④【新人基礎】「基本動作介助」の落とし穴
■ 免責事項 本記事の内容は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく個人的見解です。実際の現場では、各施設の安全管理マニュアルや主治医の指示を優先し、患者さんの安全を第一に考慮して対応してください。
■ はじめに:「リハ室への移動」は、すでに評価と治療の本番である
新人の頃は「リハ室に行ってからが仕事」と思いがちですが、病棟のベッドから車椅子へ移り、廊下を移動するプロセスこそが、生活に密着した評価の場です。 起き上がり、そして移乗。 リハ室へ連れて行くだけで相応の体力を消耗するかもしれませんが、その移動の中に、ゴール設定に必要な情報が含まれています。
実践:ベッド上の位置修正(上方移動)と移乗のコツ
現場で求められるのは、患者さんに疼痛や恐怖心を与えず、介助者の負担も軽減する手法です。
・ベッド上での上方移動(位置修正) 看護師や他セラピストと協力して行うこともあるんです。この際、力任せに引くのは適切ではありません。患者さんの下に敷いてあるタオルの肩と腰の部分を保持し、自身の重心を低く落とすことで、最小限の力でスムーズに位置を修正できます。
・起き上がり 側臥位を経由して下肢をベッドから下ろすのが基本ですが、起きた側の骨盤を適切に下制させないと、姿勢が安定せず再臥床につながります。
・移乗動作 対象者の臀部をあらかじめ車椅子の近くに移動させておきます。可能であれば反対側のアームレストを保持してもらい、体幹の前傾を促して対象者の動きを阻害しないよう誘導します。
疾患別:介助時に「これだけは絶対に避ける」リスク管理
手順以上に、疾患ごとの禁忌を守り、二次的な損傷を防ぐことが重要です。
・片麻痺 麻痺側の肩関節における亜脱臼リスクを考慮し、上肢を牽引するような介助は避けてください。
・人工骨頭置換術後 術側股関節の禁忌肢位(脱臼リスクのある姿勢)を誘発しないよう注意が必要です。
・圧迫骨折 脊柱を屈曲・回旋させないよう、体幹を一体として扱う寝返りを意識してください。
技術以前に守るべき「ライン管理」の優先順位と取り回し
一本の管を抜去させてしまうことは、積み上げた信頼を一瞬で失うことにつながります。現場での優先順位を確認しましょう。
・尿道カテーテルは牽引しない 尿道粘膜の損傷は避けるべき事態です。姿勢変換時、カテーテルが突っ張る恐れがある場合は、一時的にベッド上に置くなどして、まず患者の安全な位置を確保することを優先してください。
・心電図と点滴の優先度 万が一どちらかが外れる事態においては、血管を傷つける点滴よりも、電極パットが外れる方が侵襲は少なくて済みます。
・点滴の巻き込み防止 車椅子移動中、点滴ラインが車輪に巻き込まれないよう、穿刺部位と反対側の肩にラインを通しておきます。これにより適度なたるみが保たれ、事故を未然に防ぐことができます。
■ 次回予告 【新人PT必読⑤】現場に即した「目標設定」。プランAとプランBを使い分ける技術
基本動作の介助が安全に行えるようになった後、次に必要となるのは「リハビリテーションの目標をどこに設定するか」という判断です。 次回は、臨床経験に基づき、理想的な目標(プランA)と現実的な目標(プランB)を状況に応じて使い分ける、具体的な目標設定の考え方について解説します
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