①【脊椎】コルセット完成まで四肢筋トレ以外の引き出しありますか?
【今回のテーマ】 脊椎圧迫骨折の超急性期リハビリです。コルセットが完成するまでの数日間を単なる「待機時間」にせず、再圧壊を防ぐための「丸太」のような動作教育や、内側から脊椎を支える「腹圧(天然のコルセット)」の向上、そして廃用を防ぐベッド上での戦略的な介入方法を学びます。
※本記事は脊椎リハの各論の一番目の記事になります。ヘルニアや固定術後の記事は脊椎シリーズの一覧からそちらに飛んでください。
【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
【脊椎シリーズ①】離床した瞬間に腰を丸めさせない!コルセットを待つ数日間に「腰椎への負担の少ない動き」と「腹圧」を意識し始める教育
以前、私が担当した圧迫骨折の患者さん。コルセットが完成し、いざ離床となったその時、私は言葉を失いました。
ベッドから起き上がる際、患者さんは何の迷いもなく、力任せに上半身を起こして長座位時をとって起き上がろうとしたのです。コルセットという「外壁」はあっても、「動き方」が受傷前のままであれば、脊椎は守れません。
コルセット作成後、完成を待つ数日間の空白は、単なる待機時間ではありません。それは、患者さんの体に「腰を絶対に捻らせない・曲げすぎない動き」を事前にしっかり教えておくための、大事な教育期間です。
1.徹底した「防衛」:動きの癖をリセットする
コルセットがない状態での腰椎にとって、不用意な捻りや曲げは再圧壊を招くリスク要因です。
■ 「丸太」になりきる動作指導 :寝返りや起き上がりで腰を「捻る・丸める」動きを、この時期に完全に修正します。 「寝返るときは、一本の丸太担ったつもりで肩・腰・膝を同時に回しましょう。どこか一箇所でも先に動いたら、腰の痛みが出やすいです。」 と説明します。さらに、以下のような具体的な声掛けを徹底します。
「肩が早いですよ!もっと腰と意識して」
「膝が先にいっていますよ、もっと腰と肩も寝返らせてください」
これをコルセットが届く前に反復します。
■ 忘れてはいけないDVTのリスク管理
コルセットが完成するまでの数日感、患者さんは寝たきりです。寝たきりというのはエコノミー症候群:下腿の血流の循環不全による血栓:DVTを生じやすいです。毎日、足の底背屈を練習し、時間があるときにひたすら行ってもらうよう指導することは前提として、ふくらはぎの確認を行いましょう。
「下腿の把持痛」や「片側だけの腫れ・熱感」は、DVT(深部静脈血栓症)の兆候として見逃せないサインです。兆候があれば足の底背屈は中止し、医師へ報告しましょう。
2.呼吸とお腹を意識し「腹圧」を高める:天然のコルセット作り
外側の壁(コルセット)がないなら、内側の壁(腹圧)を今のうちに厚くしておきます。
■ ドローインと腹式呼吸 「お腹を凹ませ、内側から支える感覚」を、患者さんの理解度に合わせて伝えます。この腹圧を高める感覚は、離床した瞬間に腰椎を内側から支える「天然のコルセット」として機能し、再骨折のリスクを物理的に軽減します。
ドローイン;息を吐きながらお腹を凹ませる、できる範囲で凹ませたところから更にもう一弾凹ませて3秒キープする。これを10回、一日の中でできるだけ多く行います。
腹式呼吸:人によっては呼吸とお腹の動きを合わせられない、息を吐いたときに逆にお腹が膨らんでしまう、どうしても腹式呼吸が自分ではできない、という方もいます。そうした方には背臥位でお腹の上に750g程度の重りを乗せて、息を吸いながらまずおもりをなるべく上げてもらいます。これはわかりやすいという患者さんが多いので、できましたら今度はその逆、息を吐きながらこの重りを下に沈めていく、として腹式呼吸を促通する、というのも有効です。
3.ベッド上での介入:心肺機能と筋力の維持
脊椎を安静に保ちつつ、全身の心肺機能を止めない工夫を凝らします。
■ 股関節のROM確保 特に股関節の伸展方向の硬さは、離床後の「腰を反らせる歩き方」につながる要因です。コルセットを巻いて歩き出すその日のために、今のうちから股関節を動ける状態にキープしておきます。
■ 「タオルぐるぐる」2分間トレーニング 道具がなくても対応できます。「両手でタオルを持ち、目の前で2分間、リズミカルにぐるぐると回し続ける」。これだけで心肺機能への刺激になり、いざ離床という時のスタミナ維持に繋がります。
【最後に】 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 コルセットを待つ数日間を、「何も教えない時間」にしてはいけません。徹底したリスク管理と、動作教育。あなたが積み重ねたこの地道な介入があれば、患者さんが離床したときに痛みや動き方が違うはずです。
次回は、回復期編として「[▶ 脊椎シリーズ②:腰椎圧迫骨折の回復期リハ|『コルセット』を脱いだ後に再骨折させない、全身アライメント再構築術]」について解説します。ぜひ続けてご覧ください。
この「脊椎シリーズ」を最初から順に、または一覧で確認したい方は、以下のリンクをご活用ください。
また、今回の急性期管理の基礎となるリスク管理全般や、整形の他疾患について学びたい方には、以下の関連マガジンもおすすめです。
・[▶ 【リスク管理シリーズ】バイタルは見てるのに急変が怖い、をなくす]
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