【092】 北獅と南獅と閩南獅
(*写真はライオンダンスの北獅)
さてチャイナの獅子舞を見てみよう。英語では Lion Dance と呼ばれ、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシアなどでも行われているが、これは近代以降のチャイナ移民が旧正月に行なっているものであり、古くから東南アジアに浸透していた行事ではない。国によってはチャイナ移民の台頭を危惧して、公共の場でのライオンダンスを禁止しようとする動きすらある。
チャイナの獅子舞(舞獅)は、ざっくり北部の北獅と南部の南獅がいる。北獅は黄と赤の毛むくじゃら、南獅は緑が主流で一本角がある。これは獬豸、源流はインドサイか? 北獅南獅のいずれも開口しているが、台湾南部の閩南獅は、別名「閉口獅」で閉口している。
現存する日本最古の獅子頭は、愛知県愛西市の日置八幡宮にあり、「建長四年壬子八月」の年記銘から1252年の作と判明。上顎、下顎が別々に作られた開閉式だ。獅子頭に噛まれると厄除けになる、この俗信は日本発祥だと私は思う。噛み付く=神憑くの語呂合わせが由来との説があるからだ。もし海外でもあるとすれば、日本のチャイナタウンが真似して、それが伝播したものだろう。
「【087】 獅子舞と鹿威し」で言及したが、日本の獅子舞は、日本古来から独自にあった鹿踊りとチャイナの舞獅が習合したもの、というのが柳田國男の説。一人舞は鹿踊り、二人以上は舞獅由来、とするのが柳田の弟子の中山太郎の説。
日本の獅子舞も、地方によってバラエティに富んでいる。箱根の「湯立獅子舞」、越中の「百足獅子舞」などが有名だ。
因幡と但馬の「麒麟獅子舞」の獅子頭は一本角だが、チャイナの瑞獣である麒麟は、一本角とは決まっていない。角なし、二本三本角もいる。
獅子頭に雌雄がある地域もある。角や宝珠の有無、二本角は雄、一本角は雌など様々だ。狛犬、獅子舞の源流がインド、チャイナであっても、この雌雄一対の導入は日本固有のものだと考える。
チャイナ版狛犬の石獅は左右対称の「阿」である。現代日本の狛犬は、向かって右が雄の「阿」、左が雌の「吽」であり、雄は玉(豊かさの象徴)を、雌は子狛犬(子宝)を踏みつけている。シャカの説法を象徴するインドライオンの咆哮が、日本では五穀豊穣、子宝祈願に変身したのだ。
次は「阿吽」のルーツを探ってみよう。
