 気分不快などの症状の悪化を防ぎつつ、血管が収縮し始めるのを待つ。
2回目の挙上: 自律神経が働き、血圧を保つ準備が整った状態で再度起こす。
つまり、「起こすと下がる」のではなく、「血管を収縮させる準備が追いついていない状態で起こし切るから下がる」のです。1回目の離床で意図的に自律神経の反応を引き出し、体が適応してから2回目を起こすため、急激な血圧低下を効果的に防ぐことができます。
■ まとめ
起立性低血圧は、起こすかどうかではなく「起こし方の問題」です。「ダメだったからやめる」のではなく、「どうすればできるか」「どうフォローするか」を考える視点が重要になります。
また、今回紹介したアプローチを私が「看護研究」から学んだように、理学療法の専門書だけでなく、他職種に向けた文献や一般向けの情報に広くアンテナを張ることも大切です。そこに、現場のリアルな悩みを突破するヒントが隠されていることは多々あります。
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起立性低血圧について、2度起こし法以外にも多くの対処や注意点があります。また、DVTやAAA、さらには疲労時の負荷量調整など、「離床していいか迷う」「急変が怖い」といった場面での判断の軸そのものをまとめています。
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自律神経障害や血圧変動が起きやすい疾患では、より繊細なアセスメントと介入が求められます。
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